公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

書評『きことわ』朝吹真理子著

2017-04-30 13:16:31 | 今読んでる本
記憶しているから過去なのか、過去だから記憶しているのか。記憶を過去に置き換え続ける脳神経の仕組みに従って時間が経過したのか、本当に時間が経過している様子を客観的運動で測ることができるから過去を現在と区別できるのか?たぶん心配だから人間は時計を発明したのだろう。

夢を見る永遠子と見ない貴子の合わせ鏡は同じになることとのない夢と現実を象徴している。

砂時計が出てくるのも時間問題の象徴だろう。読んだのはだいぶ前

わたし達は未来の夢を見ることがある。夢の中では時間の次元が何かに絡みついて立体感のある映像として過去も未来も存在するが、現在だけがいつもわからない。目覚めている時の裏側の世界が夢の世界であるようにさえ思う、夢の中は覚醒している時の現在感だけが無い。。そういう世界に覚醒しながら放り込まれるそれがこの小説の面白いところだ。私たちの平常心は現在感(第一の直感と第二の直感)によって一つになっている。それもまた脳の創り出した虚構なのだが。この作品は現在という意識統一の虚構と過去と未来の同等性をわれわれに投げつけて、伝統的私小説の時間的根拠に疑いを抱かせて終っている。これは私小説時間を終わらせた私小説と言っていいと思う。

「パターン分離が歯状回以外の神経回路においても行われる可能性も考えられる.CA3領域は歯状回と同様に嗅内皮質第2層からの直接の入力をうけており,苔状細胞はCA3領域からの投射をうけているという報告も」ある。このパターン分離という原始的な神経認識が、あらゆる知性を支えている。すなわち、区別できるということが因果という高次のパターン分離の関数を脳神経に定着させているから、無駄に情報を溜め込まなくても、予想で動くことができる。嗅覚はその最も大切なパターン分離の祖先ということになる。
Scharfman, H. E.: Evidence from simultaneous intracellular recordings in rat hippocampal slices that area CA3 pyramidal cells innervate dentate hilar mossy cells. J. Neurophysiol., 72, 2167-2180 (1994)


朝吹真理子はその【きことわ(2011年1月 新潮社 / 2013年8月 新潮文庫)】後五年以上何も書けていないがこの疑問を抱いたままでは多分書けないだろう。もう一度書くとしたら、現在を私的に承認しなければならない。失礼致しました。現在連載中が一つあった。








朝吹一族に縁を持ったからには、華麗なる一族と報道写真家、写真誌編集者の草分け名取洋之助に触れないわけにはいかない、富士電機創業の実業家名取和作が父、朝吹常吉の妹、福子が洋之助の母である。以前紹介したサン・モトヤマの茂登山長市郎に文化と美の手ほどきをした名取洋之助である。朝吹常吉(三越社長、王子製紙重役)と朝吹真理子の関係は、朝吹常吉が曾祖父である。フランス文学者翻訳者小説家の朝吹登水(登水子)は祖父朝吹三吉(フランス文学者)の兄弟である。
 朝吹 福子(朝吹英二の長女、名取和作の妻)朝吹 英二は英一の祖父で三井財閥の大番頭(経済界のドン)
 朝吹登水(登水子)の甥が朝吹誠フィンガーズのメンバーである。

 なお緊縛の女王、朝吹ケイトが朝吹真理子どういう関係かは不明(芸名だろうね)。


追補2017.4.30
『京都市の市立図書館が、フランス文学者で文化勲章受章者の故・桑原武夫さんの遺族から寄贈を受けた1万冊あまりの蔵書を、遺族の了解を得ずに、すべて廃棄していたことが分かり、京都市は遺族に謝罪しました。 』桑原武夫はやんちゃな人だったが、本に罪はない。折り合いがつかなければ譲渡先を公募することは考えなかったのだろうか?焚書は文明の衰え、自国都合主義と国民国家の再生が異なるように、自国文化の栄養となった書籍をゴミ扱いする図書館は蔦屋システムと区別がつかない本置屋(安価な仕入れと売れるときだけの品揃え)稼業と文化の砦図書館は存在の目的が違う。単なる市民サービスではない。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 28 legislative signings | トップ | デザインの参考に »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。