この平和な日本で、私はこの春、ささやかな”悲しみに明け暮れる”という日々を3日間すごした。4月29日、愛犬”ちょこ”が、庭先からいなくなった。3年前、末娘あんずと、自動車にひかれそうに道の真ん中でちょこちょこしていた”ちょこ”を保護し、近所に聞き、警察に連れていった。”今日中に保健所だよ”と言われ、私の愛犬になった。それから2年間、毎日24時間一緒に過ごした。昨年は、夜行バスに乗り広島まで12時間、ひと声も出さずに行ってきた。大阪も東京も行った。レストランでも気づかれなかった。”ちょこバッグ”をいくつも作った。ちょこは後ろ足を片方げがしていて、3本足でちょこちょこしていた。ちょこの名前の所以だ。そのちょこがいなくなり、エステに来た会員さんと29日夕方まで近所を探して歩いた。30日も1日もちょこを探すこと以外、仕事にも身が入らなかった。4日目にちょこは、やさしい天使のような御兄さんに、自転車のかごに入れられて帰ってきた。1匹の犬にさえ失って初めて、命の重さに気づく。群馬県だけで年間8千匹の猫や犬が、人間の勝手で処分されているという事実を今回初めて知った。
坂口せつ子
2004年平成16年5月13日木曜日
高崎市民新聞連載より転載
坂口せつ子
2004年平成16年5月13日木曜日
高崎市民新聞連載より転載