和歌山出身の祖母が62歳ATLでたぶん死んだはず。たぶんというのは医学が追いついてなかったから。
沖縄HTLV-1/ATLバイオバンク試料を用いて血漿タンパク質の網羅的発現解析を行い、HTLV-1キャリアとATL患者との間で比較検討し、ATL患者において可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(可溶性TNFR2)が著明に上昇していることを見出した。
これまでATL患者で上昇する血漿タンパク質がいくつか見出されているが、より鋭敏かつ正確にATLの発症を診断する血漿タンパク質を発見した。
HTLV-1キャリアからATL発症の早期診断法の開発は、ATLの治療成績向上に向けて重要である。また治療反応性を鋭敏に示す可能性もあり、今後予後予測のマーカーとなるか検討する。
特に差の大きいタンパク質に注目し、ELISA法(注8)を用いた検証実験を行ったところ、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(soluble tumor necrosis factor receptor 2, 可溶性TNFR2)がHTLV-1キャリアでは正常値であるのに対して、ATL患者、特に急性型において著明に上昇していることが判明しました。
腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor: TNF)はサイトカイン(注9)で、その一種のTNF-αは固形がんに壊死を生じさせるサイトカインとして発見され、炎症や細胞死の誘導、腫瘍発生など多様な生理作用を有していることが知られています。TNFR2はTNF-αの受容体の一つで、いくつかの腫瘍で増殖に働きます。可溶性TNFR2は、TNFR2が細胞表面から離脱し血中に流れ出たものです。本研究ではまた、ATL細胞表面のTNFR2高発現も確認されております。これまでにATLで血漿中の可溶性TNFR2が上昇しているという報告はなく、可溶性TNFR2はATL診断の新規バイオマーカーとして期待されます。今後は可溶性TNFR2の上昇がATLの発症予測、早期診断、予後予測因子となるか、臨床的意義を探索する必要があります。またTNFR2が細胞表面から離脱する機序の解明も重要な課題です。その機序の解明がATLの診断のみならず、新規治療法の開発にも繋がると考えられます。