いきがかり上いたしかたなく・ぶろぐ

寄る年波には勝てないし難しいことは出来ないし、行き掛かり上致し方なくブログに頼ります。

カナヘビ

2008-08-07 11:44:51 | 超短編
 細長い小さな影がいくつも芝生の上を横切っていく。それは笑ってしまうくらいの結構なスピードで、まるで超低空を飛ぶ小人の国のドラゴンみたいだ。

 うちの狭い庭には雑草のように伸び広がるミントやローズマリーや、宝石のような青い実をつける竜の髭の茂みがある。そこを住みかにしているのか以前からカナヘビはよく見かけたのだが、今年はずいぶん多い気がする。春先には小さな赤ん坊だったカナヘビたちももうすっかり若者の雰囲気で、砂色の長い尾を引きながら芝生の上を駆けていく。

 それは昨日の夜のことだ。12時を回りそろそろ寝ようかとリビングの明かりを消した。何か物音を聞いた気がして庭に面した窓に近づく。カーテンを開くと白っぽい光であたりがぱっと明るくなった。ガラス越しに空を見上げる。雲が低い。稲光のようだ。雷はまだ聞こえない。

 庭を見ると、昼間は確かに緑色だった芝生が枯れたようになっている。驚いてベランダに出る。あたりがまたぱっと明るくなる。枯れた庭。カナヘビだ。数え切れないほどのカナヘビが狭い庭をびっしりと埋め尽くしている。みんな同じ方向に頭を向け光る空を見上げている。

 ひときわ強い光。雷はまだ、聞こえない。
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