「少し 、大きすぎはしないかな ? 」九鬼善司はちょっと首をひねったが 、そんな異議を聞きいれる彼ではない 。 「青年よ大志を抱け ― ―とクラ ーク博士も言っている 。国家は敗戦では滅びない 。ただ国民が魂を打ち砕かれたとき滅びる ― ―とビスマ ークも言っている 。今度の戦争で負けたのは 、東条はじめ 、過去の指導者たちの責任だ 。われわれ青年が 、これぐらいの志を持つのはとうぜんきわまることだ 」 「賛成 ! 」
1960年の作品子供の時に親父の本でこっそり読んだ。
『白昼の死角』今はアマゾンプライムで読める。盛んに東京裁判の逸話が出てくる。法か力かとなると、結局力が勝ることになり不法な法定の判決も金科玉条で通用する。なにが悪事でなにが善意かわからない時代と現在とを比較しても、詐欺の立証は学理に合致している事業ほどその立証が難しいことには変わりがない。
法は力、正義の仮面はつけていても、決して正義ではないのです。私のこの十年の生涯は、力に対する力の闘争でした。そして鶴岡七郎という人間は、その勝利に満足して死んでいったのです。 それはもちろん、私個人の死を意味するものではありません。死んでそして生き返る――。金森光蔵氏の教訓に従って、私はまったくの別人としてふたたび別の人生へ第一歩をふみ出してきたのです。 おそらく、私が日本の地をふむことは二度とないでしょう。先生とも、もう永久にお目にかかる機会はないと存じますが、ご健康に十分ご留意のうえ、ますますご活躍あらんことを、せつにお祈りしてやみません。 昭和三十四年三月一日 神を恐れざる男 鶴岡七郎」
鶴岡七郎がその後別人として米国でどうなったか消息はない。それが本当かどうかもわからない。
1979年4月7日公開の映画になっていたとは知らなかった。配役は