トドの小部屋

写真付き日記帳です。旅行記、本や美術展の紹介、俳句など好きなことをつれづれに。お気軽にどうぞ。

場所

2021-12-25 09:19:31 | 
瀬戸内寂聴さんが2021年11月に99歳で亡くなられました。寂聴さんの源氏物語口語訳を読み通して以来、寂聴さんの本から遠ざかっていましたが、故人を偲び、図書館で借りた1冊がこの「場所」です。予備知識もまったくなく借りた本でしたが、まさに彼女の起伏にとんだ激しい女の一生をたどる旅路になりました。この本を執筆した当時、寂聴さんは77歳だったのですが、若いころから住んだ思い出の場所をたどりながら、当時の状況を語るという形式で、まざまざと出家までの彼女の道程をたどることができました。出家後の軽妙で温かな説法を聴く限り、想像できないような激しく苦しい日々があったことを知りました。51歳ですべての愛欲の絆をたち、出家した寂聴さん。彼女の出家をとめなかった最後の男とのやりとり。「出家とは、生きながら死ぬことよ。」と別れに際し、言ったという寂聴さん。黒染めの衣を着て、「彼らのいる場所へ、いつになったら私はたどり着けるのだろうと風に訊いていた。」とありましたが、「22年後でしたね」と言ってあげたくなりました。偉大な女性でした。
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