「京(けい)コンピュータ」は一番になるのか?既に地球シミュレーターの2.5倍の性能。
BMB2010、神戸の理研計算科学研究機構で京コンピュータの搬入が1%超、ポートライナー駅名は「京コンピュータ前」に
「分子スケールから細胞スケール、臓器全身スケールへと滑らかにつないでいき、法則に基づいて予測できる生物学に切り替えていきたい」──。神戸市で開かれたBMB2010(関連記事1)で2010年12月9日午後、ワークショップ3W19-p「次世代生命体統合シミュレーション」が開かれ、理化学研究所情報基盤センター(関連記事2)の姫野龍太郎センター長/次世代計算科学研究開発プログラム次世代生命体統合シミュレーション研究推進グループディレクターが、「次世代スーパーコンピュータと生命科学でのグランドチャレンジ」と題して講演した。
09年の事業仕分けで改めて大きな注目を浴びることになった次世代のスーパーコンピュータ「京(けい)コンピュータ」は、神戸市のポートアイランドで整備が進んでいる。「建物はすべてできあがり、コンピュータ機材の搬入が始まった。もう“次世代”ではない。昨年試作に成功し、CPUは128GFLOPSと、確か当時の世界最高を達成した。64万コア以上の並列により、地球シミュレータに比べ250倍。東京工業大学のつばめ2.0に比べ約10倍のスピード。現在、全体の1%に相当する8筐体・8ラック分が設置され、既に地球シミュレーターの2.5倍の性能となっている」と姫野センター長は語った。
京コンピュータの整備が進む理研計算科学研究機構の建物は、ポートライナーの「ポートアイランド南」駅のすぐ近くにあった(写真)。
神戸新交通が配布している印刷物によると、ポートライナー線では、2011年7月(予定)の中央市民病院の移転などに合わせて、駅名が変更される。現在の「市民病院前」は「みなとじま(キャンパス前)」に、「先端医療センター前」は「医療センター(市民病院前)」に、「ポートアイランド南」は「京コンピュータ前(花鳥園前)」に変更になる(カッコ内は副駅名)。またBMB2010の会場最寄りの駅「市民広場」は副駅名を新設し、「市民広場(コンベンションセンター)」となる予定だ。
この理研情報基盤センターの研究成果は、最近では2010年11月17日(日本時間)、Nature Communications誌オンライン版に掲載された。同センターの客員研究員を務めている京都大学大学院理学研究科の高田彰二准教授と京大の姚新秋研究員ら、東京工業大学大学院生命理工学研究科生命情報専攻の村上聡教授(関連記事3)の共同研究の成果だ。多剤排出トランスポーターの機能を分子シミュレーションで解明し、多剤耐性化のたんぱく質AcrBの3つの部分構造が順序良く機能する仮説を実証した。
共同研究グループは、独自に開発した分子複合体を高速に扱える粗視化分子シミュレーション技法を使って、AcrBの薬剤排出過程を計算機上で再現し、機能的回転機構を実証した。さらに、その機構で、生体膜中のAcrBにプロトンが結合することに起因する薬剤の解離過程が、機能的回転のボトルネックになっていることを示唆した。
この研究成果を11月17日に発表したプレスリリースでは、「今後の展開」について次のように記載している。「今回の研究は、次世代スパコン『京』が稼働する2012年を前に、粗視化技術を取り込んだ分子シミュレーションの研究開発を進めたもの。文部科学省が進める『次世代生命体統合シミュレーションソフトウエアの研究開発』プロジェクトでは、より高精度なシミュレーション研究も同時に進行している。今後、次世代スパコン『京』により高精度計算が可能になると、原子レベルでの詳細な動きが解明できると期待できる。これは、多剤排出トランスポーターによって排出されない薬剤、あるいは同トランスポーターの働きを止める薬剤の開発の基礎に貢献するものだ。」(河田孝雄)日経バイオ
BMB2010、神戸の理研計算科学研究機構で京コンピュータの搬入が1%超、ポートライナー駅名は「京コンピュータ前」に
「分子スケールから細胞スケール、臓器全身スケールへと滑らかにつないでいき、法則に基づいて予測できる生物学に切り替えていきたい」──。神戸市で開かれたBMB2010(関連記事1)で2010年12月9日午後、ワークショップ3W19-p「次世代生命体統合シミュレーション」が開かれ、理化学研究所情報基盤センター(関連記事2)の姫野龍太郎センター長/次世代計算科学研究開発プログラム次世代生命体統合シミュレーション研究推進グループディレクターが、「次世代スーパーコンピュータと生命科学でのグランドチャレンジ」と題して講演した。
09年の事業仕分けで改めて大きな注目を浴びることになった次世代のスーパーコンピュータ「京(けい)コンピュータ」は、神戸市のポートアイランドで整備が進んでいる。「建物はすべてできあがり、コンピュータ機材の搬入が始まった。もう“次世代”ではない。昨年試作に成功し、CPUは128GFLOPSと、確か当時の世界最高を達成した。64万コア以上の並列により、地球シミュレータに比べ250倍。東京工業大学のつばめ2.0に比べ約10倍のスピード。現在、全体の1%に相当する8筐体・8ラック分が設置され、既に地球シミュレーターの2.5倍の性能となっている」と姫野センター長は語った。
京コンピュータの整備が進む理研計算科学研究機構の建物は、ポートライナーの「ポートアイランド南」駅のすぐ近くにあった(写真)。
神戸新交通が配布している印刷物によると、ポートライナー線では、2011年7月(予定)の中央市民病院の移転などに合わせて、駅名が変更される。現在の「市民病院前」は「みなとじま(キャンパス前)」に、「先端医療センター前」は「医療センター(市民病院前)」に、「ポートアイランド南」は「京コンピュータ前(花鳥園前)」に変更になる(カッコ内は副駅名)。またBMB2010の会場最寄りの駅「市民広場」は副駅名を新設し、「市民広場(コンベンションセンター)」となる予定だ。
この理研情報基盤センターの研究成果は、最近では2010年11月17日(日本時間)、Nature Communications誌オンライン版に掲載された。同センターの客員研究員を務めている京都大学大学院理学研究科の高田彰二准教授と京大の姚新秋研究員ら、東京工業大学大学院生命理工学研究科生命情報専攻の村上聡教授(関連記事3)の共同研究の成果だ。多剤排出トランスポーターの機能を分子シミュレーションで解明し、多剤耐性化のたんぱく質AcrBの3つの部分構造が順序良く機能する仮説を実証した。
共同研究グループは、独自に開発した分子複合体を高速に扱える粗視化分子シミュレーション技法を使って、AcrBの薬剤排出過程を計算機上で再現し、機能的回転機構を実証した。さらに、その機構で、生体膜中のAcrBにプロトンが結合することに起因する薬剤の解離過程が、機能的回転のボトルネックになっていることを示唆した。
この研究成果を11月17日に発表したプレスリリースでは、「今後の展開」について次のように記載している。「今回の研究は、次世代スパコン『京』が稼働する2012年を前に、粗視化技術を取り込んだ分子シミュレーションの研究開発を進めたもの。文部科学省が進める『次世代生命体統合シミュレーションソフトウエアの研究開発』プロジェクトでは、より高精度なシミュレーション研究も同時に進行している。今後、次世代スパコン『京』により高精度計算が可能になると、原子レベルでの詳細な動きが解明できると期待できる。これは、多剤排出トランスポーターによって排出されない薬剤、あるいは同トランスポーターの働きを止める薬剤の開発の基礎に貢献するものだ。」(河田孝雄)日経バイオ