あしたこそと思いながら達成を見ない日々の辛さは孤独を深める。
あすは、明日は、
トゥルゲニエフ Ivan Tourguenieff
上田敏訳
いかに、わが世の、あだなるや、空なるや、うつろなるや。げに、人間のあとかたの覺束おぼつかなくて、數少なき。徒らなるは月日なり。
しかも萬人は生を惜む。いたく、性命を尊みて、これより、我より、當來より、なに物か、えまほしく、求めてやまず……噫あゝ、人は、當來に、豐なる賚(たま)ものを望む。
さはれ、なじかは、思はざる、當來また過去に似たらむを。
げに、思はざるなり。考ふるを好まざるなり。此事眞に善し。
『さて、あすは、明日は!』人みな、この『あすは』をもて、自ら慰め、終におくつきの道に降らむ。
而して、ひとたび、墳塋(おくつき)のうちに入らば、人の思はおのづから已やまむ。
こんな素晴らしい詩があるとは知らなかった。
『さはれ、なじかは、思はざる、當來また過去に似たらむを。げに、思はざるなり。考ふるを好まざるなり。此事眞に善し。』
全くその通りだ。
若くして亡くなった上田敏の詩訳は格調がある。
「山のあなた➖穴穴」で有名にした落語家三遊亭歌奴のー授業中ーのおかげで、その名は僅かに知るのみ。
山のあなた Über den Bergen
カール・ブッセ Carl Hermann Busse
上田敏訳
『海潮音』所収「山のあなた」より
山のあなたの 空遠く
「幸」住むと 人のいふ
噫われひとと 尋めゆきて
涙さしぐみ かへりきぬ
山のあなたに なほ遠く
「幸」住むと 人のいふ
Über den Bergen,
weit zu wandern,
sagen die Leute,
wohnt das Glück.
Ach, und ich ging,
im Schwarme der andern,
kam mit verweinten Augen zurück.
Über den Bergen,
weit, weit drüben,
sagen die Leute
wohnt das Glück.
あすは、明日は、
トゥルゲニエフ Ivan Tourguenieff
上田敏訳
いかに、わが世の、あだなるや、空なるや、うつろなるや。げに、人間のあとかたの覺束おぼつかなくて、數少なき。徒らなるは月日なり。
しかも萬人は生を惜む。いたく、性命を尊みて、これより、我より、當來より、なに物か、えまほしく、求めてやまず……噫あゝ、人は、當來に、豐なる賚(たま)ものを望む。
さはれ、なじかは、思はざる、當來また過去に似たらむを。
げに、思はざるなり。考ふるを好まざるなり。此事眞に善し。
『さて、あすは、明日は!』人みな、この『あすは』をもて、自ら慰め、終におくつきの道に降らむ。
而して、ひとたび、墳塋(おくつき)のうちに入らば、人の思はおのづから已やまむ。
こんな素晴らしい詩があるとは知らなかった。
『さはれ、なじかは、思はざる、當來また過去に似たらむを。げに、思はざるなり。考ふるを好まざるなり。此事眞に善し。』
全くその通りだ。
若くして亡くなった上田敏の詩訳は格調がある。
「山のあなた➖穴穴」で有名にした落語家三遊亭歌奴のー授業中ーのおかげで、その名は僅かに知るのみ。
山のあなた Über den Bergen
カール・ブッセ Carl Hermann Busse
上田敏訳
『海潮音』所収「山のあなた」より
山のあなたの 空遠く
「幸」住むと 人のいふ
噫われひとと 尋めゆきて
涙さしぐみ かへりきぬ
山のあなたに なほ遠く
「幸」住むと 人のいふ
Über den Bergen,
weit zu wandern,
sagen die Leute,
wohnt das Glück.
Ach, und ich ging,
im Schwarme der andern,
kam mit verweinten Augen zurück.
Über den Bergen,
weit, weit drüben,
sagen die Leute
wohnt das Glück.