セイラー教授@によると
『米国でベストセラーとなったシカゴ大学法科大学院教授、キャス・サンスティーンとの共著「実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択」(原題: Nudge)の中でセイラー教授は、私たちが金融行動においてより良い結果を得るためにはどうすべきかについて議論している。
教授らによれば、私たちは何かのやり方を変えるよう「ナッグ(しつこく文句を言う)」されたときよりも、「ナッジ(肘で軽く突く)」されたときの方がずっと良い結果を出す。』
確かにそうかもしれない。(消費・投資)行動の説得には必ずマインドセットの非対称性がある。以下に分解すると、
1 事実認識の情報量が違う
2 洞察に経験の差がある
3 予測には不確実性が含まれる
この三点が被説得側に同期納得するのは99%不可能に近い。故にマインドセットを変更するための説教ナグはうまくゆかない。自分でナッジ(肘で軽く突く)できる立場(市場支配者あるいは大企業)であれば簡単だが、ビジネスではそう従ってくれる、あるいはキーマンに近い相手ばかりではない。したがって投資や消費の行動を説得しようとする相手を「ナッジ(肘で軽く突く)」できる人(ビジネス上の伴侶)を探したほうが早い。一般大衆にとっては有名人や有名大学の権威が間接的に何かを言うということ。反対に特定の相手では、親密なひとか常にアドバイスをしている結びつきの強い人が彼人の周辺の誰かということになる。しかしここに問題が生じる。仮にその人物が見つかっても親密な人に対しても説得にあたり同じようにマインドセットの非対称性が生じる。
どうしたら情報の非対称性を破ることができるだろうか?
説得する側が自分のマインドセットを全部入れ替えること。つまり情報を感性に入れ替えることが重要。もう少し詳しく言うと情報を感覚に翻訳するということ。事実は典型的画像に、洞察と予測は好ましい未来と希望の感覚の一言、一語に変える。これはシステム1が処理する最初の核心である。
1)印象、感覚、傾向はシステム2に承認されれば、確信、態度、意志となる。
人間のアウトプット意思決定や態度決定は論理的ではない。システム1は反応が早すぎるので、結論の飛躍が許容される。ここが対面説得の有利なところなのだが、拒否される時もまた飛躍されてしまう危険がある。
【貨幣を見習え】
抽象的すぎる話に見えるが、予測情報を感覚に入れ替えることに最も成功している最古の例が貨幣である。特に金は貨幣としてよくできたアイコンです。ひと目で分かり安定して誰もが欲しがりそうな外観をしている。ビジネスプランや商品でも最終的には貨幣になりうるくらいよくできた説得であればよい。
ゲーリー・クライン*の提案する「死亡前死因分析」presortem も有効な自己説得方法である。
ゲーリー・クライン*の提案する「死亡前死因分析」presortemとは*G a r y A . K l e i n , S o u r c e s o f P o w e r ( C a m b r i d g e , M A : M I T P r e s s , 1 9 9 9 ) . 〔 『決断の法則 ─ ─人はどのようにして意思決定するのか ? 』佐藤洋一監訳 、トッパン 〕を参照
@リチャード・H・セイラー(Richard H. Thaler, 1945年9月12日 - )は、アメリカ合衆国の経済学者。シカゴ大学教授。専門は、行動経済学。
行動科学の理論家として国際的な研究業績を持ち、ダニエル・カーネマンらと協働し研究を牽引してきた。