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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

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「まさかの--」副詞用法化の兆し

2022-02-08 | 文解析は副詞が鍵

最近ニュースを読んでいたら以下のタイトルが飛び込んできました↓
ソフトバンク移籍の又吉、まさかの在来線で球場入り … 有名な、「まさかの」文ですね。
でもこれはいいんです。「まさかの」は連体詞、あるいは格助詞「の」を伴い連体修飾語になるもの、なので特に違和感はありません。
要は"体言"で締める修飾用法の枠内に収まっているのですからこの場合「まさかの在来線」というフォーカスは体言である在来線にかかっているわけであります。

でも次の例ではどうでしょう?

・まさかの義勇さん自引きできた
・まさかのプーさんとテディベア隣同士でした
…ちょっと違和感ありませんか?
まさかののかかるターゲットというものが、「義勇さん自引き」というイディオムのひとかたまりにかかっていて、どことなく「まさかの義勇さん(連体接続)」ではなく「まさかの自引き(連用接続)」のほうに重きを置いているように感じませんか?
「プーさんとテディベア」の並列体言というのはどうでしょう、この場合も「隣同士」という位相の強調という側面が強くて、並列2要素は単に叙述の素材としてのプレゼンスしか持たない構造のように感じられます。

そして以下の例を見ますと完全に連用修飾=副詞と同等のはたらきをしているかのように見受けられもはや連体修飾の片鱗は失われているように思えます。

・仕事がまさかの終わらなくて(否定)
・まさかの録画できてなくて(未遂)
・手塚治虫先生まさかのピアノも弾けるんですね(可能)
・まさかの振り付け覚えて下さりありがたいです(尊敬)
・浮気現場に居合わせたギャルはまさかの昼間配達に来ていたらしくて(タイミング一致/伝聞)
・まさかの息子が知り合いの業者さんに頼んで設置完了(委任)

…見てみてください、この結果。
ほかにもいろいろありそうですが全体的に否定未遂可能尊敬等々、ニュアンスづけのきいた叙述で結んだ方が文の収まりがよく頻用される傾向があるかと思います。
もちろん「まさかの順当」「まさかの平然」みたいに無理やり意外性を排除した動詞を使ってこじつけることもできなくはないのですが、ニュアンスづけのない、一物仕立ての動詞をつかってあらわそうとするときには
「まさかの移籍」「まさかのご指名」みたいに大抵は意外性を想起させやすい動詞とセットになることが多いです。

また、連体修飾は体言を修飾するものという固定観念のようなものがありますが、
「まさかの嫉妬」「まさかの迂闊」「まさかの才能開花」「まさかの未勝利」
のように動作性の名詞などは名目こそ体言の扱いでありますが機能素性はむしろ叙述を担っており、漢語の悪癖として品詞境界の輪郭をぼやかしたままワンパッケージで配置されると名詞然とした存在感をもってしまう(カセット効果とは別の話)
そういう、「漢語のご都合主義(日本的受容のされ方において)」みたいなものがやがて一般のイディオムにも何か「許容感」みたいなものを生み出す素地となって、巡り巡って破格の用法を獲得した背景になっているのではないでしょうか。

あとは「鍋の写真上手く撮れる人は金持ち説」「国連のほうから来ました詐欺」みたいに、単に接尾語が単純語に接続する用法をさらに拡張して句や文にかかるスタイル(文の包摂)とちょうど逆のパターン、
接頭辞+句や節 みたいにダイナミックに拡張された用法(この場合は正確には接頭辞ではなく予告詞みたいなものですが)ととらえることも面白そうです。(文の導入辞)
さらには間投詞であるとか談話標識であるとか「あのー」「うわっ」みたいな発声的なものから少し拡張して、意外性フレーズの導入標識として挿入的に挟む、ちょっとした含意性の具体語彙輪郭を持つ談話機能とでも言った方が良いものという見方もあるかもしれません。

いずれにしましてもtwitterで近年のツイートを掘ってみたところすでに6-7年くらい前からちらほら指摘されているようで、こういった事例(まさかの)はまだアカデミック的に分析してある論文というのをまだ知りませんので今後の動向に注目していきたいかと思います。

以上、まさかのオンパレードすぎるミニ考察&事例収集でした。

 


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