P突堤2

「でにをは」別口入力・三属性の変換による日本語入力 - ペンタクラスタキーボードのコンセプト解説

未定義③キーにあてる別口入力キー候補その1…[た]

2018-01-19 | 別口入力にまつわる諸問題
新年早々レイアウトをいじくって両翼に斧の刃キーを新設するという大変更がありましたが必然的にキーのもつ意味合いにも新たな認識が必要になってきます。
別口入力[て]キーの新設、べたのかなクラスタキー「わ」の斧の刃キー・左への移動にともなって空白・未定義となった左辺縁部クラスタキー中の[③]の役割について更なる考察と、新規の別口入力としてどのようなものを割り当てていくのが相応しいかの模索を、これから数記事にわたって概観的に述べていきたいと思います。


今回別口入力として検討したいものは、過去の助動詞/過去形の語尾「た」です。
これを導入するメリットとしては、ル形動詞のワイルドカード入力のさまざまな派生(現在形/過去形/テ形/否定形/仮定形/命令形/可能形/受身形/使役形/使役受身形/意思形/マス形/希望形)の中で唯一、[○R][×r]キーを伴わないでべたのかなクラスタキーで入力していた(例:ぐぐった)過去形の入力に対応できるという点です。(適用後:ぐぐっ[た])
今まで大方のル形動詞の派生に[○R][×r]キーを利用していた中でぽっかりと空白のようにべたのかな入力をしていた[た]ですが、これを採用するのならもれなく派生を別口入力でカバーすることになり整合性・統一性・網羅性が満たされることになります。

ただこれには大きな問題があります。
もともと[○R][×r]キーでのマーキングはル形動詞に限っての扱いで捌いておりましたが、もし別口入力[た]を導入するとするとル形以外にもあらゆる動詞の過去形が「た」で終わるのでル形対応どころでは済まない――結局弁別できなくなってしまう…という問題が生じてくるのです。
仮に百歩譲って一般動詞全般の過去形を一手に担うにしても、ル形動詞のときのように明確な指向性をもたずに過去形の語尾すべてに[た]でマーキングする作業は思いのほか面倒ですし非効率だと思います。
それに「た」は「て」と違いたいていは文末に来るか連体形で後続に名詞が来るので文解析上でややこしくなることもありません。なのでわざわざマーキングする意味に乏しいのです。(※準体助詞「の」が続くこともありますが)
もちろんそれを論じるにはまず「て」の別口入力としての"正当性"(?)を検証しなければなりませんが、落ちついて考えてみると他の別口入力の諸事情とも重層的に絡み合った「て」キーの様相が見えてくるかと思います。
「て」の場合には例えば[でs][て]のストロークで「でして」となるような特徴的な"贅沢使い"が定義されていたりしていますが、これは[別口入力]-[別口入力]の接続というだけでなく[でs]キーのもつワイルドカード性をうまく利用した仕掛けとして有機的に機能しています。
さらには
<例1>「けもフレっ<て>最近舞台もやってたよね」の名詞にかかる係助詞用法のものや
<例2>「あれほどアカン<て>言ったのに…。」の引用的作用の格助詞用法のものなど
接続助詞/動詞活用形テ形において使われる「て」だけにとどまらず、また違った用法のものへの広がりを見せておりマーキングとの相性も良さげな境界要素として活躍してくれそうな予感もしてきます。
もちろん「て」もあらゆる動詞のテ形で使われるという意味では「た」の場合と条件は同じですが使い勝手に生かされる細かな違いを注意深く紐解いていかなければ今あげたような利点を見逃してしまいがちです。

また「て」でも「た」でも同じくぶつかる問題としては音便形の「だ」の場合の別口入力が用意されていないことが俎上に載ってきます。もちろん前後の文脈や動詞語幹の判別から自動で「た」と「だ」を使い分けることも考えられますが「書いた」/「嗅いだ」が判別不全をおこすためそううまくはいきません。
比較対照として「て」の音便形「で」は、すでに設置してある別口入力キー「で」が格助詞用法(場所・手段/材料・原因/理由・動作主体・成立範囲・状態・期限など)での用途がくまなくいきわたっており接続助詞/動詞活用形テ形での適用と混同してしまわないように厳然とテ形での使用はおこなわずこれはべたのかなクラスタキーでタイプしていくという基本方針があります。
バッティングを避けた結果として「で」は格助詞としての「で」あるいは形容動詞の語尾の一部「で」または断定の助動詞「だ」連用形語尾の一部「で」…と、適用場面が絞られることになり一般動詞接続とは切り離されることになっていてこれが逆に[動詞]-[べたでのかな・で]の接続の時はテ形の音便形なんだと自然と浮かび上がる構造にもなっており、
そういった諸事情の奥行きから単に過去形「た」のときよりも文解析上のヒントも多くなるという厚みがあり、それに比べて別口入力での「た」はいささか形式的・手続き的な観がぬぐえないといった所感になっていきます。
(詳しくは過去記事 [て]キーの導入に際して - P突堤2 をご覧になってください)

ちょっと「て」キーについて深掘りしてきてしまいましたが、「た」はあったとしても完全にル形動詞専用にするという限られた条件でのみ使用していくというのも視野に入れておいた方がいいのかもしれません。(なし崩し的に一般動詞全般にも使われるようになってしまうような気もしますが…。)
いずれにせよこうして検討候補の筆頭に挙げられるのですから、その重要度は決して低くはないと思います。まずは検討の余地、アリですね。

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