公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

Triggering neurodegeneration from the gut いいことばかりではない短鎖脂肪酸

2017-04-25 14:41:45 | 健康など

いいことばかりではない短鎖脂肪酸の新しい側面、動物モデルではあるが、神経変性疾患が腸内産物を原因としている現象が見つかった。
Triggering neurodegeneration from the gut

こちらよりメモる
要約 パーキンソン病においては、α-シヌクレインの凝集によりドパミン作動性ニューロンの死滅が引き起こされ、結果として運動障害が発生する。α-シヌクレイン凝集体は腸神経にも認められ、パーキンソン病患者においては、便秘などの消化管症状の発生が、運動障害の発生に先行する場合が多い。パーキンソン病患者にはディスバイオシス、すなわちマイクロバイオーム組成の変化が認められること、また、腸内細菌叢は、消化器系と脳の両方においてシグナル伝達と機能を変化させる可能性があることに注目して、Sampsonらは、パーキンソン病のモデルとなるα-シヌクレイン過剰発現マウス(ASOマウス)を用いて、腸内細菌叢とパーキンソン病の関連を検討した。複雑な細菌叢を有するASOマウスと比較して、無菌ASOマウスでは、運動障害が軽減され、糞便排泄が正常であった(正常な消化管機能が示唆された)。さらに、無菌ASOマウスでは、パーキンソン病で侵される脳領域において、α-シヌクレイン凝集の減少と、活性化低下を示唆する形態をもつミクログリアが認められ、いくつかの脳領域において炎症性サイトカイン濃度が低下していた。無菌ASOマウスにおいて出生後に複雑な細菌叢を定着させると、運動障害が悪化し、糞便排泄が減少し、ミクログリア活性化が増加した。一方、複雑な細菌叢を有するASOマウスにおいて、出生後に抗生物質投与により細菌叢を除去すると、運動障害、消化管機能障害、ミクログリア活性化が部分的または完全に改善された。ウイルス感染時に腸内細菌から放出される短鎖脂肪酸が、ミクログリアを活性化させる可能性があるが、無菌ASOマウスでは、複雑な細菌叢を有するASOマウスと比べて、短鎖脂肪酸濃度が低かった。無菌ASOマウスに短鎖脂肪酸を投与すると、ミクログリア活性化とα-シヌクレイン凝集が増加し、運動機能が障害された。パーキンソン病患者の糞便細菌叢を投与されたマウスでは、健常対照者の細菌叢を投与されたマウスよりもより一層の運動機能障害が発生した。これらの結果から、腸内細菌叢によって産生される代謝物が、パーキンソン病に特徴的なミクログリア活性化、α-シヌクレイン凝集、運動障害に関与していることが示唆される。

Editor's Choice
Sci. Signal. 13 Dec 2016:
Vol. 9, Issue 458, pp. ec291
DOI: 10.1126/scisignal.aam5613

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

T. R. Sampson, J. W. Debelius, T. Thron, S. Janssen, G. G. Shastri, Z. E. Ilhan, C. Challis, C. E. Schretter, S. Rocha, V. Gradinaru, M.-F. Chesselet, A. Keshavarzian, K. M. Shannon, R. Krajmalnik-Brown, P. Wittung-Stafshede, R. Knight, S. K. Mazmanian, Gut microbiota regulate motor deficits and neuroinflammation in a model of Parkinson’s disease. Cell 167, 1469–1480 (2016). [PubMed]






いいことの方の話メモる

Cancer
Why a High-Fiber Diet Prevents Cancer

Editor's Choice
Sci. Signal., 13 January 2015
Vol. 8, Issue 359, p. ec8
DOI: 10.1126/scisignal.aaa6561

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

D. R. Donohoe, D. Holley, L. B. Collins, S. A. Montgomery, A. C. Whitmore, A. Hillhouse, K. P. Curry, S. W. Renner, A. Greenwalt, E. P. Ryan, V. Godfrey, M. T. Heise, D. S. Threadgill, A. Han, J. A. Swenberg, D. W. Threadgill, S. J. Bultman, A gnotobiotic mouse model demonstrates that dietary fiber protects against colorectal tumorigenesis in a microbiota- and butyrate-dependent manner. Cancer Discov. 4, 1387–1397 (2015). [PubMed]

C. Sebastián and R. Mostoslavsky, Untangling the fiber yarn: Butyrate feeds Warburg to suppress colorectal cancer. Cancer Discov. 4, 1368–1370 (2015). [PubMed]

要約 食物繊維の多い食事は結腸の健康を促進する。腸内共生細菌が結腸がんを防いでいるのかもしれない。細菌のButyrivibrio fibrisolvensは、繊維を酪酸などの短鎖脂肪酸へと発酵させる。酪酸は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の阻害物質であり、遺伝子発現のエピジェネティックな調節において機能を果たす。Donohoeらは、腸内細菌叢が厳密に調節されるように操作された近交系マウスを用いて、結腸がんにおける高繊維食と腸内細菌叢の機構的な関連を調べた(SebastiánおよびMostoslavskyも参照)。B. fibrisolvensを定着させたマウスに高繊維食を与えた場合には、低繊維食を与えられたマウス、代謝的に欠損のある細菌株を定着させたマウス、または細菌叢の不足しているマウスに比べて、結腸管腔内の酪酸量が増加し、発がん物質に曝露させたときに発症する結腸腫瘍がより少なく、より小さく、進行度もより遅れていた。結腸内の酪酸を増加させるためにトリブチリンを添加した栄養強化食を与えられたマウスも同様に、化学物質に誘発される結腸がんの発症から保護された。HDACの阻害に加えて、酪酸は脂肪酸の一種として結腸上皮細胞のエネルギー源となっているが、結腸がん細胞では、エネルギー源がグルコースの燃焼へと代謝的に移行している。マウス結腸腫瘍では、隣接する正常な結腸細胞に比べて、グルコース代謝のマーカー量と細胞内酪酸濃度が増加していたことから、がん細胞では酪酸が効率的に代謝されていないことが示唆される。組織切片の分析からは、高繊維食を与えられたB. fibrisolvens定着マウスの腫瘍では、対照マウスの腫瘍または隣接する正常な結腸上皮の腫瘍に比べて、ヒストンH3のアセチル化とアポトーシス促進性遺伝子の発現が亢進され、アポトーシスのマーカー量が増加していることが明らかになった。ヒト組織の場合、結腸直腸腺がんでは隣接する正常粘膜に比べて、酪酸量とアセチル化ヒストンH3量が増加していた。これらの知見は、線維が腸内の細菌発酵とがん細胞の代謝変化を通じて結腸がん細胞の生存を選択的に抑制していることを示している。

L. K. Ferrarelli, Why a High-Fiber Diet Prevents Cancer. Sci. Signal. 8, ec8 (2015).
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