いつも行ってるパン屋さん
馬鈴薯の花
亀井勝一郎
北海道の花といえば、誰でもまず鈴蘭を思い出すだろう。私の小学生中学生時代には、湯ノ川のトラピスト女子修道院の、はるか前方の丘はすべて鈴蘭畑であった。自由にそこへ行って、好きなだけ摘んでこれたが、いまはどうなっているか知らない。消滅してしまったのではなかろうか。
しかし鈴蘭よりもっと私の好きな花は馬鈴薯の花である。函館の東部、湯ノ川から二十町ほど歩いてゆくと、そこにトラピスト女子修道院があるが、この付近はすべて馬鈴薯畑か、とうもろこしの畑である。北海道の馬鈴薯は有名だが、あの花を注意する人は少いようだ。薯の方だけ注意しているが、六月頃から、そろそろ可憐な花が咲きはじめる。白と紫がかったのと二種類あるが、決してはでな花ではない。厚ぼったい花びらで、それがやや外側をむいて、小さく、つつましく咲いているだけだ。平凡と言えば、こんな平凡な花はあるまい。しかし、よく見ていると、実に清楚だ。ういういしい百姓の娘の、耳朶みみたぶのような花だ。
ここも事務所に移ってきて8年になるのか
ティナ・ターナーも亡くなったか。83歳。
何を信じていても永遠には生きれない。