風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

ルール違反

2008年01月30日 09時10分52秒 | エッセイ、随筆、小説
私の周りには
さばさばとした女経営が多い。
小さな店を経営している程度でも
経営者意識は非常に高く、
また驚くほど努力家で勤勉家だ。


経営感覚を取り戻すため、
また私のリハビリを兼ねて
仕事をすることになったものの、
ルール違反が発生した。


オーナーが私の過去を
仕事柄、あらゆる調査ができる客に話し
調べさせたのだ。
18年も前にアルバイトをしていた店名を
ズバリと言い当てた。

前日、客からその話を振られた際、
ママは知らん顔を決め込み、
私の質問にも
なんでも調査できる職場だから
調べたんじゃない?と
高をくくっていた。
けれど、当時と私はまったく雰囲気が違い、
まして今は着物姿だ。
いくら記憶力のいい人だとしても
覚えているわけない。
不可能だ。

経営をしていく上で
たとえ知り得た情報があっても
自分の胸に止めておくことは基本だ。
他人の噂話など私は興味ないし、
まして根ほり歯ほり聞かれることは
非常に不愉快だ。


給与面でも長くは続けられない状況があり
おそらく私の持ち出しが仕事を支える柱になる。
求めるものは高く、
けれど、給与は低く、
交通費も出さないシビアさだ。
知人から紹介された人材に
私はそのような待遇は
間違いなくできないと思う。


女はシビアに物事をみている。
まして仕事となれば
愛情を注ぐのは当然だ。
愛情が欠如したまま経営は
おそらくうまくはいかないだろう。
それが私の学びだ。

作品

2008年01月27日 00時32分23秒 | エッセイ、随筆、小説
出版社に持ち込むための作品に着手、
ベッドの上もサイドテーブルも
辞書や参考資料や文献などで
わずかな隙間すら埋め尽くしている。


以前と変わったことがひとつ。
それは作品をいつになく丁寧に書き進めていることだ。


いろいろな出来事によって
去年は心を乱され
作品を書き上げる気力
が奪われてしまっていた。


人との縁をテーマに掲げ
男女関係を通して
宇宙の原理や大いなる力に触れた作品に仕上がればいい。


脱稿は春、編集者に指導いただきながら
おそらく泣きながら作品を仕上げていくのだろうと思う。

愛情

2008年01月26日 05時12分36秒 | エッセイ、随筆、小説
死にたいくらいに人を好きになったことが
あなたにはありますか?


お台場で待ち合わせした周布は
暮れゆく東京の街に視線を落としたまま、
死ぬほど愛した人がいたかどうかと
悪びれることなく私に詰問する。
その勢いのせいで
私は返答に困って席を立ち化粧室へ向かった。

週末のレストランは
見渡すかぎりカップルで埋め尽くされ
私たちも例外なく
恋人に見られるのだろうと思った。
複雑な心境が交差して
胃を絞めあげていくような感覚に見舞われ、
私の表情が曇り、
視線の先にあるものすべてが
なぜか震えてみえた。。
緋色の夕焼けが東京の街を染めあげて
私の中の女を目覚めさせていく。
ダメ。
この男だけには恋はしてはならないのだ。


罪な男。
もし私の返答が周布へ向けられたものなら、
あなたはどうするというの?


用のない化粧室で
私は鏡の前に立ち、
ショルダーバックからおもむろにグロスを取り出すと
金色に輝くふっくらした唇をつくりながら、
愛など馬鹿げていると自分に言い聞かせる。
いくら体の曲線を磨き
男を受け入れる準備をしたところで
私と周布に何か起こるわけではない。
たとえ私がそれを望んだとしても、
幼い子の頭を撫でるように、
けれど宥めるわけでもなく、
何事もなかったかのように振る舞うのは目に見えている。


周布のシャツが目に焼き付いて
私の瞼からなかなか離れてはくれない。
黒をベースに象牙色のストライプが印象的で
それが波や飛行機雲や
手入れの行き届いた黒髪を私に連想させながら、
都会的で洗練されたセンスのよさを
際立たせていく様は実に見事だ。
とはいえ、
周布の子供じみた一面が垣間見てしまうせいで
私は不自然な振る舞いしか許されないような
ぎこちなさを覚える。


いつものこと、
誘いを受けたことを
ひどく後悔するのだ。


あれから8年の歳月が流れた。
私はその間に交通事故に遭い、
周布はひとり身になった。
かき集めた理由がため息の中に溶けだして
諦めと戸惑いが
まるで駆け引きしているかのように
ますます周布の世界に
引き込まれていく自分がいる。
その姿は可愛くもあり、
また同時に悲しくもみえた。


あのときの答えを知りたいというなら
今なら答えてもいいわ。
死ぬほど愛した人がいるかどうか。
愛する予定があるかどうかを
今なら答えてもいいわ。

奇跡の海

2008年01月25日 14時14分01秒 | エッセイ、随筆、小説
それに気付いた人は惹かれ合う。
導き、共鳴し合うといった方が
しっくりくるそうだ。


自分ではどうしようもないことの連続が
もし人生の縮図であると例えるならば
それをどのように取り扱い、
どうでもよいことを省いていくと
奇跡の海にたどり着くらしい。


その海は奇跡を生み続けるのだという。
いかに奇跡の海に近付くのかが
人生そのものであるかもしれない。


蒼く
深く
温かく
奇跡の海は何よりも
柔らかく優しい。

紺色の涙

2008年01月24日 17時14分52秒 | エッセイ、随筆、小説
何でもいい。
新人賞を視野に入れた作品を書け。
お前さんが作家デビューするまで
俺は死ねやしない。
いや、それを今世の見納めとしよう思うが
お前さんの覚悟はいかがなものか。


私は嬉しさのあまり
涙をこらえることばかりに気をとられていたせいで、
客人の注文をすっかり忘れていた。
とろさんまの艶っぽさや
きんぴらのなめらかな曲線に目を奪われていると
あたりが滲んでみえた。
と同時に
聴覚が音を拾わなくなってしまったようで
時間がぴたりと止まってしまったようだ。


紺色の空から舞い落ちる滴や音の傍ら
太治兵衛のお湯割りを誰よりも美味しそうにやりながら、
某出版社社長と私は今世の契りを交わした。


私のかわりだろうか、
紺色の空が感情を露にしくしくと泣いてくれている。


私の程度ではその世界は
決して生易しいものではないと
バカながらに理解しているつもりだ。
けれど、社長が生きている間に
今世の契りを果たせたら。
今夜は風呂で大いに嬉し涙を
流そうと思う。
紺色の空に手が届く日がたとえ来なくても
私はその契りのために
最期まで努力すると誓う。
今までいろいろなことに耐えてきた自負があるが
生きていて良かったと
思える幸せを噛みしめている。


深謝。

2008年01月24日 15時45分18秒 | エッセイ、随筆、小説
匙と言うものは
1日に何回となく
汁の中につけられるが
匙には汁の味がわからない。


しかし舌に汁の一滴をたらせば
一度で味がわかる。


どんなに立派な人に接しても
立派な書物を読んでも
匙の様に無感覚では
いつまでたっても何もわからない。


たとえ万巻の書物を読み
高等教育を受けても
学問が身につかないのでは
何にもならない。


他人を苦しめて自己の安楽を望む者は
怨みのきずなに縛られて
怨みよりのがれる事は出来ない。
この様な人間にならぬ為、
今年も日日悔いなく過ごし
小さくても一日一善必ずする様に
心がける。


ある寺の文献より引用

美しい時間

2008年01月24日 12時12分52秒 | エッセイ、随筆、小説


8時には来るわ。


根拠はないが気配が近づいてくる。
その距離を計ると
六本木までちょうど1時間はかかる。
予感をむやみに人に話す趣味は持たないが
今日の私は控えめにと気遣いながらも
いたずらっぽく思いを言葉に置き換えて
やんちゃな一面を見えかくれさせる。


絶対に来るわ。


和紫色の蛇目傘、
下駄の乾いた音、
笑っているわけではないが
少しだけ口角をあげる表情は
良縁を呼び込むのだと
誰かが言っていたことを
ふと思い出す。


息は消炭色の厚い雲間から舞い散る
白い雪に重なって
通り過ぎる人の頬を桃色に染めあげる。
その人の印象を一言であらわすならば
冬というよりも夏の男といえよう。


うふふ。
なぜだか自分でもわからないが、
その人を思うと微笑がこぼれだす。
不思議だ。
8年前にお台場のジムで汗を流した日には
微塵にも抱かなかった感情が
ふつふつと私の内側で生産されていく。
それをどこにも出荷できないせいで
感情が血液に溶かされ体中を巡る。
また中心に戻る頃合いを見計らい
私は必死にフィルターを探して
彼を記憶から排除しようと躍起になるのだ。


ガラガラと音を立てて
ドアが開いた。
と同時に凍った外気が店内にくるくると入り込み、
火照った体を冷ますように
頬や髪を撫でまわし
どこへやらに消えてしまう。
そして、私は取り残されているのか
それとも先まわりをしているのかも
何ひとつ自覚のない中で
夏が似合う男を目でおいながら
「そんなものではないのよ」と
ひとりごちた。


温泉やバリに行きませんか?と
電子メールが届いたのは
それから間もなくだ。
男が着ていた黒と銀色で目映い
ストライプのシャツが
瞼にこびりついているようで
それを思い出すたび
私は返信に宛てる言葉が飛び散ってしまうのだと理解するのだ。


美しい時間には切なさが散りばめられているのか
車のヘッドライトの先には
きらきらと輝く雪の結晶が踊っている。
それは地上にたどり着くまでの命と知る儚さをたずさえ
私の胸を締め付ける。


「そんなものではないのよ」
私は誰に話すわけでもなく、
いつまで続くかわからないひとり事を
冬の夜に抱きしめている。




変化

2008年01月23日 11時38分06秒 | エッセイ、随筆、小説


ニューヨークで着物を着ている自分が
想像た易い。
連日のクラブ通い、
踊り明かした日々を知っている友人なら
文化そのものを背負ったような姿の私が誰か
おそらく気付かないことだろう。


ふふ、どうせなら
愛のこもった爆弾を引っ提げて
あの街に帰ってこそ私だ。
ドレスもよいが着物は尚よい。
ブロードウェイを下駄音響かせて
歩いてやるのだ。


変化といえば私そのものだ。
多少の英語が毎日必要となる状況の中で
客の多くが語学達者では
非常に緊張するものだ。
しかも、翻訳できない日本語となれば
自分の力量やセンスが問われる結果に。
その説明はまさに日本の印象を
左右しかねないからだ。


とはいえ、私は声をかける。
誰か助けてくれ~と。
きんぴられんこんは英語では何だ?
煮つけは?
おでんは?
頭の中はごった煮状態で
私の悪戦苦闘を
客はくすくすと笑いを堪えて
見守っている。


以前の私ならちょいと格好をつけて
辞書でも調べて用意周到、
完璧な準備をしたと思うのだが、
今はそんなことはしない。
それが客にとっても好感が持てる風に映るらしく
私は自然体で飾らず
これからもいこうと思う。


変化は楽しい。
とはいえ、自信もなく
緊張感に押し潰れそうだったことを
今なら告白する。
ハレルヤ。


※流れ的に『ハレルヤ』で〆ましたが、
これではマイミクの春駒さんのパクリそのもの。
今回は見なかったことで
どうかご勘弁を(笑)




源氏名

2008年01月23日 02時32分13秒 | エッセイ、随筆、小説


みんなが私の源氏名を
真剣に考えている。
ホステスではないが
それも悪くはないと
私も乗り気満々。


今日は画家の先生に
私の似顔絵をプレゼントしていただき、
夢二が書く絵に似ているとの理由から
店では『ひこ乃』に決まった。

またタイミングよく
ペンネームを考えたといって
神戸からわざわざ六本木まで
立ち寄ってくれた知人がいた。


名は『紺波砂』、
これでこんばさと読む。
なんだか素敵な作品が書けそうな名前だ。
あとは温泉宿にでもこもって
ひたすら筆を動かすのみだ。


まさかの展開だ。
この歳にして源氏名をつけていただけるなんて。
みんなが私の年齢を誤解しているようだけど、
夢はむやみに壊しちゃいかんとの気配りから
私は歳の話になると
突然に耳か遠くなる

同じ音量の「おねーさん」や「お嬢さん」には
店内をスキップをしながらわかりさすく、
酒もいつもより多めに
注いであげる
この単純なわかりやすさは何だ?

さて、源氏名もペンネームも決まったところで
いい仕事ができる予感。
出来る予感でなく
やりぬく方向性の風向きをよみ、
紺波砂と名付け
粋な店にしたるよー


みんな六本木まで
遊びにおいでー


「ひこ乃」も「紺波砂」も明日からまとめて自分もものだー

ひこ乃どっせー

経営者の条件

2008年01月22日 12時08分30秒 | エッセイ、随筆、小説


まず健康であることは基本中の基本だ。
体力気力はその後の持久に
絶対的な影響を及ぼすし
愛嬌や手腕は経営の質に
密接に結びつく。


知人たちが経営する会社や店をながめていると
なめらかな動線の確保や
効率や店側の都合によって
客入りや定着の結果となって
その経営状況とイコールになるのだと
痛感させられる。
あからさまに媚びる必要はないが
明らかに店や会社の都合ばかりを
押し付ける時代ではないと
思うためだろうが
さりげなく社交の場を提供できる空間は
やっぱり必要なのだと私には思える。


またそうした場ほど
優雅に品よくたち振る舞える女性だからこそ
女性性が生かせる職場ではないか、とも。


私は体を壊したが
健康な人でも歳をとるとは
若いときとはまた違った意味で
やりがいや希望が必要となる。
誰しもが必要とされる中で生かされる環境こそ
私たち人間が死ぬまで希求する業のように
感じるのは私だけだろうか。


経営者の条件は金を生むだけではない。
人を育て、
いかに人を残すかが鍵となると
毎日のように耳にする。
それらは世の中に出回っている経営の参考書とは
相反する内容であったりもするが
そうしたものに踊らせることなく
しかも時代を瞬時に嗅ぎ取り
人々が求めているものを提供する。


経営者たちの話は生きた学問だ。