公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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今読んでる『終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか』水野和夫

2017-02-16 09:04:00 | 今読んでる本
「終わりなき危機 君はグローバリゼーションの真実を見たか 」水野和夫著 単行本 日本経済新聞社2,800円– 2011/9/6 古本なら280円。

2011年9月発行の本。水野和夫氏の著作紹介はここでは2冊め、このブログの参考文献リストにも入っている。この536ページもある著作の355ページから536ページまでが注記であることに驚く。比較的新しい2011年位の文献まで非常に広い見識からまとめられているので、日本経済新聞社のよく出す単なる教養書ではない。研究者も読むだろうと想定して書かれている。

前に書評で紹介したのは「資本主義の終焉と歴史の危機」であったが、この本はもっと経済側から書かれている。同じ基調の利子率革命、価格革命、に加え、アングロサクソンから見たフロンティア、海の時代、Z軸 情報金融の時代、更に自国民を境界のそとに捨てるサブプライムといった、文明の型がとうとう行き詰まってきたという大きな近代トレンド終わりの後の現代という基調だ。いろいろ知らなかったことを発見するのだが、貸出図書では消化しきれない。これは初延長かな?こんな良書が280円なんて、もうちょっとなんとかならないのかな。
「資本主義の終焉と歴史の危機」
著者 水野和夫
出版社 集英社, 2014
ISBN 4087207323, 9784087207323
ページ数 218 ページ
『1 4 5 0 ~ 1 6 5 0年のおおよそ 2 0 0年間は 、中世が終わり近代が始まる大きな歴史の転換期で 、 「長い 1 6世紀 」 ( F ・ブロ ーデル )と呼ばれています 。この 「長い 1 6世紀 」も 2 1世紀も 、どちらも投資先がないという点で共通しているのですが 、現在の状態には 「長い 1 6世紀 」のときとは 、決定的に異なる点があります 。それは 、地球が閉じたことです 。したがって 、日独のマイナス金利は今後 、米英 、そして中国へと伝播していくと考えられます。』


ロバート・ダールが2007年10月9日の朝なにを思ったのか、わたしは知りたかった。自分が生み出した、リスクに基づく欧米の金融システム全体が崩壊したと聞いて、どう感じたのだろう?  看護師がダールの耳元でささやいた。ダールは姿勢を変えて、酸素マスクを一瞬外した。「いつかは行き過ぎてしまうとわかっていた。やりすぎる時がくるとね」ご自身にも責任の一端があるのでは? あなたが作ったシステムですから。ダールは、金融システム全体を壊滅の一歩手前まで追い込んだ爆弾の導火線に火をつけたのが自分かもしれないという可能性について思いをめぐらせた。「わたしはロバート・オッペンハイマーみたいなものさ。原子爆弾を発明したが、わたしが落としたわけじゃない」(世界を変えた14の密約)


私見だが日本の近代は、1491年下克上に始まる。そして現代が新しい中世の始まりであろう。野心とは無縁で何処にも行きたがらない若者を見ていると地球が閉じたことを彼らは感じ取っているとわかるような気がする。世代の問題ではない。五百二十年以上前から続く近代からの断絶。こちらから見る向こう側の無縁感は、人類の誰もが見たことのない絶望である。

近著「株式会社の終焉」も読んでいるが、水野氏は株式会社の歴史は知っていても、株式会社経営の実態はご存じないようだ。前にも述べたが結論ありきの胡散臭い叙述はやめた方がいい。

例えば日本の株主資本は598兆円で2015年に倒産した企業の負債総額は2兆円だから、株式会社のリスク顕在化は0.3% しかないと水野は言っている。2兆円の倒産負債は債務が顕在化した一部の企業活動の停止であり、企業活動停止のすそ野はもっと広い。家業でもない新規に始めた本当に小さなスタートアップの5年存続率は10%、10年は1%未満だ。つまり活動期間を10年前後で見れば、株主資本のリスクは90%以上、倒産統計に計上されなくても何らかの形で(赤字経営、無配当、給与遅配、税金滞納、夜逃げ、活動停止、債権すり逃げ)で顕在化している。水野氏が言っている企業はエスタブリッシュメント及びその周辺相の企業群のこと、日本企業企業の1%程度のエリート群の数字を言っているに過ぎない。このように企業は常に悪意を持っていて、経営者は盗んだり怠慢になったりする(「アダム・スミス」―『道徳感情論』と『国富論』の世界 (中公新書)2008/3 堂目 卓生)と教えられてきた世代には、東芝などのエスタブリッシュメントの腐敗は理解できても、自らの裁量才覚で事業を起ち上げる者の苦悩など知る動機すらない。本当の終焉の後に再生を担うのは我々だ。



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