中村特定教授のグループは、HTS-ISMを対象にして、上記課題に取り組んできました。HTS-ISMは、世界的に最も汎用されているかご形誘導モータ6と同様の構造を有しており、他の超伝導モータよりも単純な構造でかつ低コストで実現できます。図1には、かご形と呼ばれる回転子巻線の概略図を示します。この巻線に、図2に示すような高温超伝導体/常伝導体を並列化したハイブリッド構造(以下、ハイブリッドかご形巻線)を考案しています。ハイブリッドかご形巻線に流れる電流は、図2(b)に示すように、高温超伝導体を流れる電流ISと常伝導体を流れる電流INの和になり、これら電流は各々導体の電気抵抗の逆数に比例します。従って、高温超伝導体が超伝導状態のときには電気抵抗が0であることから、ある限界値までは損失の無いISのみが流れます。一方で、もし上記ハイブリッドかご形巻線の温度が上昇して超伝導状態で無くなった場合には、高温超伝導体にも有限の抵抗が発生し、かつその抵抗値は常伝導体の値よりも大きくなります。即ち、高温超伝導体が超伝導状態を維持できなくなると、殆どの電流が常伝導体を流れることになります(IN>> IS)。超伝導状態に無い高温超伝導体にある程度以上の電流が流れてしまうと焼損してしまうのですが、ハイブリッドかご形巻線とすれば、常伝導体に殆どの電流が流れて焼損のリスクを回避出来ます。よって、上記ハイブリッド巻線を最適に設計することによって、高温超伝導体が抵抗0の超伝導状態では同導体に超低損失で高密度電流を流せ、超伝導状態で無くなれば常伝導体にほとんどの電流が流れて高温超伝体が焼損することなく運転を続けられます。
図3(a)には、JST-ALCAプロジェクトとしてイムラ・ジャパン(株)と共に開発した50 kW級HTS-ISMの外観写真を示します。この回転機によって、図3(b)に示すように室温においても5.5 kWの出力運転(時間:61.5秒~67.5秒)に成功しました。また、この時の入力電流は15.6 Aであり、ハイブリッド巻線には460 A程度の電流が流れていると考えられますが、焼損等のトラブルなく運転出来ました。さらに、図4(a)には三菱重工業(株)と開発した6kW級機の外観写真を、同図(b)には室温運転結果を示します。本機においても、室温において出力1.5 kW強(時間:399秒~426秒)の連続運転に成功しました。
この逆もありうるのではなかろうか
共同研究グループは、走査型トンネル顕微鏡/分光法(STM/STS)[4]を
用いて、空間反転対称性のある希土類合金 GdRu2Si2 (Gd:ガドリニウム、Ru:ル
テニウム、Si:ケイ素)において、局在電子[5]が生み出す磁気渦構造が伝導電子
に影響を与えていることを明らかにしました。 これは、 空間反転対称のある物質
における磁気渦構造の実現に伝導電子が寄与していることに、初めて実験的な
知見を与えるものです。
本研究は、オンライン科学雑誌『Nature Communications 』 (11 月 23 日付:日
本時間 11 月 23 日)に掲載さ