荒船海岸の朝

　しばらく前のこと、随分と久しぶりに朝の荒船海岸を散策してきた．今年の３月ここで、民間企業のロケットの打ち上げが行われた．２日間とは言え、世間から注目を集めた場所だ．わたしもご多分に漏れず、ロケットの打ち上げをインターネットの中継でドキドキしながら見ていた．



　ロケットの打ち上げは残念なリザルトだった．とは言え、パソコンの画面に映し出された紀伊半島の樹木と海、水平線付近を航海する船の姿は、わたしが今まで見てきた荒船海岸そのもので、嬉しくもあり口惜しい気がした．



　あれから数カ月、荒船海岸の朝は波穏やかで、少し不気味に感じるほど辺りは静寂に包まれていた．そして、いつもと同じようにコンクリートで固められてしまった素掘りトンネルを通過し、車道の終点を目指す．



　車道の終点にオートバイを停めて辺りを散策していると、朝陽が眩しくて少し暑い位だった．この車道の終点からロケットの基地へ続く道が、山の方へ続いている．もちろん通行はできないが、基地があると思えない位に静かだし、自然には一切、手が加えられていない．



　グーグルマップで確認すると、海から随分と離れた国道の近くに事務所が建てられていて、そこからロケット基地までの車道が完成していた．基地関係で、この荒船海岸の道が、メインで使われることはなさそうな感じだ．



　次のロケットの打ち上げは、いつになるのだろう．その時、自分はまだ関西にいるのだろうか．そんなことを考えながら荒船海岸を後にした．