満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

魔女 作:五十嵐大介

2008-09-19 | 漫画紹介

第8回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した作品です

世界中で「魔女」っと言えば…
その仕事の大半は「生」と「死」の狭間の仕事を司る場合が多い
「医者」という明確な立場を持った人が少なかったり、いなかったりした時代
「出産」といえば村はずれの「魔女」を呼び
「病気」となればやはり「魔女」を呼んだ
「死んだ人」に会いたい時も「魔女」を頼り
「飢饉天災」があれば「魔女」のせいにもした
人々が穏やかに暮らすために都合よく利用されていた者たちだとも言える

だから我々が「魔女」っと聞くと…
「頼りになる」ような気持ちと「不安になる」ような気持ちと
両方の感情がない交ぜとなる

今回この「魔女」っと言う漫画も「雨降り人色バス」のあこちゃんにお借りしたのだが
私はこの作者「五十嵐大介氏」を申し訳ないが知らなかった
知らなかったので他の作品も見たことはない
漫画の表紙絵を見てもらえれば解ると思うが
一本一本の線は細く、ともすれば頼りなさげに描かれているのだが、
線が寄り集まり、絡みあうと…なんとも言えない力強さを感じる
とかく線を乱用するとウルサクなり邪魔になるのだが
そこを旨く利用し「魔女」という不確かな立場の者を見事に描いている

と…漫画を描けないド素人の私でも、そう感じてしまうほどに絵が旨い(笑)
やはり人によって好き嫌いがある絵柄かと思うが…面白いものは面白い

全編、色んな国、色んな時代の「今」を切り取ったオムニバス構成となっている
先にも述べたが「魔女」に対してもその国々で捉え方が違うので
様々な「魔女」が描かれている

第一章 「SPINDLE」では西洋の魔女と遊牧民の魔女が対決する
そこで遊牧民魔女が放った一言がある

言葉で考えるあなたは
言葉を超えることは考えられない
あなたより大きなものを
あなたは
受け入れることができない


また二巻 「PETRA GENITALIX」では宇宙空間で事故をおこし
災いの石を持ち帰ってしまった人類を、身を捨てて守ろうとする魔女が
口先だけで何も動こうとしない教皇たちに言い放つ言葉がある

自分の身を危険に晒さない者は口を慎みなさい

あなた方の立場からみれば、わたしは2つの世界をつなぐ者
言葉のある世界と、ない世界の。

あなた達の世界は「有限」
わたし達の世界は「無限」
あなた達の言葉は、ありとあらゆる可能性を特定の性質に切り分けるナイフ
自分達の都合のいいように世界を刻む道具

わたし達は世界をあるがままに見る
わたし達は言葉を知りながら
それを棄てることができる者


この二つの言葉が心に残る

私たちは言葉に頼り過ぎているのかもしれない
ネットが進化しメールで会話することが多くなり
人と対峙して話すのを嫌うようになってしまった

相手の目の動き、顔の表情、話す態度、それらから読み取れる
言葉よりも大きな情報を読み取れなくなってきている

かといって文章を多く発信していても、文章の構成組立は苦手である
絵文字・顔文字などを多用し
自分の感情を、相手の受け取り方に任せる方法を好んでしまう

何もせずテレビの前で菓子を食いながら文句ばかりを言い募る
自分達で選んだ政治家たちの無能さをあざ笑い
メディアに乗った言葉尻が気に食わないと、つるし上げ謝罪させる

言葉に頼り、言葉を使うが上手く使えないので苛立つ。
言葉意外のモノで感じることができなくなったために苛立つ。
今、何故か誰もが苛立ち怒っている
異様なほどに人のせいにし怒っている
だけど…誰も動こうとしない。総理大臣ですら動くのを辞めてしまった

ありのままを受け入れる懐の深さと
自分自らが動き改革していく力があれば…そんなに怒りも湧いてこないだろう
しかし…いかんせん、我等人間は弱く非力で情けない
そんな自分自身に一番怒っているのかもしれない

心を自由に飛ばし、自然と共存できる魔女たちが羨ましく思えた
何にも縛られない自由は…きっと私が想像している以上に怖い世界なんだろうな

ある魔女は自然に耳を傾けているからこそ
今、自分がすべきことがわかるっと言っていた
だから…それに従うだけだと

一陣の風が読み手の心を突き抜けるような、そんな漫画でした~(笑)

作者の「五十嵐大介氏」は携帯を持っていないらしい
五十嵐氏の「周辺編集者さん」がブログを発信しておられる(笑)
「五十嵐大介周辺日記」で検索をかけると出てくると思うので
覗いてみてはいかがだろうか
(コメント等、交流がないので…リンクは遠慮しています)

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