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世界中に広がる神話や物語の類型

2023-10-29 | Yahoo!リアルタイム検索アプリで調査

2023年・第77回「読書週間」(10月27日~11月9日)が始まりましたね。
やっぱり秋の夜長は読書の秋!と言いたいところですが
私の読書傾向は恥ずかしながら小説・物語の類いをあまり読まないんですよ。
子供の頃から図鑑だとかブルーバックス文庫だとか集英社の情報・知識imidas(イミダス)とかがどちらかというと好みで全体的に雑学っぽいのが好きでしたね。
もし僕がZ世代に生まれていれば今頃少年期はwikipediaばっかり見ていたんじゃないでしょうか。
ネット環境がなじんだ以後も何かの解説本だとか漢字や日本語に関するウンチク本なんかをもっぱら読むのですがそればかりでは何か情動に欠けるというか
心象風景を耕すことも時には必要なんじゃないかなぁなんて、この年になるとふと我に返ります。

はっ!でも考えてみればウチの家庭では寝る前に読み聞かせをする習慣なんてなかった!
なんでも幼少期の頃に読み聞かせ原体験を通過していると大人になってからも物語に親しむという土壌が育まれるといいますし。
ちょっと、うらやましくなります。隣の芝生は青い、みたいな。
でもまあいいか。兄弟姉妹は多かったからまったく違う分野から吸収できたことも多かったし、
商売の関係上ゴシップ週刊誌とかビッグトゥモローとか鎌田敏夫の『新・里見八犬伝』なんてムフフな知識もひっそりと摂取できたのでそれはそれで良かったのかなーと思うことにします。

ノンフィクションと違って小説・物語のいいところは構成力の醍醐味が味わえるという事じゃないでしょうか。
解説本の構成は論旨や前提の展開の順序、重要なところは掘り下げて、っていう編集上の制約を受けるものでありますが
物語はディティールに緩急をつけることもできますしさして重要でなかったと思えたこともあえて掘り下げず伏線回収につなげるという展開的配置的自由度もあります。
あとは司馬遼太郎の時代小説などで登場人物による地の文での語りではなくて、作者視点、第三者視点による語りが適度に挿入されていて
時代背景や社会制度の描写が読者目線で理解しやすいように構成されていてえらく感心した覚えがあります。
語り手を自然な形でポジションチェンジしていく事も、読者-著者間の意思伝達のキャッチボールですから応酬として成り立てばどんな語り口でも良いのです。
展開を裏切れることもできる分、ストーリーのある小説はある意味読者との駆け引きに似た感覚に通じるものがあると思います。
やはり物語からでしか摂取できない栄養素というものが確かに存在するのでしょうね。

余談ですが読み聞かせと言えば「Amazon Audible」や「audiobook.jp」のように "音声で聴く本"のニーズが高まっています。
しばらく離れていたストーリーものの書籍もながら作業で聴くことができればスキマ時間を効率よく活用できるというものです。
むしろこういった小説・物語のように「音声の語り手」を通じて交わされるいとなみの方がオーディオブックの神髄を見せつけられると言った方が正しいのかもしれません。
すべての物語の原形はテキストではなく口承による伝承であったという事からもわかるように
やはり物語というものは音声に回帰するのが自然な帰結とも言えます。


さて話は変わって最近私はスマホいじりのルーティンに危機感を感じて電車の中では本を読むようになりました。
当記事執筆時ちょうど読み終わった本が
【ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 IV シンデレラはどこに】 松岡圭祐
です。
今回のテーマ、「物語の類型」にちなんでいろいろウンチク・含蓄の多そうな本書を選んで
柄にもありませんがちょっとミーハーなチョイスでカジュアルに読めそうなの無いかなーということで格好の題材を見つけました。

軸になるストーリーは「多くの人が目にするであろう童話・シンデレラの原典を探れ」。
学術的には「シンデレラ譚」とも呼ばれるシンデレラの伝承は世界各地に広がっており(東洋のものもある!)
物語の構造がどれも、
1)継母のいじめによるヒロインの試練
2)援助者の出現(鳥、魚、妖精、かぼちゃの馬車)
3)舞踏会、宴会といった非日常的な舞台
4)花嫁テスト
5)結婚によるハッピーエンド
のプロセスを経ており、無数のバリエーションがあります。

主人公は謎の脅迫者から「シンデレラ」の原典を1週間以内に探せとのメールを送り付けられ、でなければ身近な人物に累が及ぶぞ…と切羽詰まった状況に陥ります。
実際に災難が襲ってきて息つく暇もなく展開し、それと同時進行で
女子中高生を中心に急激にファンを増やした新人作家RENの快進撃。次々とベストセラーを生み出し話題の渦中にあるがこれに絡んで
複数の作家からのパクリ疑惑が持ち上がり、本業よりもそこで推理の才能を買われて相談を持ち掛けられる売れないラノベ作家・杉浦李奈が
東奔西走、獅子奮迅、対立陣営との対峙を繰り広げるビブリオ・ミステリー。
肝心のシンデレラ伝承の究明アプローチとしてたどり着いた手法は「コンピューターによるテキストマイニング解析」を用いて世界各所のテキストのデータを落とし込む事。
…なんていう現代的な題材も採り入れて緊張感のあるストーリーとなっていて読後感もさわやかでおすすめですよ。


と、いうわけで、世界中の神話や物語にプロットの原形となる類型が脈々と受け継がれている…これってロマンがありますよね。
今回のYahooリアルタイム検索アプリの調査は、そんな世界に点在する代表的な説話類型のタイプについて定点観測でつぶやき数をカウントしてみたものです。
とりあえず有名どころや文化的に定番なもの、エンターテイメントからも紐解いてみると典型的な説話類型の影響を受けているのがわかると思います。
調査項目は、こちらです↓

全部で10項目、いわゆる神話学や民俗学などの学術的見地からに加えて「デウス・エクス・マキナ」(機械仕掛けの神という意味の演劇・文芸用語)なども視野に入れてリスト入りさせました。
後述の【物語類型とその作品の例】なども併せてそれらの驚くべきバリエーションの数々を再発見してみてくださるとうれしいです。
気になる調査結果はこちら↓

調査期間:2023年10月14日-10月28日(15日間)

1.貴種流離譚       79
2.見るなのタブー      8
3.変身譚         12
4.異類婚姻譚       213
5.行きて帰りし物語    18
6.来訪神         107
7.末子成功譚       3
8.呪的逃走        1
9.デウス・エクス・マキナ 794
10.動物報恩譚       1


【物語類型とその作品の例】

貴種流離譚:アーサー王伝説、王様戦隊キングオージャー、ドラゴンクエスト
見るなのタブー:パンドラの箱、千と千尋の神隠し
変身譚:山月記、カフカ「変身」
異類婚姻譚:豊玉姫とホオリノミコト(海彦山彦神話)、美女と野獣
行きて帰りし物語:浦島太郎、バック・トゥ・ザ・フューチャー、ホビットの冒険
来訪神:ナマハゲ、サンタクロース、フーテンの寅さん
末子成功譚:三匹のこぶた、なら梨とり
呪的逃走:古事記のイザナギ、アイヌ伝承「パナンペとペナンペ」
デウス・エクス・マキナ:ちいかわの島二郎、水戸黄門
動物報恩譚:鶴の恩返し、ぶんぶく茶釜

(詳しい解説は割愛します)

特筆すべきは「貴種流離譚」。民俗学者の折口信夫によって見出された用語です。
現代でも時流の流れで台頭してきた「異世界モノ」や「悪役令嬢モノ」は貴種流離譚のテンプレを内包しているといわれており
異世界という事は異環境でもあり、元の世界や出自の源流にいたときの立場や能力が失われる局面を作り出すのにもってこいの設定です。
面白いことにカクヨムやアルファポリスなどでも作品検索に「貴種流離譚」などのタグが親切にも備わっておりこんなにも一般化している概念なのかと驚かされました。

また、冒頭の画像の片方のジョセフ・キャンベル(神話学の研究者)氏も、著書・「千の顔をもつ英雄」のなかで「ヒーローズ・ジャーニー」と呼ばれる世界の英雄伝説の共通概念を見出し
大いに感動したジョージ・ルーカスが1977年の映画スター・ウォーズの脚本・設定(3部作)にもまるまるそっくり適用して大ヒットを飛ばしたとの逸話もあります。
いやー、神話の力にはわれわれの心をつかんで離さない何か強烈な誘因力というのがあるのですね。
国家や社会や個人レベルの隅々にまで刷り込みが行き渡っている生得的な文化資源なのだなあとつくづく思います。

話は変わって、AIチャットで質問してみたのですけれど以下の回答が得られました。
「富豪が身分を隠して少ない所持金から再スタートして商才を発揮して這い上がっていくリアリティショー」には、いくつかの番組がありますが、おそらくあなたが探しているのは「Undercover Billionaire」でしょう。
この番組は、実在する富豪であるグレン・スターンズ氏が、自分の既存の資産やコネクションを使わずに、エリー市で100万ドルのビジネスを立ち上げることを目指すリアリティショーです。
グレン氏は、自分の名前やコネクションを使わずに、たった100ドルだけ持ってエリー市に向かいます。
そこで、彼はビジネスアイデアを考え、チームを結成し、90日以内に100万ドルのビジネスを立ち上げることを目指します。

これです、これ!
最初は日雇い労働者から始めて、小さな商売で転売したり節約に苦労したりして3ヶ月で億万長者になる…!
こんなセクセスストーリーも縁故主義や学歴偏重の不合理からくる反発を少なからず掬い取っているからなのでしょうか?
知恵ひとつで境遇を変えられるという公平さが現代の社会に失われつつあるのではないか?
それを確かめたいがために無一文とコネクションの断絶という"異世界"に放り込まれていやおうなしに奮闘する姿が見たい。
人々は新たに作り出された「現代の神話」に身をゆだねてみたくなる心の在り方ってものがいつの時代にもあるものなのですね。

これも間違いなく、「貴種流離譚の一種」だと思います。
興味の沸いた方はディスカバリーチャンネルの 「UNDERCOVER BILLIONAIRE」 で検索してみてください。

さて今回はいかがでしたか?
「歌は世につれ世は歌につれ」
「リアルタイムアプリも世の世相を映す鏡」
「今回は神話や物語の類型に迫ってみました」
「それでは歌っていただきましょう!」
・・・と昭和の歌番組の口上がなぜか聞こえてきました。
「ざーんこぉーくな天使のテーゼ♪」
「しょーぉーねーんよ神話になーれ♬」
ということで突如歌をぶっこんで「デウス・エクス・マキナ」でこの記事を締めたいと思います。
(特に落ちはナシ)


 





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