オートバイで旅して観たモノの記録

 Ôtobai de tabi site mita mono no kiroku.

尾鷲港の朝

2022年10月23日 | 尾鷲


 星空が広がるほど暗いうちから尾鷲港に待機し,もう1時間くらい経っただろうか.ようやく明るくなり,佐波留島の上空付近がきれいに焼けてきた.日の出までもうあと少しだ.太陽はどこから昇ってくるのだろう.



 すると急に佐波留島の中央部分,少しへこんだところの空が強烈に光りだす.太陽はもしかすると佐波留島の下から昇ってくるのかもしれない.波止場にいる釣り人たちは特等席で日の出を見ることができるので,少しうらやましい気持ちがした.



 ところが,気が付けば水平線付近にはいつの間にか,分厚い雲が広がっていた.残念ながら,太陽はこの雲の中を昇っているようだった.ということで,佐波留島の下から昇ってくる太陽の姿は見ることができなかった.



 それでも上空付近は雲がなく晴れ渡っている.しばらくすると,ようやく太陽が雲を突き抜けて姿を現してくれた.太陽の位置は佐波留島の真上ではなく,すこし右側に外れたところのようだった.



 太陽は徐々に高度を上げていき,辺りに強烈な朝日を降りそそぐ.海に朝日が反射して,オレンジ色に染まった真っすぐな線が自分の方に向かってやってくる.尾鷲港に朝がやってきた瞬間だった.



 太陽の下,尾鷲港の波止場はオレンジ一色に染まっていた.このような幻想的な光景が待っているとは思いもしなかった.日の出を見ることができなかったので,少しテンションが下がっていたけれど,この光景を見ることで気持ちが高揚してきた.



 ただの朝の風景だけど,言葉にならないほどに美しかった.気が付けば,この素晴らしい風景を切り取ろうと,夢中になってシャッターを切っている自分がいた.あらゆる雑念から解放されて,ひさしぶりに無心になっていられたと思う.



 気が付けば時刻は7時前で,ちょうど尾鷲港に降り立ってから2時間ほどが経過していた.朝のドラスティックな景色に見とれていたので,この2時間はとても短いように感じた.そして,最高の2時間だった.



 太陽ははるか上空まで昇り,今度は真っ白な光を降りそそぐ.幻想的なオレンジ一色の光景は儚く,あっという間の出来事だった.

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