公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

必要条件の類型

2011-01-04 09:49:24 | ドラッカー
「必要条件を簡潔かつ明確にするほど、決定による成果はあがり、達成しようとするものを達成する可能性が高まる。逆に、いかに優れた決定に見えようとも、必要条件の理解に不備があれば、成果をあげられないことが確実である。必要条件は、『この問題を解決するために最低限必要なことは何か』を考え抜くことによって明らかになる。」

ドラッカー(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)


遠回りするということが大切だ。成果を導き出す見通しに関して、たとえ現時点で小さなチャンスに見えたとしても、必要条件が簡潔明確という属性のターゲットを顕在市場顧客の言葉から金言を探すことから始めるべし。顧客発情報にはヒントが埋もれている。


当社のオーラルケア商品もあるお客様の「口内炎の痛みが治まった」という一言から歯科医師との共同開発が始まった。

たとえば売り買いの場面で、商品にたくさんのオプションがあることで、魅力がある提案プランが描けるよりも、顧客のニーズがコストの削減ならば他に優位条件を付け加えずに簡潔明瞭に自分たちになにが出来るのか考え抜くことが重要。あるいは自動車産業の部品メーカーのように避けては通れないマーケット支配者が上位に存在する場合、汎用部品なのか専用部品なのかという判断は、自社の利益率だけを優先しては決められない。あるいは新技術の開発であるレシオで圧倒していても、他の必要条件が犠牲になるような技術は開発できない。あるいは陳腐化という見えない疫病とも闘わねばならぬ。こういうマーケットは捨てるというオプションも考慮しつつ必要条件を絞り込んでゆく。

マーケットにおける失敗はほとんどこの類型にあてはまる。
ドラッカーはさらに続ける。

「必要条件を満たさない決定は、成果をあげられない不適切な決定である。実際、そのような決定は間違った必要条件を満たす決定よりもたちが悪い。もちろん、正しい必要条件を満たさない決定も、間違った必要条件を満たす決定も間違いである。だが間違った必要条件を満たす決定ならば、救済することはできる。一応の成果はあがるからである。満たすべき条件を満たさない決定は、新しい問題を生むだけである。」(『プロフェッショナルの条件』上田惇生編訳)

「だが間違った必要条件を満たす決定ならば、救済することはできる。」という言い方がおもしろい。
世の中には間違った質問に”正しい答え”をつけるやっかいなコンサルタントが跋扈している。十分でない必要条件を満たした決定が、コンサルタントの”正しい答え”で補強されているとき、その修正にはさらにやっかいな問題を生み出す。コンサルタントは外部の者とは限らない、小企業や組織では自分自身の判断の場合もある。実際の販売では必要条件は何かという設問で、仕様書と見積書を出してくださいと顧客に言われた段階で、これを満たせば良いと直反応しただけでは隠れた必要条件を満たしたことになっていないケースがしばしばある。仕様書も見積書も正しい対応だが、実績あるいは顧客の活動するマーケットでの優位性(価格、性能、独占、ブランド)は仕様書と見積書に書かれていない。少なくとも相手の背負っているミッションをその場ですべて満たさなければ前には進めない。
コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新年 | トップ | 流通力をもつナレッジ・カン... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
本田宗一郎 (Okayama)
2011-01-14 14:15:25
本田宗一郎がSONYで講演したと言うからそれだけでも貴重。何でこれほどの落語家が自動車会社の社長になったのかね。

冗談はさておき、「王さんのない将棋をいっぺんしてみたい」とはどういう心境だろう。組織が本田宗一郎自身になった状態。この状態を経営の理想としたのだろう。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。