お～い、どこだ～

私がバイトに行ってる間も、亀緒君の家である衣装ケースは出入り自由になっている。キッチンから北には行けないようにドアのところに引き出し式衣装ケース（次男のもの。中身も入っている）を置いてある。人間はまたいで通れるが亀緒君には無理。でも亀緒君はキッチン、リビング、和室を自由に歩きまわれる。

っが、時々行方不明になる。バイトから帰って亀緒君を探すのだがいないのだ。きょうもいなかった。自衛隊母の会みたいな感じで匍匐前進しつつ部屋中を探す。探す。探す。ひたすら。

いない、いない、どっこにもいませ～ん。

いつものルームウォーカーの下、マッサージ機の下、ホームコタツの下、折りたたまれっぱなしベッドの下、机の下、テーブルの下、夫の鞄のかげ。

いない、いない、どっこにもいませ～ん。

呼んでも答えない相手を呼ぶ空しさったらない。夜なら呼べば駆けてくるのだが、昼間は寝ていて気づかないみたいなのだ。でも呼ぶ。

「亀緒く～ん、亀緒く～ん、どこ～」
「亀緒く～ん、亀緒く～ん、出ておいで～」

寝ているのならいいのだが、どこかにはさまって出られないのなら大変だ。箪笥の後とかには入れないようにはしてあるのだが、でも万が一ということもある。３０分くらい探し回ったが、どこにもいない。でも、出て行けないのだから、どこかにいるのだ。

落ち着いて考える。まだ探していないところで、亀緒君の好きそうな場所はどこ？自分が亀緒君だったらどこに入り込む？しかもまだ探していない場所で。

テレビの下だ。古いテレビの下に入り込めないように、新聞紙を丸めて置いてあるのだが、それが何だかいつもより奥に押し込まれているみたい。床に寝そべって覗いてみる。なんか黒っぽいかたまりが見える。こっちを見ている。亀緒く～ん。

手が届かないので定規を突っ込んで、そーっと亀緒君を引き寄せる。おわ、ホコリだらけやん。亀緒君は顔も足もホコリだらけで、なんか別の生き物みたいだ。急いで洗面所に連れて行き、きれいに洗った。しかしよかったよ、見つかって。心配したんだよー。