第3の量子コンピューター、日本勢が快挙 世界最速の2量子ビットゲートを実現
「冷却原子」方式、2030年にも事業化へ
冷却原子気体(れいきゃくげんしきたい)とは、レーザー冷却等の技術を用いて絶対零度の付近まで冷却された原子、あるいは原子気体のことである。典型的には、数十マイクロケルビン以下を記録する。このような極低温では、原子気体の量子力学的な性質が顕著になる。実験的には、いくつかの技術を組み合わせてこの温度を実現する。通常、実験の初期段階では、原子を磁気光学トラップ中に捕捉し、レーザー冷却により冷却する。さらに限界まで冷却するためには、レーザー冷却された原子を磁気トラップや光学トラップに移し、蒸発冷却等の手法を用いる[1]。
十分に冷却されると、原子気体は量子力学に支配された新たな物質状態を形成する。例えば、ボース原子の場合はボース=アインシュタイン凝縮(BEC)が、フェルミ原子の場合は縮退フェルミ気体[2]が実現する。
冷却原子を用いて、量子相転移、BEC、ボソンの超流動、量子磁性、多体スピン・ダイナミクス、エフィモフ効果、BCS超流動、BCS−BECクロスオーバー等の量子現象が研究されている。
量子演算素子(量子ゲート)
従来のコンピュータでは論理演算を実行する基本素子を「論理演算素子」または「ゲート」と呼ぶのと同様に量子コンピュータでの論理演算を実行する基本素子を量子(論理)演算素子、または量子ゲートと呼ぶ。
従来のコンピュータでは、基本ゲートとしてNOTゲートやANDゲートの組み合わせ(万能ゲート)があれば任意の論理演算が行えることが知られている。同様に量子コンピュータでは、1量子ビットの重ね合わせを制御する1量子ビット演算素子(回転ゲート)と、2量子ビットの条件付操作を行なう2量子ビット演算素子(制御NOTゲートまたは制御回転ゲート)の組み合わせにより任意の演算回路を構成できるということが証明されている。
従来のコンピュータでは論理演算を実行する基本素子を「論理演算素子」または「ゲート」と呼ぶのと同様に量子コンピュータでの論理演算を実行する基本素子を量子(論理)演算素子、または量子ゲートと呼ぶ。
従来のコンピュータでは、基本ゲートとしてNOTゲートやANDゲートの組み合わせ(万能ゲート)があれば任意の論理演算が行えることが知られている。同様に量子コンピュータでは、1量子ビットの重ね合わせを制御する1量子ビット演算素子(回転ゲート)と、2量子ビットの条件付操作を行なう2量子ビット演算素子(制御NOTゲートまたは制御回転ゲート)の組み合わせにより任意の演算回路を構成できるということが証明されている。
佐藤 雅哉 日経クロステック/NIKKEI Tech Foresight
2022.11.18
全1942文字 一部
量子コンピューターの性能向上につながる技術開発が進んでいる。分子科学研究所(愛知県岡崎市)教授の大森賢治氏らの研究グループは、「第3の量子コンピューター」として注目される冷却原子型で、ノイズの影響を抑える技術を確立した。日本勢は冷却原子型でレーザー技術を強みに先行しており、大森氏らは2030年にも事業化を目指す。
大森氏らは、冷却原子型で世界最速の2量子ビットゲート(基本演算要素)操作を実現した(図1)。長年の課題だったノイズに影響されにくい量子コンピューターの開発につながる技術だという。同氏らが開発した冷却原子型量子コンピューターは、極低温に冷却した2つの原子をµm(マイクロメートル)レベルに近づけ、特殊なレーザーを当てて操作するもの。10ピコ秒(1000億分の1秒)だけ光る超高速のパルスレーザーを使うことで、6.5ナノ秒で動作する世界最速の2量子ビットゲート(制御ゲート)を実現できる。これは、ノイズの時間スケールより2桁以上速いため、ノイズの影響をほぼ無視できる。
図1 2量子ビットゲートの概念図
図1 2量子ビットゲートの概念図
光ピンセット(赤い光)で捕捉した原子2個に、特殊なレーザー光(青い光)を当てて操作する(出所:分子科学研究所 富田隆文特任助教)
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「これまでは米Google(グーグル)が2020年に超電導方式で実現した15ナノ秒のゲート時間が最速だった」(分子科学研究所)ため大幅な短縮化になる。現在、世界ではさまざまな量子コンピューターの研究開発が進められているが、ノイズなどに起因する「量子誤り」が生じやすく、正確な計算ができないという共通の課題がある。今回の成果は将来、計算精度の高い量子コンピューターの実現に役立ちそうだ。開発が先行している超電導方式やイオントラップ方式の限界を突破できると、多くの投資家も注目する。
量子計算における誤り訂正は、古典的なコンピュータとは異なる一連の困難さがあります。これは量子ビットが連続的な状態を持ち、また量子ビットを観測するとその状態が崩壊するという量子力学の特性によるものです。それにもかかわらず、いくつかの量子誤り訂正の技術が提案されています。
1. 量子エラー訂正符号:これらは、特定のエラータイプを検出し、訂正するための量子ビット配列を利用します。有名な例としては、ショアの9量子ビット符号やスチルウェル符号があります。
2. トポロジカル量子エラー訂正:これらの手法は、トポロジカル量子計算を利用してエラーを訂正します。トポロジカル量子計算は、量子ビットを特定の幾何学的な配列(例えば、二次元格子)に配置し、その幾何学的特性を利用してエラーを検出し訂正します。トポロジカルエラー訂正は、物質中のトポロジカル状態を利用するトポロジカル量子計算と密接に関連しています。
3. デコヒーレンスを防ぐ方法:デコヒーレンスは、量子ビットが周囲の環境と相互作用することで生じるエラーの一種で、これを防ぐ方法がいくつか考案されています。例えば、量子ビットの物理的な環境を制御することで、温度、電磁放射、振動などの外部因子からの影響を最小限に抑えます。
4. フォールトトレラント量子計算:これは、エラーが生じても計算が正しく進行するような量子回路を設計するアプローチです。これには、エラーを訂正するための冗長な量子ビットを含む回路を設計することが含まれます。
これらの技術は、現在の量子計算技術の限界を克服し、量子計算機が大規模かつ実用的になるための重要な
これらの技術は、現在の量子計算技術の限界を克服し、量子計算機が大規模かつ実用的になるための重要な要素です。
量子エラー訂正はまだ初期段階で、効果的なエラー訂正法を開発することは大きな挑戦を伴います。量子ビットの誤り訂正には、高度な技術と深い理論的理解が必要であり、その達成にはまだ時間がかかると考えられています。
しかし、この分野の研究は急速に進んでおり、量子エラー訂正の技術が改善されれば、大規模で実用的な量子コンピュータの構築が可能になります。これにより、従来のコンピュータでは解くことが困難な問題に対して、量子コンピュータが新たな解答を提供することが期待されます。