欧米の価値体系は日本とは大いに違う。それが歴史経路を通じて出来上がってきている。その上に憲法理念がある。日本国憲法もその例外ではない。たまたま戦争に負けたぐらいでは実感はない。歴史経路の違う社会は法を取り入れても法の基礎となっている文化まで混じり合うことはできない。遺伝子の違いが交配を禁じているようなものだ。便宜的に明治憲法と呼ばれるものに本来入るべき統シラすという言葉だけでは混ざり合えない平和な社会を望む歴史の厚みが日本にあります。
400年間、18世紀まで有効とみなされた神聖ローマ帝国のカール四世金印勅書を見ると驚く。
平和に関する条項は 諸侯間の同盟は禁止する。私闘は禁止する。 これだけ。
いくら封建制とは言っても民の生活を髪の毛一本も配慮していない。自分に有利な契約である。
主な規定
- 選帝侯はマインツ大司教、トリーア大司教、ケルン大司教の3聖職諸侯、ライン宮中伯(プファルツ選帝侯)、ザクセン公、ブランデンブルク辺境伯、ボヘミア王の4世俗諸侯の計7侯に定める。
- 選挙はフランクフルト市で行い、戴冠式はアーヘン市で行う。
- 選挙結果は単純過半数にて決定される。選挙結果に従わない選帝侯は選帝侯位そのものを失う。
- 選挙結果は教皇の承認を必要としない。
- 選帝侯は諸侯の最上位を占め、領内における完全な裁判権、鉱山採掘権、関税徴収権、貨幣鋳造権、ユダヤ人保護権を有する。これらは先に述べたレーエンの最たる部分である。
- 選帝侯領は分割を禁止し、長子単独相続とする。
- 選帝侯は、「呼び出されることなき権と召喚せられることなき権」を有する。選帝侯への反乱は大逆罪として処罰される。
- 皇帝が空位の場合には、プファルツ選帝侯がシュヴァーベン地方とフランケン法の及ぶ地域を統治する。
- 諸侯間の同盟は禁止する。
- 私闘は禁止する。
- 選帝侯をはじめとする諸侯の領邦主権の法的確定をする。
倉山 満
ウェストファリア体制 天才グロティウスに学ぶ「人殺し」と平和の法 (PHP新書)