風の生まれる場所

海藍のような言ノ葉の世界

空や雲や海や星や月や風との語らいを
言葉へ置き換えていけたら・・・

俺たちの関係

2011年04月26日 05時08分54秒 | エッセイ、随筆、小説


たとえばさ、俺たちの関係もこれで終わるということなのかな?
俺たち、仲良くしていたじゃん。
意見や考え方は違うけど、
ぶつかり合いながらも、仲良くしていけると思うのだけど。


深夜の学習室。
障がい者スポーツのマネージャーを辞めるとの意向を部長に伝えると、
俺たち…との言葉があちらこちらに氾濫する答弁が
あまりにも痛々しくて、わたしの方が妙な罪悪感に苛まれる。


わたしの気持ちが変化しない理由は
やはりこの人の、他人任せなものの考え方や
この人の、無責任な態度や行動、言動に触れてきた経緯というものがあって、
結果、わたしの体調が緩やかに悪化したことへの戒めの意味合いが強い。
いくつもの猶予もチャンスも与えたというのに、
それをことごとく、踏みにじってきたのはあなただった。
しかも、泥々に汚れた靴を履いて、何日も洗濯をしていない悪臭が漂う服、
そのような格好をしてきたというのではなく、そのような気持ちで話し合いに臨んだことが
そもそもの過ちだった。


真剣さを感受でき、物事の先を読み抜ける人は稀有な存在ではない。
物事や関係を治めたいと思うなら、
まずは空間や時間への敬意を忘れてはならない。
なぜなら、そこに味方してもらえなければ、
決裂することが目に見えているからよ。
すべてにおいて、大切にしていること、優先順位が相違する。
だから、信用を積み重ねることができないといいかけてやめた。


もとはといえば、震災に端を発する。
体調の悪化するわたし、食糧難で食べ物を探し回る家族への対応、
そして、共通の友人には何人かの被災者がいた。
決定的だったのは、絶望する友人に対する反応だろう。
津波で家が流され、たくさんの友達をさらわれ、
涙を堪え、身体が小刻みに震える友人を目にしたとき、
わたしは頑張れとは言えなかった。
大丈夫、なんとかなるなどとは口が裂けても言えなかった。


励ましの言葉が残酷にしか響かない状況の下では、
その哀しみに共に寄り添うことが精一杯なことを知った。
そして、いくつかの支援を申し出ることにすら怖さを感じたのは、
自問は容赦なく、わたしという人間の光も影も映しだしたからだろう。
偽善なのか、自己満足のためだからか、
違うとわかっていながらも、
その怖さに押し潰れそうになりながらも護るために必死だったものは、
友人との関係だった。
友人の人生に立ち入り過ぎず、関係に根を残さない支援の在り方は、
いまでもわたしを解放しようとはしない重く大切なテーマだ。


俺たちの関係とは一体なにを指しているのだろう。
もし、大切に考えてくれているのであれば、
わたしは怖さを知って欲しかったとでもいうだろうか。
一言動が、行動が、あなたの信用にもなれば、その逆にもなりかねないことを。
別れを切り出す恋人を呆然と見つめるように
潤んだた瞳の中に自分の姿をみつけたとしても、
わたしの心が動くことはない。
深夜の学習室、時間だけがただ過ぎていく。



ひとりごと

2011年04月25日 04時58分58秒 | エッセイ、随筆、小説





わたしね、
世の中に信じていないことがひとつだけあるの。
それは、あなたの「大丈夫」という言葉。

まだお若くて、
いくら苦労して生きてきたからといっても、
もう少し、ひとに甘えてもいいと思うのよ。
きっとあなたは、
ひとの世話にはなりたくないと言って
わたしの申し出を一喝するのは
目に見えているのだけれど。

あなたとの最初の出会いは四ヶ月前、
関東人、
特に東京の人間が嫌いだと言われた。
あなたの出身は福島の、あの原発がある地域で、
なぜ、東京のために俺たちが犠牲になるのか?
わたしにはあなたが言わんとしていたことが
まったく理解できなかった。
あのときは、まだ。

それからほどなくして
東北地方関東沖大地震があった。
ようやく建てたというあなたの居場所、
あなたのご家族が住む家は津波がさらってしまったという。
そこから、この国が抱えていた原発の問題や
原発労働者、原発ジプシーの存在を知り、
あなたが嫌いだと言った東京人の意味理由が
すこしずつ明らかになっていった。

だからかしら、わたしがあなたにかかわりたいと思うのは
偽善や自己満足ではなく、あなたへの謝罪のため。
それを自己満足というのよね。

わたしね、世の中に信じていないことがひとつだけあるの。
それは、あなたの「大丈夫」という言葉。
あなたがいつか大丈夫だと言わなくて済むために、
わたしは、考えることを、想像することを、行動することを、
放棄しないことを、あなたと約束したい。




空の鎮め方

2011年04月24日 05時55分12秒 | エッセイ、随筆、小説


空が泣いている。
怒っているのか、悲しんでいるのか、
いや、呆れているのだろう、人間のやることなすことに。


震災後、体調を崩した。
被災した友達を支援していた折、支援の難しさに直面した。
ひとを救う、ひとを幸せにする、ひとを勇気つける怖さを知ることとなる。
絶望している友人を目前に、わたしは寄り添うことしかできなかった。
そして、自分の無力さ、不甲斐なさが露呈したことで、
それを受容するかのごとく、体調を崩して、
毎日、空ばかり眺めていた。


いままでとどこか違う空の青色、
雲には消した炭を混ぜ込んだように、軽さがなくなってしまった。


空が語りかけてくれる。
わたしたちがどこへ向かおうとしているか、と。
テレビも新聞も本当のことを言わないのは、
できるだけ賠償対象者または地域を少なくしたいためと、
今回の出来事から原発反対へ世論が舵をきることは困るためだろう。
たどり着く先には必ず利権や莫大な金が蠢いていて、
先の大戦や水俣病の問題から、日本がなにも変化していないことを示唆する。
わたしたちひとりひとりの小さくてかけがえのない幸せを奪う権利だれにもない。
国家にも利権複合体にも、だれにもあるはずがない。
けれど、現実を眺めてみたとき、
空が怒ったり、悲しんだり、呆れてしまう人間の仕業が
空の色に投影されているような。