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「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

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2対照レビュー:「人が増えても速くならない」とNetflixドキュメンタリー「コーディングの回」

2023-07-11 | 関連書籍・DVDのレビュー

経済産業省によると、2030年にはITエンジニア人材が最大で約79万人も不足するという試算がされており、今後も慢性的なエンジニア不足が予測されています。
あと第一生命の調査によると男子に限っては
中学生・高校生の「将来なりたい職業」の上位---1位:会社員/2位:ITエンジニア・プログラマー/3位:公務員
などと近年でも上位に食い込む注目株なんだそうです。
いやぁ~、ご時世ですねー。Youtubeなんか見てるとIT転職のレバテックのCMとかどんちゃかやってますけどねー。
「人生にまだ見ぬ選択肢を。ITの仕事探しはレバテック。」
…もしかして将来的にはChatGPTが席巻するなんて疑念もどこ吹く風。このCMシリーズは勢いがあってホント快進撃だなーって感じですね。

さてそんな事情も露知らず、能天気にコンセプトだけをはき散らかしているブログ管理人・ぴとてつではありますが
ITニュースサイトとかも特に巡回することもなくネットで流れてきたトピックとかを後追いするくらいなのですが
最近ちょっとピピっときてアンテナに引っかかったIT情報が立て続けにやってきました。

ひとつは書籍で、もうひとつはネット動画です。
今回はダブルキャストでパッケージ形態こそ異なっておりますが、ひさびさの書評/レビューとしゃれこみたいと思います。

画像は↓こちら

人が増えても速くならない

ダブルレビューにしたのは「プログラムとは他の職業とどう違うのか」「コーディングの本質とは?」
といったテーマを専門的にならずにざっくり解説してあるコンテンツの探索意識が頭にチラついていた1~2週間の間に
たまたま同じタイミングで、同じようなトピックが掘り出されて出会ったからです。それならシナジーもあるからダブルレビューにしてみよう、と。
みなさんも一方はアンテナに引っかかったけどもう一つの方は知らなかったなぁ、と新しい発見があるかもしれませんですしね。
ご興味のあるお方は鋭意ご入手していただいてチェックしていってくださると幸いです。

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まずは書籍の方から紹介していきます。タイトルは

人が増えても速くならない ~変化を抱擁せよ~(倉貫義人 著)

です。
これは私が日課としているYahooリアルタイム検索アプリを使ってネット巡りをしているときに、
「抽象化」っていうワードで定点観測していたときに偶然この本に関するツイートが目に入ったからでした。
「プログラムを書く仕事で求められるのは、抽象化能力です」だったかな。
この惹句が手掛かりとなって本書の所在にたどり着いたというわけです。

まずこの書籍の対象とする層はエンジニア未満の初学者など幅広くリーチしてあるかとは思いますが
文の要旨や展開から察するに経営者やマネジメントをする側の人間に
「エンジニアの生態を理解せよ」
というやさしい指南書と言っても良いようなスタイルになっています。
そういう実際の開発現場における発注者や管理者とのコミュニケーションの齟齬、あるあるネタとして
「2倍の予算があっても2倍の生産性にはならない」
という導入から浮き彫りにされる、プログラミングという作業の特殊性、なぜ成果が出ないんだという焦りなどが分析的に描写されています。

エンジニアの仕事の本質はキーボードをカチャカチャすることではなく
「求められている機能を、どういったプログラムで表現するのかを考えること」
「あらゆる状況を考慮するのに時間がかかる」
「プログラムを量で測ることは意味がない、どれだけ書いたのかの量ではなく中身の質こそ大事なのです」

…じつに説得力のある論理展開が、平易な文章で解きほぐすように浸透してくれます。

極めつけは
「経営者としてはむしろプロスポーツのアスリートやアーティストのマネジメントに近い考え方で取り組むほうがいいでしょう」
と、ここまで言い切っています。驚きというより、むしろ歯切れがよくてスッキリしました。

仔細はここまでとしておきますが、一点抜け目なくフォローしてあるなーと思ったのは、マネジメントにおいて個人を活かすという事になると
「属人性の排除」(ノウハウの共有や引継ぎなどがブラックボックス化しないように)
が課題になってくる、という視点が出てくるというポイントです。
この問題については読み進めていくとまっとうな解決策が示されていますので、興味がありましたら是非購入して続きをご覧になってください。

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そして次に動画のほうを紹介していきます。タイトルは

Netflix 世界の"今"をダイジェスト:「コーディング」の回
です。

これも何年か前にYahooリアルタイム検索アプリ経由で知りやたらと評判が良かったのでメモして頭の片隅に置いていたのですが
今回この機会にやっとこメモしておいたやつを久々に引っ張り出して、タイミングよく先月からNetflixに加入したので満を持して視聴に至ったものであります。
Netflixは映画ドラマアニメだけではなくこういった優れたドキュメンタリーもラインナップしているのでさっそく活用してみたという次第です。

余談ですがしつこいようですが「アグレッシブ烈子」は本当に良かったですよ。この作品だけでも入った甲斐があります。
私はたぶん尺の長いドラマのシリーズとかは見る体力がないのでこういった各話完結のドキュメンタリーシリーズで好きなテーマのところだけを一本釣りしていくというのが私の視聴スタイルに合っているようです。
ふたつ前の記事にNetflixおすすめの番組のミニレビューとリストアップがしたためてありますのでご興味のある方はそちらも併せてご覧くださいませ。

さて番組の内容ですが
最初はパンチカードを使った自動織機の時代からアゼンブリ言語、高水準言語への進化、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)への飛躍、
終盤では機械学習でコンピューター自身が抽象化されたルールを自ら作り出す、驚くべきパラダイムシフトへの予兆へと連なる壮大なタイムスケールで
いわば「プログラミング全史的な歴史物語」が展開されていきます。

全体の構成を通して力点になっていると感じたのは
コードを書く人への道徳的な責任能力についての言及が随所に見られるという事。
番組では冒頭から終盤に至るまで

2014年コロラド州での緊急電話システムのダウン
心臓疾患を抱えた妊婦さんのペースメーカーに対する異議、
車の制限速度を法ではなくアーキテクチャ自身が規定している現状

などのようにプログラマーの意思決定プロセスが社会や個人に対して計り知れない影響力をもつことへの自戒・疑問ともいえるエピソードが多く盛り込まれていました。

とりわけ
(重要なセリフ引用)

コードで私たちの選択を制御すれば――
法律よりもずっと徹底した調整作用がある
重大な決定を伴うんだ
プログラマーが決めなくてはいけない

このくだりを目にしたときに話が少し脱線しますが、
「L・レッシグの4つの制限要素」という著名な法学者ローレンス・レッシグの唱えた問題提起のことを思い返しました。
ざっくり説明すると人のふるまいを規制する. 手段として主に 4 つのものがある。――それは「法」「規範」「市場」「アーキテクチャ」の4つだ。
という事で

L.レッシグの4つの制限要素

例えばタバコを吸うことへの規制要素をモデル化すると
・タバコは20歳になってから-法的規制
・タバコはカッコ悪い、健康に悪いなどの啓発-規範による規制
・タバコの値段をあげる-市場(経済)的規制
・タスポがないとタバコが買えない-アーキテクチャ的規制
となっています。また、法の規制はその他の3分野にも間接的に規制を及ぼすので特徴的な位置づけとなっています。
(説明終わり)

これまでの私の認識からすると法律というのが他に比べて卓越して上位で、影響力を行使するものだと思われてきましたが
今般のテーマのコンピューター時代になってくるとコーディングによるアーキテクチャの設計が、むしろ法を上回る影響力を時にもつケースがみられるのではないか
コーディングの設計は社会そのものを設計している…そういっても過言ではないほど電脳基盤がこの世界の基礎となっている。それだけのインパクトがありました。

いやぁ、いい意味で認識を改めさせられましたね。
今回はダブルレビューという事でチグハグになってしまわないかと心配もあったのですが
コードを書く人自身の社会的責任、または技術分野だけでなく社会に対しても広く深い理解を要するということ
この点については「人が増えても速くならない」でも「Netflixドキュメンタリー」でも共通する問題意識があったという事で
ヒューマンな領域ではしっかりリンクしているんだなぁ…なんだか丸く収まったような気がします。

さて
来るべき新時代を見据えて、ITエンジニアを目指す人たちが少しでも増えていったらいいなぁ
ネットの海からの来訪者様の中にいくらかでも示唆を与えることができていればいいなという期待も抱きつつ
このへんで筆を置きます…ではなくてEnterキーを押させていただこうかと思います。では。


 

 




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