公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

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イノベーション政策の罠

2013-08-03 09:55:38 | ドラッカー
石炭から石油に、石油から原子力にエネルギーの主役が変わると予想した20世紀。木材からコンクリート、鋼鉄とガラスに建築の主役が変わると予想した20世紀。電化が文明の尺度と思っていたレーニンの20世紀。インターネットが始まった20世紀。

21世紀となり、時代のイノベーションの主役はもはや一人ではない。イノベーションの役者たちが集まる仕組みを持つ國が真に強国となる。つまり人の流れが世の中を強くするし、弱くもする。重要なことはどのような言語を用いるか、どのような数式を用いるか、どのような資金を集めるかということで、人の流れが大きく変わる。今日本政府がやっているイノベーション政策は、一昔前のハリウッドのスターシステムのようなもので、役者となる技術を固定して、必ず当たるという大前提のもとで映画スタジオを建設しているようなものの過ぎない。イノベーションは一見関係のないところで突然起こる

今はあっという間に人の流れが変わる、だからこの時代には役者を固定することは危険が大きすぎる。予想もしないゼロからの価値ほど希少なものはない。

イノベーションの役者たちが集まる仕組みを創るには仕組み自体がスターでなければならない。そのために、仕組みには法に定める限界や道徳が要請する限界、あらゆる規制を麻痺させる強い実行力と高い理想と魅力が随伴しなければならない。20世紀のイノベーションをみても、疑問を発する感性こそが資源であり、そのような疑問は何処からやってくるのかといえば、ひとりひとりの脳履歴の差の発見からもたらされる。

従って如何にしてそのような感性を集めて比較させ、疑問をもたせるかということをうまく行うことが強国の条件となる。

日本の近代化で起きたことはこの脳履歴の差を、黒船や攘夷といった試金石で削り合って、どれだけ同じでどれだけ違うかということを発見していった。乱暴にも剣戟にものを言わせて選別し疑問を沸騰させてきた。そういうやり方には破壊力があるが、建設のためには長く続けられない。イノベーションにとって肝心なことは言ってることよりもやってることが重要な判断材料になるそういう時代沸騰は有益だということ。

あらゆる技術的、文化的、政治的、従って政策的既存概念を麻痺させる試金石に相当するものの自覚、覚醒が21世紀の日本に最も必要なものであろうと確信している。試金石に削りつけても色の付かない既存勢力は去ることになる試金石とはなんだろうか?黒船という外圧は技術的、文化的、政治的、従って政策的に有効な試金石だった。21世紀の黒船は、価値観の違いを名目(絶対悪の刷り込み)とした、成長資源(ヒト、金、モノ、情報、時間)の強奪、時には国家簒奪攻撃だ。19世紀は土地を強奪し、20世紀は石油を強奪し、21世紀は国家をまるごと簒奪する。過去200年間より巧妙に見えにくくなった黒船に警戒しなければならない。波風を恐れずこれを試金石として敢えて暴き、日本の為政者の価値観を擦りつけて見るならば、専守防衛とか全方位外交とか終身雇用とか国民皆福祉とかは、石墨のようにみじめで試金石に何も残さない。日本人は新たな強奪社会の始まりに目覚めなければならない。目覚めることで既存の仕組みを離れた人々が集まり、試金石に向けて脳履歴をぶつけあう社会的沸騰が必要なのだ。イノベーションは単に技術の問題ではないことがまだまだ政府はわかっていないし、たとえ気づいても無視せざる得ない。


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