久々に遠出して秋葉原のミニシアター・秋葉原UDXシアターにて35㎜フィルム上映 「ちびまる子ちゃん わたしの好きな歌」を観に行きました。
このブログでは個々の映画に関していちいちレビュー記事を書くということは特にしていなかったのですが
今回の映画は特別、劇中で使用される音楽の権利関係のためDVD化されていないということで、不定期で行われるBS・CSテレビ放送かミニシアターなどでリバイバル上映されるときでもない限り私たちには見る手段がない、ということが重要なポイント(もちろん動画配信など望むべくもありません)。
なのでこれは書く価値があるだろうということで特別に感想記事をしたためることにしました。
大して映画通というほどではありませんが私の映画遍歴の自慢は内田けんじ監督作品「運命じゃない人」を2005年渋谷で、丸尾末広による漫画「少女椿」(実写じゃないほう)のアニメ映画を2004年に新宿ミラノ座でリアル視聴したのがOh!若き日の思い出であります。
拙ブログの過去記事
第2弾:ASMRもいいけどスラムダンクもね - P突堤2
の映画雑記事でもレア映画として紹介しておりかねてから機会があったら是非観てみたいというのがあり今回その念願が叶いました。
ありがとうさくらももこさん!ありがとうドリパス!
…というわけで大まかなストーリーを紹介すると
音楽の授業で「めんこい仔馬」という歌を習って大のお気に入りのまる子。
そして学校の図工の課題で「わたしの好きな歌」を題材に絵を描いてみましょうとの投げかけに
「そうだね、お気に入りのめんこい仔馬をテーマにしてみよう」ということになりました。
ちょうどその頃おつかいの途中静岡駅で似顔絵描きのお姉さんと出会い、徐々に交流を深めっていったまる子は
図工の授業で描く絵のアドバイスをもらいながら「めんこい仔馬」の歌の本当の意味を知ってショックを受けます。
「めんこい仔馬」は5番まであり、仔馬はやがて軍馬になってお別れを惜しむという結末だったのです。
そんなこんなで、お姉さんとその彼氏、そしてまる子&友蔵のダブルデート(?)で水族館へ遊びに行くなど楽しい日々が続きます。
しかしある時遠い北海道に実家があるその彼氏のプロポーズを受けて、郷里へ来てくれ、と揺れ動くお姉さん。
そんな様子を見かねたまる子は
「絵は北海道でも描ける。でもお兄さんは一人しかいないんだよ。追いかけて!」
まる子はそれが別れと知りつつも慕っているお姉さんのために背中を押してあげます。
そして訪れた結婚式の日。まる子は授業中ですが気が気ではありません。
ついにお腹が痛いと先生に嘘をついて授業を抜け出して式場へ向かうまる子の見たものは…。
…というお話になっています。
まず劇場で観たスケール感というものが圧巻で通常の2倍以上のセル画6万枚を使った労作だけあって、ピクチャーが、モーションが、静岡駅の風景がぬるぬる動く!お魚もモブも良く動きます。
また各場面で音楽PVのように繰り広げられるサイケな映像も音楽の魅力を余すところなく引き出しています。
いつもののほほんとしたまる子ワールドから中毒性の高いMV映像へと自然に移り変わるそのトリップ感は、選曲といいビジュアルといいさくらももこワールドの名を冠するにふさわしい独特の世界観を成立させています。
劇中で使われた音楽パートを以下に列記します↓
『めんこい仔馬』/作詞はサトウハチロー、作曲は仁木他喜雄
『1969年のドラッグ・レース』/作詞:松本隆、作曲:大瀧詠一、編曲:CHELSEA、(アニメーション演出:湯浅政明)
『ダンドゥット・レゲエ』/作詞:Seribayu、作曲:S.Aten、歌:Campur DKI、(アニメーション演出:船越英之)
『ヒロシの入浴』/作曲・編曲:近藤達郎、(アニメーション演出:芝山努)
『はらいそ』/作詞・作曲・編曲・歌:細野晴臣(アニメーション演出:芝山努)
『買い物ブギ』/作詞:村雨まさを、作曲・編曲:服部良一、歌:笠置シヅ子、(アニメーション演出:湯浅政明)
『星を食べる』/作詞:滝本晃司、作曲・編曲・歌:たま、(アニメーション演出:小林常夫、作画:重国勇二)
『B級ダンシング』/作詞:さくらももこ、作曲:杉真理、編曲:戸田誠司、(アニメーション演出:小林常夫、作画:船越英之)
…などなどインドネシア風あり、ビートルズ風あり、日本のハイセンスPOPS職人の曲と謎のエキゾチック⇔アーバンちゃんぷるが漫画の作者自身の音楽センスの振幅を感じられてとてもいい感じです。
特にアニメーション・パート、湯浅政明氏は『マインド・ゲーム』、『映像研には手を出すな!』で存じ上げてはいたのですがちびまる子ちゃんの頃から異能の片鱗を見せていたとは私もなかなか不勉強でした。
でもそれくらいぶっ飛びな「買い物ブギ」は唯一無二の映像体験です。
劇中のクライマックスはもちろんお姉さんの結婚式。
千住明さんと川原伸司さんの劇伴音楽も泣かせるんですが、
特に「めんこい仔馬」の5番の歌詞
明日は市場か お別れか 泣いちゃいけない 泣かないぞ
軍馬になって 征(い)く日には オーラ
みんなで バンザイしてやるぞハイド ハイドウ してやるぞ
がオーバーラップして白無垢姿のお姉さんにむけて万歳万歳するまる子が健気で
(ことあるごとに万歳ぐせのあるいつものテレビシリーズのノリともギャップがあるのが新鮮)
なんだか今のジェンダー感からいうと結婚のために夢を犠牲にするというそしりもないわけではないですが
結婚しても頑張っている…その後うれしい知らせが届いてまる子にとってもお姉さんにとってもキチンと救済を示してから終わったので良かった…大団円です。
"うれしい知らせ"についてはぜひ皆様のこの目で確かめていただきたいです。
とにかく会場もほぼ満席に近くてライブ感をこの身に感じながら終劇後のちょっとしたざわめきを聞きながら会場を後にしたのでした。
1992年12月19日に公開…もう30年も昔の映画なんですか。
映画っていいなぁ、音楽っていいなぁ…しみじみさせてもらいました。
もちろん殿堂入りのクオリティです。
今回は以上でした。