早稲田大学ビジネススクール教授の内田和成氏による著書『ゲーム・チェンジャーの競争戦略 ―ルール、相手、土俵を変える。』を読みました。
企業間競争においてテクノロジーの進歩、物流の効率化、グローバル環境の変化、イノベーション発想の転換などによって既存の支配的だった企業が否応なしに競争に巻き込まれ
従来のビジネスモデルではうまくいっていたものが新しい局面では逆に変化に踏み切れない足かせとなって新興の競争相手に打ち負かされてしまうケースがみられてくるようになってきました。
競争のルールそのものを変えてしまう「ゲームチェンジャー」の出現にどのように対抗していくのか、この本では攻める側だけでなく攻められる側――既存プレーヤーの戦い方にも注目して戦略の鍵となる要素を我々に示してくれます。
なかでも印象に残ったのが競争を仕掛けてくるゲームチェンジャーの4つの類型
・秩序破壊型(Breaker)
・市場創造型(Creator)
・ビジネス創造型(Developer)
・プロセス改革型(Arranger)
のマトリクスの説明と各章がそれぞれのテーマを掘り下げて詳述してあるところです。
私自身の理解力と読み込みが足らなかったせいか「市場創造型」と「ビジネス創造型」の違いがよく分からなかったのがありますがこのブログで描く未来展望を念頭に置きますと大いに触発されるものがある内容でした。
最近特に気になるのが「プラットフォーマー」と呼ばれる多数の消費者や事業者の基盤となる製品やサービスを提供している企業とその動きです。
例えばGoogleは検索(とその広告)だけで食っているのではなくてMapやYoutube、AndroidOS、日本語入力なども手広くやっていてその影響力は今や私たちの生活に欠かせないものとなってきています。
Amazonもショッピングだけではなくてプライムビデオや音楽ストリーミングやAWS(クラウドウェブサービス)などその事業領域は多岐にわたっています。
両者に共通しているのは展開する事業領域が単一・専業ではなく、ITのシナジーを余すところなく活用し多方面に展開していながら経営資源がバラバラになるのではなくてトータルでしっかりと統合されている事です。
特にAmazonプライムのサービスなどはプライムビデオ動画と映像ソフト販売の食い合いも内包しつつの構えではあるものの、お急ぎ便やプライム配送料無料のメリットもさることながらKindle電子書籍からミュージックまで生活からコンテンツ環境全方位の至れり尽くせりぶりは見事というより他はありません。
彼らは異業種の垣根を取り払うことで有機的なシナジーを生み出し、ビジネスの総体を拡張しながらユーザー目線の巨大なエントリーゲートを構えて丸飲みしてくるかのようです。
これは私見ですが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのNetflixやHuluのような専業的プラットフォーマーは今はいいですがこのままソリッドな形態のままでいると一気に形勢が動いてしまうリスクを裡にはらんでいるのではないか、と思っているのです。
動画サブスクリプション業界は目下競争激化で新たな参入者も控えておりせっかく育った市場ではあるのに消耗戦で焼け野原になってしまう展開が待っているのやもしれず、市場の動向は目が離せないところであります。
そういった意味では専業事業者にとってはややリスクが高いのではないかと一段下の認識を持っています。
もちろんプライムビデオのラインナップは前者に比べるとやや見劣りがしますがAmazonはサービス総体でいえばまだ情勢に柔軟に対応できるだけの方策のバッファがより大きいように思えるのです。
しかし専業では一本足であるところの脆弱性ゆえか突発的事態に対してできる選択肢が限られてくるのはよく考えれば自明の理でありますし今後の動向を注視していくことが求められていくと思います。
ここで今回の記事を作成するのに役立ったWeb上の記事、特に異業種をライバルとみなす現代の趨勢を読み解く記事があったので下にあげておきます。
・Netflix「ライバルはフォートナイト。すでに負けている」と発言。TV画面の奪い合い激化 - Engadget 日本版
・私どもは、自分たちのライバルは何だと考えているかというと、「お客様の興味関心と時間とエネルギーを奪い合うすべてのものがライバルだ」と思っています。特定のものだけをライバルだと考えますと、「そのライバルにいかに勝つか」という発想になるんですね。(任天堂:岩田聡)
2010年6月29日(火)第70期 定時株主総会 質疑応答
・トヨタ「ライバルはもうホンダではない」の真意 全ての企業の競争相手はGAFAである | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
さて、当ブログでもぶちあげているペンタクラスタキーボードの目指すシナジーとはいったい何なのか…単に日本語入力・IME・テキスト作成の枠内だけにはとどまらずいろいろ夢想しながら業界を股にかけていくのだ、と意気込んでおるところであります。
コンテンツ方面もマーケティングの新領域も手を尽くしたとばかりに腕組みしている場合ではありません!新たなフロンティアを模索しているのでしたら原点に立ち返って残された最後のシナジー、『言語』をもう一度見直してみてはいかがでしょうか?
業界関係者様、アカデミック方面の方々…コーディネートお待ちしております。