オレゴン州立大学で発見された「YInMnブルー」(c)Mas Subramanian, Oregon State University
元素記号を冠した青色
その塗料の名前は「YInMnブルー」。由来はイットリウムのY、インジウムのIn、マンガンのMnといった元素記号で、これが生まれたのは、科学者マス・サブラマニアン教授のチームにいた院生による、ちょっとした配合間違いが原因でした。
オレゴン州立大学のサイトによれば、教授たちは顔料を作ることが目的ではなく、「強誘電体と強磁性体の両方を兼ね備える興味深い電子特性を探していただけ」だったのだそうです。
青色の歴史
アートの世界では1600年代にフェルメールが、当時純金と同じ価値を持つ鉱石ラピスラズリをふんだんに使った、たいへん青が美しい絵画を制作していました。その後1800年代初期にフランスで開発されたコバルトブルーは発ガン性がありますし、プルシアンブルーはシアン化物を放出してしまいます。それに古代エジプト時代から、毒性以外にも青色顔料は熱や酸性の条件にさらされると安定しない、という欠点を抱えてきた歴史があります。
ですが、「YInMnブルー」は安全に生産ができる上、耐久性が高く従来の青色より環境に優しい、ついでに酸に浸けても1週間以上退色しない、そして赤外線と紫外線にも強い、といいこと尽くしなのです。
10g/10ドルでサンプル提供中
今は販売権を持つShepherd Color Company社が、当局の規制をクリアするべく奮闘していますが、興味のある芸術家などにサンプル10gを10ドルで提供しています。つまり1gが110円と、他の塗料より高価なのですが、もし高い耐久性を持つ美しい青で建築物や工業製品を塗装したい場合は、「YInMnブルー」一択となるでしょう。
美術界でも注目
美術の世界でも、大昔にラピスラズリで作られたウルトラマリン色で描かれた絵画の修復で使えそうだ、と注目されており、またハーバード美術館が持つフォーブス・ピグメント・コレクションという色彩収蔵に追加されたことからも、美術で使用できる顔料として学術的に認められています。
まだ広く普及するまでには至っていませんが、いずれ街中や、はたまたインクジェット・プリンターなどにも登場するかもしれません。
Source: OSU, artnet'news, Shepherd Color Company via IFLSCIENCE!, The Harvard Gazette