功山寺決起

青山繁晴事務所から自由民主党の党員になりました。(2020年)

「訃報」というタイトルで(2021-01-05 19:14:31)

2021-01-05 20:19:00 | On the Road


 その知らせをEメールで受け取ったとき、眼は文字を読んでいるのに、中身がどうしても頭と気持ちに入ってきませんでした。
「訃報」というタイトルで、急逝されたかたのお名前と役職が明記されているのに、どなたが亡くなったのか、どうしても理解できないのです。
 まったく何も理解できないなと思ったそのあとに、まず考えたのは、あ、これは外務省・総務課長の和田さんから、どなたかが亡くなった知らせを内々にもらっているんだということでした。

 それから時間を置いて、その和田さんご本人が1月2日に亡くなったという知らせを、関係者からいただいているんだと、やっと少しづつ分かってきたのでした。

▼ぼくなりに世界を歩いてきました。
 この世は、どんなにまさかと思うことでも平然と起きる、それを知っています。
 しかし、これほどまでに信じがたいことは、これまでにありません。

▼和田幸浩さん、52歳、日本国外務省において、日本外交の森羅万象に関わる総務課長です。
 和歌山に生を受け、京都大学に進み、帝大時代からの伝統を持つ京大体育会硬式野球部で正捕手を務め、志を抱いて西暦1993年に外務省へ。
 志を抱いて、キャリア外交官として入省されました。
 ぼくが4年半前に国会議員となってから、同じ京大出身の国士、垂秀夫さん(現・在中国特命全権大使)が外務省の官房長だった当時に、信頼する部下として紹介されて、おつきあいが始まりました。

 亡くなったから申すのではなく、ほんとうに公平にして公正なひとであり、おたがいに言うべきことを言い合って、深い信頼のもとで、ただ国益のためにこそ、立場の違いを真正面からぶつけ合って、一緒に戦ってきました。

 日本の外交官のなかで、至宝の良心派だったのです。

 キャッチャー出身らしく、ボールを投げる立場の人間が何を考え、何を目指し、何に苦悩しているのかを、しっかりと分かってくれるのが、和田さんのいちばん和田さんらしいところでした。
 まさしく正捕手らしい、ガッチリした体つきでもあり、どんなに多忙なときでも疲れた様子すらなく、その和田さんの命が奪われる事態など、カケラも想像できませんでした。
 ありとあらゆる「マサカ」を事前に想像するのが、不肖ぼくの基本任務のひとつですが、和田さんの健康に関しては、異変を想像もできませんでした。

▼いいえ、武漢熱ではありません。
 関係者の連絡によれば、1月2日に脳出血で急逝されたということです。

 ぼくとも超絶の多忙を、ずっと、分かち合ってきたひとです。
 たとえば、いまだ苦しい道を歩んでいる、海外同胞への武漢熱をめぐる支援について、巨大な外務省のなかで我がこととして取り組んでくれた極めて例外的な行政官でした。
 パスポートを持ち、国内に口座をお持ちのすべての海外同胞に特別定額給付金を支給するという本来の良案を、ぼくと水面下で連携して立案してくれたのも、この和田さんでした。
 その本来あるべき案を、安倍前総理や菅総理が採用されず、味方の少ない困難な情況になったあとも、和田さんだけはずっと共に戦ってくれました。

 和田さんとは昨年12月28日に、政府内の非公式な決定として「いわゆるビジネストラックによって、無検査で入国している中韓などの11か国について、その国で変異種ウイルスの感染者が出れば入国停止となる」ことが決まったことを水面下で確認し合いました。
 ぼくは「変異種ウイルスが見つからなくとも、あるいは見つかったという情報が無くても、今すぐに、この制度を停止すべきです」という意見を表明し、和田さんは外務官僚としての節度をいつものようにきちんと守りつつも、同意する考えを、あくまで水面下として表明されました。

 そして年が明け、年始の挨拶を簡潔に交わしたあとに、ぼくから「海外の同胞が来たる総選挙で投票しやすいように、手続きを電子化も用いて画期的に簡素化しましょう」という提案を致しました。
 和田さんは、この時も現職の行政官としての節度を守りつつ、連帯を表明されました。
 ぼくは「たとえば在米邦人からは『領事館で手続きをしたくても、飛行機で行かないと最寄りの領事館に行けない。現状ではとても投票のための登録ができない』という声が、ぼくのブログに届いています」と伝え、和田さんから「承知いたしました」という返事をもらいました。

 このひとことが、永遠に最期の言葉となってしまいました。
 翌日の1月2日の急逝です。
 ぼくの携帯電話に、それが残っています。
 日本外交のほぼ全てに関わるために、どれほどまでに忙しかったか、無理をなさっていたか。
 戦死と言うほかありません。

 和田さんは間違いなく、将来の駐米大使や外務省事務次官の、すでにして有力な候補でした。
 その公平無私の精神によって、最善の日本国外交官トップとなっていくはずでした。
 日本外交にとっても、言い尽くせないほどの損失です。

 戦士に、戦死あり。

 今また、国士が逝く。

 和田幸浩さん、わだゆきひろさん、あなたは、不肖ぼくを含め、誰の胸にも生き続けます。
 ぼくらの祖国のために、和田幸浩さんにしかできない貢献をなさいました。
 残されたご家族、まだ若いご家族の今後が、いちばんの心残りだと思います。陰ながら、ぼくもささやかにお支えいたしたく存じます。



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「商用」という本来の日本語で何がいけないのでしょうか。(2021-01-05 05:05:32)

2021-01-05 09:13:00 | On the Road


▼中韓をはじめ11の外国から「ビジネストラック」、要は商用を名目に入る外国人については、何らの入境検査すらしないで受け容れる一方で、日本国民には厳しい制限を課す。
 それがまさしく本質だったのが、昨日1月4日の菅義偉総理の会見でした。



▼総理は、「ビジネストラック」 ( ※ この用語はやめるべき。「商用」という本来の日本語で何がいけないのでしょうか。むしろカタカナにすることで何か特別なケースのように官僚主導で装っています。ほんとうは、ふだんの商用と何も変わりません ) について「変異したウイルスがその国で発見されれば、往来をやめる」という趣旨を会見で述べられました。
 しかし、たとえば中国は、武漢熱がその武漢から発生したことをいまだに否定し、世界軍人運動会を通じて米軍が持ち込んだという無茶苦茶な嘘を、事実上、官主導で流しています。
 また「中国は世界に先んじてCOVIDー19を完全に制圧した」と自称しています。

( こうなることが分かっていましたから、不肖ぼくは当初からずっと、武漢熱と、この感染症を呼んでいます。それに対しずっと嫌がらせがあります。そのなかには中国の工作とはまったく無縁のご意見もあるでしょう。しかしながらその場合でも、武漢が発生地であることを忘れさせようとする中国共産党が喜びますと言わざるを得ません)

 その中国が、変異したウイルスについてだけ突然、正直になり、「完全制圧した」という宣伝を急にやめて、日本にきちんと「こちらには変異したウイルスが入ってきました」と知らせてくると、総理は、仰るのでしょうか。
 根拠は何でしょうか。
 また日本側には、中国に変異型ウイルスが入っているのかいないのか、検証する手段がありません。中国共産党の独裁政権の自主申告に待つしかないのが実情です。
 仮に類推することがあっても、それは単なる類推です。この「ビジネストラック」と称する制度は、外交上の相互主義 ( 今回はおたがいに感染症をコントロールしている国と認め合って、その2国のあいだでは商用の往来を認める ) に基づいて実施しています。
 ですから、中国がみずから正直に「こちらの情況が悪くなりました」と認めないと見直しが困難という実態があります。


▼当然、商用と称して入国してくる中韓をはじめ外国の人々の入国を全て、止めることが先です。
 特に中国は、あからさまに観光をし、観光客として飲食している姿を少なからぬ日本国民が目撃しています。
 ぼく自身も、目撃しています。目撃だけではなく、「何の商用ですか」と直に聞くと、それまで英語をいくら喋っていた中国の人が突然、英語はまったく分からないというふりをなさいました。
 この情況で、商用と称して、日本側にそれを受け容れる企業があれば、実質的にはフリーパスで中国の人が入ってくる。
 それでいて日本国民は、飲食業界の人々をはじめ致命的な打撃を与える。
 与党である自由民主党議員として、与党であるからこそ、重大な誤りを指摘しないわけにいきません。


▼また総理は「飲食店が発生源となっている」という趣旨を強調されました。
 それが限定版の緊急事態宣言を出そうとする大きな理由にもされています。
 しかし、たった今の感染者の多数は、感染ルート不明です。少なくとも6割は、不明です。実際はもっと多いとも考えられます。
 それでなぜ、飲食業界を名指しすることが可能なのでしょうか。

「専門家」の判断を持ち出すだけでは理由になりません。
 誠に不肖ながら、ぼくも専門家です。ウイルス学や免疫学、公衆衛生の専門家ではなく、国家危機管理の専門家のひとりです。その危機管理の立場からすると、この飲食業界の名指しは、正しい根拠を見つけられません。


▼なぜ、こうなったか。
 手掛かりは、総理会見の中にあります。
 総理は「北海道や大阪などは(飲食店の営業の)時間短縮を行って、結果が出ている」と指摘され、東京と3県は「(感染者が)減らずに(感染者の増加が)高い水準になっている」という趣旨を語られました。
 つまりは、東京都が飲食店に営業時間短縮を要請しなかったことの批判です。

 その東京の小池知事らが、政府の専権事項、すなわち内閣総理大臣に権限がある「新型インフルエンザ等対策特措法による新型インフルエンザ等緊急事態宣言」に踏み込んで、その発出を求めたことに対する、いわば間接的な回答ですね。
 これが、飲食業界の名指しの要因のひとつになったことは、否定しがたいと考えます。


▼深刻な問題は、小池都知事にもあります。
 これは、小池さんの政治家としての個性に根っこがあります。
 かつてネットニュースの「虎の門ニュース」に参加していた頃、小池さんの初出馬となった前々回の都知事選に際して、この個性のもたらすリスクを、ぼくは指摘しました。そのとき非難の嵐でした。
 しかし残念ながら、その警告も、こうやって事実となっています。

▼もう一度申します。まずは、ビジネストラックなるものをやめて、変異したウイルスのこれ以上の流入を阻む、また無症状の感染者が入国することも阻む。これが最優先です。
 後者については、中国がどれほど独裁の苛酷な国家であるかを、もう一度、考えるべきです。
 独裁政権が「感染症は完全制圧された」と言えば、それを無条件に信じる中国国民は、ぼくも実際に中国で多く体験したとおり、日本のような民主主義国家では考えられないくらい圧倒的に多いのです。
 だから無症状のひとはもちろん、いくらかの症状があっても、もはや自分が感染しているかも知れないとはまったく考えない人が多数派です。
 その人々が日本の「ビジネストラック」を利用して、無自覚に入ってくる事態がすでに起きていると考えるべきです。

 評論家や学者ではありませんから、政権の内部に、水面下で直接的に働きかけています。

▼新動画の「青山繁晴チャンネル☆ぼくらの国会」の新年最初の収録は、あす6日水曜に行います。
 そのときにまた、カメラの向こうのみなさんと対話しつつ、お話しします。
 その6日の夜から、アップされると思います。




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