公開メモ DXM 1977 ヒストリエ

切り取りダイジェストは再掲。新記事はたまに再開。裏表紙書きは過去記事の余白リサイクル。

冷えますな

2014-01-01 00:00:00 | 健康など
ずいぶんと冷えてきました。

天候が急に悪くなりそうです。皆さんお大事に。

クリスマス前に風邪なんか引きたくないですからね。


不相応なしな(女としての現役感)と不自然なアンチエイジングで武装した女を嫌悪する『女ぎらい』という女たちが結構いるんですね。かといってすなおにおばちゃん(おばはん)にはなれない。『夫婦善哉』に登場する柳吉は二十歳の蝶子のことをおばはんと呼んでいたが、それが女としてうれしそうにしていた時代もあった。






蝶子は柳吉をしっかりしたたのもしい男だと思い、そのようにらしたが、そのため、その仲は彼女の方からのぼせて行ったといわれてもかえす言葉はないはずだと、人々は取沙汰とりざたした。ぐせ浄瑠璃じょうるりのサワリで泣声をうなる、そのときの柳吉の顔を、人々は正当に判断づけていたのだ。夜店の二銭のドテ焼(ぶたの皮身を味噌みそつめたもの)が好きで、ドテ焼さんと渾名あだながついていたくらいだ。
 柳吉はうまい物に掛けると眼がなくて、「うまいもん屋」へしばしば蝶子を連れて行った。彼にいわせると、北にはうまいもんを食わせる店がなく、うまいもんは何といっても南に限るそうで、それも一流の店は駄目や、きたないことを言うようだが銭を捨てるだけの話、本真ほんまにうまいもん食いたかったら、「一ぺんおれの後へいて……」行くと、無論一流の店へははいらず、よくて高津こうづ湯豆腐屋ゆどうふや、下は夜店のドテ焼、粕饅頭かすまんじゅうから、戎橋筋えびすばしすじそごう横「しる市」のどじょうじる皮鯨汁ころじる道頓堀どうとんぼり相合橋東詰あいおいばしひがしづめ出雲屋いずもや」のまむし、日本橋「たこ梅」のたこ、法善寺境内「正弁丹吾亭しょうべんたんごてい」の関東煮かんとだき、千日前常盤座ときわざ横「寿司すし捨」の鉄火巻とたいの皮の酢味噌すみそ、その向い「だるまや」のかやくめしと粕じるなどで、いずれも銭のかからぬいわば下手げてもの料理ばかりであった。芸者を連れて行くべき店の構えでもなかったから、はじめは蝶子もりによってこんな所へと思ったが、「ど、ど、ど、どや、うまいやろが、こ、こ、こ、こんなうまいもんどこイ行ったかて食べられへんぜ」という講釈を聞きながら食うと、なるほどうまかった。
 略
 新世界に二けん、千日前に一軒、道頓堀に中座の向いと、相合橋東詰にそれぞれ一軒ずつある都合五軒の出雲屋の中でまむしのうまいのは相合橋東詰のやつや、ご飯にたっぷりしみこませただしの味が「なんしょ、酒しょが良う利いとおる」のをフーフー口とがらせて食べ、仲良く腹がふくれてから、法善寺の「花月かげつ」へ春団治はるだんじの落語をきに行くと、ゲラゲラ笑い合って、にぎり合ってる手が汗をかいたりした。
 深くなり、柳吉の通い方は散々頻繁ひんぱんになった。遠出もあったりして、やがて柳吉は金に困って来たと、蝶子にも分った。
 父親が中風で寝付くとき忘れずに、銀行の通帳と実印を蒲団ふとんの下にかくしたので、柳吉も手のつけようがなかった。所詮しょせん、自由になる金は知れたもので、得意先の理髪店をけ廻っての集金だけで細かくやりくりしていたから、みるみる不義理がかさんで、あおくなっていた。そんな柳吉のところへ蝶子から男履おとこばきの草履をおくって来た。えた手紙には、大分永いこと来て下さらぬゆえ、しん配しています。一同舌をしたいゆえ……とあった。一度話をしたい(一同舌をしたい)と柳吉だけが判読出来るその手紙が、いつの間にか病人のところへれてしまって、枕元まくらもとへ呼び寄せての度重なる意見もかねがね効目ききめなしとあきらめていた父親も、今度ばかりは、打つ、なぐるの体の自由が利かぬのが残念だとなみだすらうかべて腹を立てた。わざと五つの女の子をひざの上にき寄せて、若い妻は上向いていた。実家へ帰る肚を決めていた事で、わずかにさけび出すのをこらえているようだった。うなだれて柳吉は、蝶子の出しゃ張りと肚の中でつぶやいたが、しかし、蝶子の気持は悪くとれなかった。草履は相当無理をしたらしく、戎橋えびすばし天狗てんぐ」の印がはいっており、鼻緒はなおへびの皮であった。
かまの下の灰まで自分のもんや思たら大間違いやぞ、久離きゅうり切っての勘当……」を申し渡した父親の頑固がんこは死んだ母親もかねがね泣かされて来たくらいゆえ、いったんは家を出なければ収まりがつかなかった。家を出た途端とたんに、ふと東京で集金すべき金がまだ残っていることを思い出した。ざっと勘定して四五百円はあると知って、急に心のくもりが晴れた。すぐ行きつけの茶屋へあがって、蝶子を呼び、物は相談やが駈落かけおちせえへんか。
 あくる日、柳吉が梅田の駅で待っていると、蝶子はカンカン日の当っている駅前の広場を大股おおまたで横切って来た。かみをめがねに結っていたので、変に生々しい感じがして、柳吉はふいといやな気がした。すぐ東京行きの汽車に乗った。

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本の今 (Oka)
2011-02-12 19:35:25
経営不振に陥っている米書店チェーン2位のボーダーズ・グループが、週明けにも連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請する見通しであることが明らかになった。11日、複数の米メディアが伝えた。同社は電子書籍の普及やインターネット専業書店に押されて販売が低迷し、資金繰りが悪化していた。
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