沈黙の声を拾い上げたとき、
その数が千にものぼることに驚愕する。
恋人へ沈黙の声を届け終えたばかりのわたしは、
いつもよりすこし早めに熱めのシャワーを浴び、
これからの人生を想った。
北アルプスをのぞむ小さな宿、
アルペンルートを歩く散策の過程で、
白川郷の美しい景色の中から、
あなたとのことを真剣に考えてきます。
その後にお手紙を送ります、とある。
わたしがいる施設でも、
声にならない声が聴こえる。
それら千にものぼる沈黙の声を、
わたしは聴かなかったことにはできない。
あなたの役割は、
そうした声を拾い上げ、
あなたの言葉で世の中へ届けることでは?
恋人からの追伸に添えらたメッセージ。
千の沈黙の声をわたしの手で、
わたしの想いに変えて、
世の中へ届けることが、
あなたの天命、寄り添い、添い遂げる姿を
見守り続けたい、とある。
※タイトルの「千の沈黙の声」とは、
シチリアの乳児院、児童養護施設で過ごした女性が、
その過酷な日々をつづった著書、
「千の沈黙の声 わたしは施設という名の地獄で育った」
(中央公論新)からの引用です。
社、エンマ・ラ・スピーナ著 泉典子訳、税別1900円