満天横丁に住まう妖怪のひとり言

満天横丁に住む満天と申します
最近、猫妖怪化してきており更新は不定期ですが…
ひとり言にお付き合い頂ければ幸いです。

かたみ歌 作:朱川湊人

2010-09-27 | 本の紹介
 新潮文庫

前から気にはなっていた本なんだが…
この表紙がの~(笑) タイトルと合体して見ると暗そうだし…
この本を読んだら泣くぞ!ってな雰囲気がバリバリだったもんで、避けておった。

私が想像していた内容は…
古き良き昭和の遺物である「商店街」が、近所に進出してきた大型スーパーの影響で
客足が落ち込んだのをなんとか取り戻そうと頑張ったが、力足りずに消えてしまい
そこにお涙ちょうだい的ドラマが、オマケで付いているってな内容だと考えておった(笑)

今考えると、あまりにも単純な内容を想像し過ぎておったの~(ハハハハ)

ところが、いつも遊んでもらっておるブログ仲間の「さくらどん」の所で
この本のレビューを読んでビックラこいた(笑)
私の勝手な想像と全然違う内容じゃん! だったのだ(ハハハハ)

※「小耳書房」かたみ歌レビュー

で、面白そうな本なので読んでみたいっと思って買ったのだが
いざ手にしてみると、やっぱり表紙からかもし出される雰囲気に負けて放置していた(笑)

そうしたらば、またもいつも遊んでもらっておるブログ仲間の「asagiどん」が
もの凄~く面白かったと、この本のレビューを載せておった(ハハハハ)

※「こどもの時間」かたみ歌レビュー

となると…雰囲気負けして読まないでいるのも、なんだか勿体無い(笑)
という訳で、やっとこ重い腰をあげ、読んでみた。(ガハハハハハ)

読了後の感想は…
「この雰囲気はたまらなく好き」であった。
ましてや私が勝手に想像した内容なんぞを遥かに超える面白さである。


連作の7つある短編の組立が、実に巧妙での~。
「アカシア商店街」と「覚智寺」という古びた寺の2点。
それと7つの短編ごとに登場する1点が結ばれ、魔のトライアングルを形成している。

この三角形は短編で登場する人物によって、その形を様々に変化させている。
話が起こった時間軸は過去、未来とバラバラなのだが少しも違和感を感じさせない。
むしろ小さな小道具で、それぞれの短編が繋がっているのを見つけたときの喜びなどは
昭和の頃に雑誌に付いて来ていた「楽しい付録」のようで、とてもワクワクした。

まず、商店街界隈へ引っ越して来たばかりの、小説家志望のヒモ男から話は始まる
我々読者も、引っ越の荷ほどきをしている彼と、1ページ目をめくる気持ちとが相互し
気が付けば、すんなりとアカシア商店街を中心とした小さな町に溶け込んでしまう。

次に近所の小学生たちの話へと移り、彼らの遊を垣間見ているうちに
車の騒音よりも、人々のざわめきや豆腐屋のラッパの音が響く昭和の音に包まれていた。

商店街にある酒屋の娘は、グループサウンズへの熱狂ぶりとは裏腹に
現実の恋に関しては臆病で、栞に託した小さな恋を育んでいた。
砂埃の舞い上がる道の片隅に可憐な花が咲いていた、あの頃の光景が目に浮かんだ。

スナック「かすみ草」のママは、女手一つで二人の子供を育てながら奮闘している
方や、不慮の事故で夫を亡くしてしまった女の末路との違いに、唖然としながらも
時代は移ろっても、人の本質には違いはないのかもしれないことを知る。

夢を追いかけ諦めなかった漫画家志望の男と、猫の不思議な関係を読み終える頃には
薄っすらとだがこの町に隠されている真実のバミューダトライアングルを感じてしまう

アカシア商店街で店舗前のスピーカから様々な曲を流し続けるレコード店「流星堂」と
亡くなった奥さんの名前を付けた古本屋の「幸子書房」。
そして、あの世との入り口があるとの言い伝えのある「覚智寺」。
この三角形がクッキリと浮かびあがってきた時、初めて読者は全てを理解するのだ(笑)

7つの短編にはそれぞれ不思議な話が盛り込まれている
傾向的にはホラーに属する話の内容と言ってもいいと思うのだが、そんなに嫌ではない。

最初は脇役かと思われた古本屋の店主が、一話ごとにその影を色濃くしていくので
なんとなくだが、朝から夕景までの商店街のありようを見ているようでウットリした(笑)

この小説は、実は絶版ギリギリの憂き目にあっていたらしい。
横ばい状態でしか売れていなかったこの本を、爆発的な人気本へと押し上げたのは
苦肉の策で付けた帯のキャッチだそうな。
大反響 いま売れてます
実力派 直木賞作家の真骨頂
なぜ、こんなにも心にしみ入るのだろう 涙腺崩壊。


マジか…?

私なんぞは「直木賞」「涙腺崩壊」で…読む気が失せておったが。。。(笑)



こちらの写真は、単行本の時の表紙絵。どちらの表紙絵も昭和を匂わせているが…
コチラの方が内容に合っているように感じる。
帯や表紙に色々な工夫をしなければ、なかなか本は売れない時代に入っているのかな

商店街のレコード店「流星堂」が流している音楽から、昭和30~40年代の話だと思う。
「シクラメンのかほり」「好きさ好きさ好きさ」「モナリザの微笑み」「ブルーシャトウ」
「黒猫のタンゴ」「いいじゃないの幸せならば」「圭子の夢は夜ひらく」「瀬戸の花嫁」
だいたいこの曲あたりでは、私は幼稚園から小学生であった(笑)
最後の短編に出てくる「心の旅」「赤とんぼの唄」は中学生頃か。

幼稚園の頃から高校生まで、私の住んでいた町にも商店街があった。
この商店街。実は、あなどれない。ここでの行動は必ず誰かが見ている。

幼稚園の頃、迷子になった時も
小学生の頃、親のサイフからお金をチョロまかしてアイスを食っていた時も
中学の頃、初めて男子と二人っきりで下校した時も
誰かが見ていて必ず親へとチクられた。恐るべし「商店街!」である。

作者は1963年生まれだと言うから、この小説の昭和40年代の頃でもまだ2歳だと思う。
誰かに聞いて書いた話のせいか、ちょっとだけ商店街の寂れ具合が早すぎる感じがした。
こんな風に寂しげな風が商店街に吹きだしたのは、昭和50年代の半ば頃あたりからである。
それまでは何処も一緒だと思うが、そりゃ~活気に溢れていたし五月蝿かった(笑)
新しい住民も古くからの住民も、一言も声を掛けられずに通り過ぎるなんざ無理である。

ま、でも…そんな違和感も、ちょっと不思議な雰囲気を巧く出すエエ味になっておるがの。

ああ、しかし…あの中学の頃、一緒に帰った先輩は…私の初恋だったのに…。。。
商店街のオバちゃん達よ! 今だから言うが、
「あれはソッとしておいて欲しかったゾ!」

つまり…アレがあったので、この本の商店街の絵を見て…読む気が失せておったのだ
(アハハハハハハハ)

面白かったので見かけたら、表紙と帯に負けずに読むべし(笑)

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
違和感。 (トミー。(猫とマンガとゴルフ~の管理人))
2010-09-27 11:06:09
 以前見た映画 「三丁目の夕日」 でも、当時は新品だったよ~という品物達がいま古物商で見るような古色蒼然とした姿で出てくるのを見て、違うだろう~っと違和感を感じたよ。

もうちょっと当時子供だった人の意見を入れてもらいたかったと思ったのよ。
古いものでも大切に使ってはいたが、中には新品のタライとか洗面器とかひげそりとかあったはず。
当時子供の目にはピカピカの新しいものもあったはず。

当時を知っている人が生きてる、ちょっと昔のことを表現しようとすると、大昔のことよりすっごく難しいと思うわ。
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Unknown (asagi)
2010-09-27 15:58:15
満天さんがレビュー書くとやっぱり面白いです~^^
あの帯のキャッチコピーで爆発的に売れたっていうのはビックリだよねぇ(笑)
でも、絶版になりそうなところを救われたのなら、満天さんが(私も)ドン引きした「涙腺崩壊」のでっかい文字も大半の人には効果があったのね。

私の育ったところは田舎過ぎて商店街なんかなかったけど、件のオバちゃんパワーは健在でした(笑)
高校生の頃、ひょんなことから弟と自転車を二人乗りして帰った数日後、「asagiちゃんが男の子と自転車二人乗りしてるわ!と思ってよく見たら弟くんだったわ~」と母が近所のオバちゃんから聞いてたことが判明。
いやむしろ、初恋の彼でもなんでもない、弟だったっていうほうが憐れを誘うよ(^^;
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ご返事どす~ (トミーどんへ)
2010-09-28 10:31:16

実は3丁目の夕日を見た時に…
私が小学生の頃に過ごした、昭和40年代と似ておるな~っと思っておっただ(笑)
ただ、3丁目の夕日は東京の話しだでの
私らが過ごした地方都市とは進化の度合いが違うんじゃろうなんて思っておったのだ

そうか、逆を言えば30年代では色んな物がピカピカでまだ新しかったのを
大事に使った40年代の方が、物が寂びれてきていたのかもしれん
買ったばかりの製品が、既に薄汚れて表現していたのは変だもんね(笑)

先日、TV放送されていた20世紀少年を一挙3作品見ただ
あの少年メンバーは、私と同じ歳であった(笑)まったく知らんかっただ
作品の風景は私の知っている町にとても似ていたし、子供の服装も…
綺麗な子と汚い子がハッキリと別れていたな~
変に町も汚れていなくてソックリだったです
3丁目の夕日よりは郷愁に誘われましただ
返信する
ご返事どす~ (asagiどんへ)
2010-09-28 10:45:35

私は長女なんだけどお姉ちゃんみたいな従姉がいてな
その彼女がこの作品に出てくる若い人の年齢に近いと思うんだ
ジュリーに憧れ、ロミオとジュリエットに涙しておったもん(アハハハハ)
だからこの作品を読みながら、従姉を思い出しておっただ~

昭和初期に少し昔の江戸末期から明治初頭の本を書いた人も
その時代を生きた人から見れば、ちょっと違うだろうと思われて居たのだろうか?
多分、思われて居たんだろうな~
でも時代が進み、その時代を生きた人が亡くなって行けば、本の世界が真実となるんだよね
本というのは、底知れない部分があるな~(笑)っと…思った(ハハハハ)

それはそれとして、なかなか雰囲気の良い作家さんだと思いました
彼の他の作品もチト、読んでみたいな~っと思って色々と検索してますだ(笑)

ウチの弟…中学の頃に少しグレてね。。。あろうことか商店街にある喫茶店で…
タバコを吸っておったらしいのよ(笑)
ああいうのは街で吸って補導された方が、まだマシかもね
もう、オバちゃん達の攻撃にあって見るも無残な状態に陥ってたもん(アハハハハ)
その後もズーっと目を付けられてた(笑)ほんと、あの頃のオバちゃんってエライわ~。

>満天さんがレビュー書くとやっぱり面白いです~^^
asagiどん。ありがとう~!めちゃ励みになる言葉です~~
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表紙は大事だね (さくら)
2010-09-29 19:05:54
こんばんは。
「ちはやふる」の表紙がャなので、誰に面白いと言われても手を出さない私です。
全米が泣いたって映画をテレビで観ても、さっぱり理由がわからんけど、
多くの人の餌には持ってこいのセリフなんでしょうなと思うと、手が出ない本だよね。

誰かの話では脇役だけど、視点がかわると主役も変わる。
作りが面白かった。

商店街=人情ってか無礼講なところですかね。
先輩との仲にチャチャいれたばばぁは、
今も干からびた置物のように店先にいるんじゃないかね(笑)
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酸っぱい思い出 (トマトジュース)
2010-09-29 19:53:14
小2から高2まで住んでいた団地のそばに古いショッピングセンターがあって小さな商店街になっていました。
年上の遊び友達がおませさんで、ある日「ショッピングの2階の喫茶店に行こう」と誘われました。小学生は喫茶店など行かれるわけないし、母に叱られるからと断わっても「大丈夫。バレないようにすればいいんだから」と強引に連れて行かれました。でも結局バレてすごく叱られました。帰る時に会計をしたらお店の人がマッチをくれたのです。それも三角のマッチ箱で。友達はマッチをわたしに押し付けて帰ってしまい、わたしはマッチを始末することも出来ずに家に持って帰りそれでバレたのです。
その時飲んだレモンスカッシュのように酸っぱい思い出です。
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ご返事どす~ (さくらどんへ)
2010-10-01 09:35:10

世の中にゃ…泣きたい人が沢山居るようで…
(アハハハハハハ)
最近の本の帯は「泣けます!」か
「あの有名な誰それさんが絶賛です!」が多いよね
それと一度成功したからか、あらすじを書かない本も多くなりました
それから「賞取った」だの(アハハハハ)

私も~。世界中が泣いたっっと聞くと…意地でも泣きたくなくなるっす(ハハハ)

かたみ歌は精巧にプロットを組んでるな~っと感心しました
子供の頃は自分中心だった世界が、少し大人になると他人にも自我があると解った
あの雰囲気によく似ている(笑)

ちはやふる…気にはなっては居たんだけれど
私も同じ理由で手が出なかったさ
ほいで、さくらどんの積ん読でチラっと…勘違いして
さくらどんが読めるならOKか~?とか思った(アハハハハ)
だいたい感想と傾向が似ているもんで頼りにしちまっただ~(笑)
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ご返事どす~ (トマトジュースどんへ)
2010-10-01 10:03:25

おお~~~。私の年上の従姉も…トマトジュースどんのコメに登場する
調子の良いオナゴと一緒での~(ハハハハハ)
子供の頃の1歳2歳の違いは大きかったよね~
今なら絶対に負けない自信があるだが、あの頃は全敗であった(笑)

私が喫茶店に友達同士で入ったのは中学の頃であった。
トマトジュースどんの時はあったかな~?
コーヒーの横に付いてくる小さなミルクピッチ。
あれを盗んで首からぶらさげるのが流行っておってな
ツワモノは中学生なのに沢山持っておった。
私しゃ盗むことが出来なくって、結局お店で売っておるのを買って付けておったさ~
ああ、本当に酸っぱい思い出っす(ハハハハ)
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Unknown (トーコ)
2010-10-08 00:10:45

うう~ん。小説のこのノスタルジックさに惹き付けられます。
実際に見てなくても、読んでるとその時代の空気が漂ってくるのは不思議です。
自分がその時代に居たような気がしますもんね~。
昨日、「栞の恋」がTVドラマ「世にも奇妙な物語」で放送されていて、本屋の店主がタイガースメンバー一の岸辺一徳でした。
短編で見てもステキですが、通して読むと更に深みがありますよね。
「天狗の落とし文」のような、少しだけ背筋の寒くなる話も、実際無いんでしょうけど、有りそうな気もして好きな話です。



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ご返事どす~ (トーコどんへ)
2010-10-12 11:43:36

栞の恋が「世にも奇妙な…」で放送されていたとは知りませんでしただ
「世にも」は何時も面白くって見ていたんだけど…
こういう時に限って見てない(ハハハハハ)
本屋の店主が一徳さんとは…イメージが全然違うけど
でもナンだろ?きっとイイ味出てたんじゃないかな?とも思いますだ(笑)
だって主人公の女子がタイガースに憧れていたんですもんね
後から入ったとはいえ、一徳さんもタイガース。
うん。実にオモロイ(笑)

あの頃は、私より少し上の人達がグループサウンズに熱狂していました
ショー研とジュリーで、どっちがエエとか言ってたような思い出があります(ハハハハ)
先に入っていた岸辺さんのお兄さんも人気があったような…一徳さんはどうだっただろう?
世にもは再放送するかな~?見て見たい気がしますだ~
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