公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

ダーク・ミニスター「暗黒公使」 夢野久作 杉山茂丸

2023-04-04 06:57:00 | カウンター・グレートリセット
夢野久作といえば、杉山茂丸の長男にして奇譚小説家
杉山の戦略は沿海州にヒンターランド、国防空地を持つことだった。


 
ところで目下米国で最有力な秘密団体は、K・K・KとJ・I・Cとこの二つしかありませぬが、その二つの中でもK・K・Kの方は現在のところウィルソン大統領の懐刀と呼ばれております例のハウス大佐の怪手腕によって、極力圧迫を加えられておりますので、真に国際的の活躍をしておりますのはJ・I・Cだけだと思われるのですが……。 ……ところでこのJ・I・Cと申しますのは、まだその活躍ぶりを表面にあらわしておりませぬようで、国際的には余り有名でないのですが、ちょうど二年前の大正七年の十月頃に、私は或る機会からこのJ・I・C一味の日本内地に於ける活躍ぶりを発見しまして、その根を絶ってしまったことがあります。それ以来、私が道楽半分に研究したところに依りますと、このJ・I・C秘密結社と申しますのは実は、紐育ウオール街の金権者団体を背景とする新タマニー・ホール一派の手先でありまして、内密にハウス大佐の指揮に属し、国際的の平和攪乱を請負業と致しております、一種の無頼漢の団体に相違ないのでありますが、今度は又、東洋方面に何等の重要な使命を帯びて、捲土重来したものと考え得べき理由があります。。 ……現に西比利亜の東部に隠然たる勢力を張っておりますセミヨノフ、ホルワット両将軍は、沿海州に於ける日本の利権を米国に引渡す黙契の下に、軍資金と武器の密輸入をしている……一方は満洲に於て日本政府の援助の下に勢威を張っている張作霖が、このごろ急に排日傾向を帯びて来ました裏面には、満洲に潜入しているJ・I・Cの活躍が与って力ある事を、意外にもペトログラドに於けるケレンスキー一派の諸新聞が、一斉にスッパ抜いているという風評を承わった位ですが……これは寧ろ外務省の機密局か、もしくは、特高課あたりの仕事かも知れませぬが……私は是非ともこの曲馬団の真相を探って見たいと思うのですが……彼奴等の態度があんまり人を喰っているようですから……」 功名手柄に逸っている新任総監は、こうした私の長広舌を、非常な熱心をもって傾聴した。永年外国に居て、西洋の事情に精通している君でなければ、とてもそんなところに着眼は出来まいとまで激賞した。……のみならず、丸の内の宮城に近い処に、このような天幕張り式の見世物の興行を許可するという事は将来に悪い慣例を残す事になるし、第一〇〇の尊厳を涜すものである。一つその曲馬団の正体を根こそげたたき上げて、外務省の鼻を明かしてやり給え……という個人的な意見までも添えて賛成したのであった。 ところがその結果はどうであろう。願書が出てから二週間も経たぬうちに高星総監はこの興行を無条件で許可したのみならず、態々私を呼び付けて、今後あの曲馬団に対して探索の歩を進める事を厳禁すると命令したのであった。
これは小説だが、ここにもハウス大佐が出てくる。昭和初期(昭和8年以前の)日本人にとってハウス大佐は一部の外交官、牧野伸顕や吉田茂などパリ条約交渉(第1次世界大戦の講和を議した大正8年(1919年)のパリ講和会議)参加者以外には知られていない人物である。ハウス大佐は昭和13年に亡くなっているが、その4年前昭和9年に吉田茂が娘和子(後の麻生和子)とともに訪ねている。その訪問の目的はなんだったのだろうか?戦後吉田茂が復権できたのも偶然ではない。
 
追補2023/03/19 林千勝氏が以下のように吉田茂の訪問を整理している(彼も気づいたのでしょうが、「回想十年」から昭和7年の訪問となっている。何かを吉田が誤魔化すために年代を移動しているか、二回行ったかどちらかだ。二回行ったということは多分ないだろうから麻生和子の記録が正しいと思う。)

 

パリ講和会議は遠い昔のことだ。仲介したのはグルー大使あるいは牧野だろう。もしかしたら吉田は夢野久作のこの作品を読んでいたかもしれない。夢野久作の国際陰謀構想、これは杉山茂丸の影響と見るべきだろう。沿海州との取引はヒンターラントを大陸に設ける杉山茂丸の謀略であった。

夢野久作はこの時点で国際的陰謀の伏在に気付いていた。百田尚樹にもみられるが、小説家の推理力は時に情報機関を突き抜けている。


https://t.me/c/2021580450/12


 

この引用は青空文庫 底本初出:「新作探偵小説全集 全九巻」1933(昭和8)年1月15日表題は底本では、ダーク・ミニスター「暗黒公使」。入力:柴田卓治校正:かとうかおり

 
実は昨日の安倍総理との会食の席でも、私は「韓国は土壇場で、GSOMIA破棄をやめる」と予言しました😅
yamaptoka
令和元年とともに平成の31年間も振り返る必要がある。百田尚樹と同じ世代は昭和半分平成半分くらいで出来ている。

平成はすべて無駄であった。世の中にはやったほうがいいこととやらなければいけないことの選択がある。頭の良さそうなやった方がいいことは全部やらなくていいことだ。


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