集会前に何時間も前から長蛇の列をつくる支持者(8月30日、ペンシルベニア州ジョンズタウン)
・筆者が4年ぶりにトランプ氏を現地で取材
・支持者の熱気変わらずも、演説中盤には目立つ空席
・同じ話題繰り返すトランプ氏、隠しきれない「老い」
ドナルド・トランプといえども年齢には勝てないのか。4年ぶりに現地で取材して感じたのは、78歳になって3度目の米大統領選を戦う前大統領の「老い」だった。
筆者はトランプ政権が発足した2017年から首都ワシントンに駐在し、トランプ氏の集会にも何度も足を運んだ。22年に東京に帰任したため、いまのトランプ氏は分からない。米国に出張する機会があり、久しぶりに選挙集会を訪問してみた。
USスチールの本社がある東部ペンシルベニア州ピッツバーグから車で2時間。8月30日の朝、ジョンズタウンという小さな町に到着すると、会場のアイスホッケー施設の周辺には既に長蛇の列ができていた。
演説開始は午後4時半。日差しを浴びながら何時間も並ぶ支持者の熱意は以前とまったく変わらない。支持者は高齢者が多い。
ある女性は足が痛くなって立てなくなり、病院に運ばれていった。過去の集会でも見た光景だ。
トランプ氏が大統領選に初当選して8年がたつ。なぜ彼のファンを続けるのか。地元出身のケビンさんに聞くと「民主党も共和党も政治家はカネで動くので信頼できない。そんなときに現れたトランプは私の最後の希望なんだ」と熱く語ってくれた。
相手候補への個人攻撃を繰り返すスタイルについても「トランプは確かにいじめっ子だが、私たちのために戦ってくれるいじめっ子だ」と肩を持つ。
トランプ陣営は次の第47代大統領への就任を意味する「47」のプラカードを聴衆に持たせていた
(8月30日、ペンシルベニア州ジョンズタウン)
おなじみの愛国歌に乗ってトランプ氏がステージに現れる。「We Love You!」。コンサートの始まりのように熱狂した客の歓声から変わらぬトランプ人気が伝わってくる。
異変に気づいたのは1時間半の演説が中盤にさしかかったころだ。退屈そうにあくびをする支持者たち。席を立って帰途につく人が増え、空席がかなり目立っていた。
演説後半、聴衆が続々と帰り空席が目立つように(8月30日、ペンシルベニア州ジョンズタウン)
それもそのはずだ。トランプ氏の話しぶりは思いのほか単調で、話があちこちに飛ぶ。
もともとよく脱線する人ではあるが、過去の演説には最後まで聴衆を飽きさせないストーリーの起承転結があった。
この日は同じ話題を何度も繰り返した。「不法移民は凶悪犯だ!」と攻撃すると会場は大盛り上がり。だが2回目、3回目となると観客の受けも悪くなってくる。
この日一番大きな歓声が上がったのは、民主の副大統領候補ティム・ウォルズ氏を「タンポン・ティム」とからかった場面だ。
同氏は知事として学校に生理用品の提供を義務付けた。客席を見渡すと苦々しい顔をする女性が少なくなかった。
1時間半、独演する体力はさすがだ。それでも話の流れや声の張りには年齢を感じざるを得なかった。
筆者がトランプ氏を初めて現地取材した17年1月の時点では70歳。20年の選挙でも変わらずパワフルだった。当時のイメージが強く残っているからか、変化にばかり目がいった。
米国出張中に、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれたハリス副大統領の集会にも出向いた。大型スポーツ施設に1万5000人。筆者が同氏を取材した19年は予備選だったこともあり、演説会場のレストランに聴衆は数十人だった。ここでも時の流れを感じた。
(ペンシルベニア州ジョンズタウンで、鳳山太成)
【関連記事】
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
トランプの話が長くなっているのは、共和党大会の演説でも明らかだったが、おそらくポイントは、みんなトランプの話が聞きたくて集まっているというよりも、トランプ以外の選択肢が考えられないから、結局トランプを支持するという話になっているのだと理解している。
トランプへの飽きは確実にあるが、それでも何かしてくれるという希望を生み出す限り、トランプ支持はなくならないのだろう。その希望がはかないものだとみんなわかっていても。
-
ひとこと解説
81歳のバイデン大統領から59歳のハリス副大統領へと民主党の大統領候補が差し替えになったことにより、78歳というトランプ前大統領の年齢がいきなり弱点に変わった。
「異変に気づいたのは1時間半の演説が中盤にさしかかったころ」「退屈そうにあくびをする支持者たち。
席を立って帰途につく人が増え、空席がかなり目立っていた」。
ハリス氏との重要なテレビ討論会を前に、非常に気になる現地ルポである。ファクトに基づかない発言が演説で多いのはトランプ氏の以前からの特徴であり、特に数字を誇張して言うケースがあるように思うのが、仮に今回の討論会で言い間違いや記憶違いが目立つようだと、トランプ氏の大きな失点になり得る。
<button class="container_cvv0zb2" data-comment-reaction="true" data-comment-id="45677" data-rn-track="think-article-good-button" data-rn-track-value="{"comment_id":45677,"expert_id":"EVP01113","order":2}">27</button>
Lex Fridmanのポッドキャストに登場した彼の話を聴いたときも、筆者の方と同じことを感じました。
78歳でこれだけ話せるのには瞠目しますが、それでも人は歳をとるという当たり前のことを感じさせられた次第です。
2024年に実施されるアメリカ大統領選挙に向け、ハリス副大統領やトランプ氏などの候補者、各政党がどのような動きをしているかについてのニュースを一覧できます。データや分析に基づいて米国の政治、経済、社会などに走る分断の実相に迫りつつ、大統領選の行方を追いかけます。
続きを読む