中学校3年生の最終課題でデッサンをやっている。
これが義務教育最後の美術になる。
自分の「手」のデッサン。
自画像だと「ずっと鏡を見続ける」という心理的なハードルが高いので、自分を表すモチーフとして「手」を選んだ。
手は意外に感情を表現しているから。
形の取り方や基本立体の陰影表現のポイントを説明して練習をした後、自分の手で自由なポーズを取ってデッサンをしていく。
その後はそのまま完成でなく、デジタルの描画アプリにデッサンを読み込み、デジタル上で加工していって自分の世界を作っていく想像画にして完成する。
受験前、美術の授業なんてやる気持ちにならないかもしれない中3に。
でも、私はこれをある程度やる気にさせることができると確信してやっている。
実際、意外に生徒は集中できている。
鉛筆で描き込む度、少しずつリアルに近づいていくその過程は成績云々なんていう小さなこだわりを軽々と超え、思春期のやる気を刺激していくのを今まで見てきたから。
私自身、デッサンが上手い方でなかったので過去いろいろ勉強した。
習いにも行ったし、本を読んで練習もした。
3歳下の私の妹が小さな頃から異常なほどデッサンがうまかったので、自分の下手さに自覚はあった。今見ると中学生から高校生くらいの時に描いたデッサンは、微妙に縦の比率が長かったりする。
でも下手だったからこそ今、「下手でもある程度できるようになるにはどうしたらいいか」という方法論が確立できている。
それを生徒に応用しているので、最初はクリームパンみたいだった手がどんどんリアルに近づいている。
それは生徒本人にとってもわかりやすく自分の成長が感じられることであり、とても嬉しそうにする。
それを見ると私もとても嬉しい。
あと、表現全てに言えることだと思うけれど、デッサンには「その人の今の心の姿」が表れる。
ある生徒のデッサンを見て、説明した理論にこだわってしまうあまり、何だか窮屈そうなデッサンだったので、
「いろんなことを気にしすぎて心が辛そうなデッサンになっているからもったいないよ。もっと自分の思うようにしていいんだよ。」
と伝えたところ、突然その子が目を真っ赤にしてポロポロと涙を流しながら、
「先生、なんでわかるの? 私、親とか周囲の人から言われたことを守らなきゃと思って、今すごく辛い。なんで、なんでわかるのーー??」
と言ったため、その後の授業は生徒が私にデッサンを持ってきて、私が何か一言メッセージを伝えるということになってしまい、私はにわか「デッサン占い師」になった。
特に女の子たちには大好評で、
「先生、占い師になってもやってける!」
とお墨付きを受けた。この方向の仕事もありか・・・・(^^:)
男子も、褒められると照れ臭そうに笑う。そしてデッサンに集中する(笑)。
まあ、悩み多き思春期は誰かに何かアドバイスをもらいたいんだよなあ、と思う。
私も正直、デッサンの表現だけじゃなくて、ここ数ヶ月間、生徒に接してきた時の全体像というか生活態度を鑑みて伝えるメッセージを考えたところもある。
できるだけプラスのメッセージを。
このメッセージが、その生徒にとって何かいい方向に進むきっかけになればと思う。
例えば普段あまり何事もやる気がない生徒には、
「メリハリがあって、やるときはやる子!」とか。
この子は「デッサン占い」でいいことを言われたいがためデッサンはかなり丁寧に取り組んでいる。効果あり。
昔、母の知り合いの方でよく当たると有名な占いをやっている方に
「あなた、将来、私と同じことをやるようになるよ。」と言われたことがある。
特に霊感があるわけでもなく普通の私は、そのときは「はい??」と思ったけど、
今、何となく当たっていると思っている。
占いって、たぶん人が発する微細な表現を読み取り、それを利用して人を励まし、幸せにしていく仕事だと思う。教育も占いみたいなものかな、もしかして。
「デッサン占い師」として、もっと読み取る精度を高めていきたい。
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