第55回芥川賞受賞作の村田沙耶香さんの「コンビニ人間」を読みました。主人公の古倉恵子は幼いころから変わっていた。公園に落ちていた小鳥の死骸を手にとり、焼き鳥が好きな父親に食べさせようと母親に持っていった。小学生時代には級友の男子の取っ組み合いの喧嘩をやめさせるために、傍らにあったスコップで頭を殴ってやめさせた。ヒステリーを起こし出席簿で教卓をたたいて喚き散らしていた女教師を黙らせるために、スカートとパンツを引きずりおろしたこともあった。その都度、母親が学校に呼び出され家族は悩んだ。本人はなぜそうしたことが悪いのかが分からない。そんな恵子を心配し、家族はカウンセリングに連れて行ったが解決策は見つからなかった。大きくなるにつれ、彼女は必要なこと以外、話さないようになった。しかし、大学1年の時にコンビニでアルバイトを始めたことが、大きく彼女を変えた。恵子にとってコンビニのマニュアルやルールは大切だった。以来18年間同じ店でアルバイト店員として働きづつけ、周りから頼りにされるアルバイト店員になった。彼女の生活はコンビニで元気に働くためにあった。コンビニで働いているときだけは彼女は世界の一部になった。彼女は「普通」の人に思われるように、バイト仲間を見て、年相応の人の話し方をまね、服装も参考にした。バイト仲間と話を合わせ、細心の注意を払って表情も作った。普通に話すようになった恵子は友人もできたが、彼女には怒りの感情はなく、恋愛、結婚にも全く興味がなかった。しかし、世間一般の生き方とずれていると思うと、人は彼女の生き方に遠慮なく質問をぶつけてくるのだった。ある日、いい年をして定職につかず、家賃を滞納して行き場を失った元バイト仲間の白羽を、彼に対して特別な感情はなかったものの、家に居候させることになった恵子は・・・。恵子みたいな人いるのかなぁって思いながら、とても面白く読みました。世間で多い生き方をしている人が「普通」とみなされるわけで、それから外れると生きにくい社会でしょうね。「コンビニ人間」お薦めです。私はこの「コンビニ人間」を文藝春秋9月号で読みました。コンビニで買いました。(*^_^*) 実際に作者の村田沙耶香さんも週に3日、コンビニでアルバイトをしているそうです。そのせいかコンビニ内部の細部描写が素晴らしく新鮮でした。
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