公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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イレッサ判決

2011-02-28 12:37:23 | 健康など
今後の医薬品開発に大きな影響を与えそうな判決とおもう。有効性と承認の妥当性は判決で認定されたが、副作用欄記載とその他の情報開示で製造者責任のアストラゼネカが6000万円を超える賠償を命じられた。アストラゼネカ側の代理人池田裕彦弁護士がコメントしているように、重要な副作用欄の内容はどれも重要であって、軽重つけるにはかなり長期の臨床実績が必要と思われる。添付文書記載の変更は制度としても発売後に起こりうるのが新薬の承認制度。それにもかかわらず、一番最初に書かれるべきだった(供給者の製造物責任)と認定されるならば、重要な副作用欄は中世フランスのラウンドロビン(立体的に輪になったリボン)にしなきゃならないだろう。添付文書以外の方法でも重要な副作用が周知されるべきだったとするなら、製品ホームページや代理店に情報を開示しておけば責任認定はなかったのかもしれない。
そもそも副作用を厳密に特定することが出来ないから患者に対して医師がリスクを説明する製造物ではないのかという製造物の社会的地位という点にも他の製造物のPLとは違うのではないかという疑問が残る判決である。

(引用)
「抗がん剤「イレッサ」の副作用を巡る裁判で、大阪地方裁判所は2011年2月25日、販売元のアストラゼネカの責任を認め、6050万円の賠償金を支払うよう命じた。アストラゼネカの代理人である大江橋法律事務所の池田裕彦弁護士らは同日の会見で、判決に対する所感などを述べた(関連記事1、関連記事2)。

 まず池田弁護士らは、抗がん剤としてのイレッサの有用性が認められたこと、副作用死の発生が明らかになり緊急安全性情報が出された後の対応が適切であったと認定されたことは妥当であるとした。

 判決では、間質性肺炎に関する記述を重要な副作用欄の最初に掲載していなかったこと、および間質性肺炎が致死性であることを警告欄に記載しなかったことを製造物責任法上の欠陥と断じ、賠償を命じている。

 この点について池田弁護士は、「抗がん剤の場合、重要な副作用欄に書いてある副作用はどれも死亡に至る可能性があり、判決通りであればどういう順番で記載するかが大きな問題となる。その順番を決定するためにこれまでより大規模な臨床試験を実施しなければならなくなり、ドラッグラグが悪化する可能性がある。また、死亡の恐れがあるから警告欄に入れろというなら、ほとんどの副作用を記載しなければならなくなり、本当に注意すべき情報が埋没することになる」と述べた。

 イレッサの治験(677症例)では、承認用量の250mgでは間質性肺炎は発症しておらず、500mgで2例発症があった(死亡例は0)。審査の対象とならなかった参考試験(1700症例)では、250mgでは発症せず、500mgで2例発症し、うち1例が死亡例であった。その他に治験外使用で約1万例の使用例があり、5例発症しうち1人が死亡している。

 池田弁護士この点について、「治験では承認用量で死亡例は出ていない。データを解釈すれば、250mgで間質性肺炎で死亡するかどうかは分からないが、500mgで死亡例があったので可能性は否定できない。それで重大な副作用の欄に記載した。少なくともイレッサが承認された時のデータに基づけば、重大な副作用欄への記載で十分ではないかというのが当方の主張だ。承認後も添付文書は改訂されるのが普通だ。添付文書を改訂する必要のあるような製品を承認するなというなら、それだけ時間がかかる。肺がんのように年間何万人も死亡するような疾患で、それでいいのだろうか」と話した。(河野修己)

(日経バイオから引用)
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