22〜23日の日程で「未来サミット」が開かれている=AP
【ニューヨーク=三島大地、佐藤璃子】
米ニューヨークの国連本部で22日、各国の首脳級が国際課題を議論する「未来サミット」が開幕した。
開幕にあたり、安全保障理事会の改革の必要性などを盛り込んだ「未来のための協定」を加盟国の総意として採択したが、気候変動対策や核軍縮などを巡る議論では各国の利害対立も顕在化した。
サミットは22〜23日の日程で開かれている。協定には安保理改革などグローバルガバナンス(多国間協調)の立て直し、持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた途上国支援、気候変動対応などが盛り込まれた。
採択にあたり、ロシアが「本質的にこの文章に満足している人は誰もいない」などとして修正案を提案した。北朝鮮など7カ国が賛成したが、反対多数で採択には至らなかった。
グテレス事務総長はサミットの冒頭、「私たちは、多国間システムを危機の淵から救うためにここにいる。
そのためには、合意だけでなく行動が必要だ」と訴えた。安保理について「時代遅れで、その権威は失墜しつつある。
構成と作業方法を改革しない限り、いずれは信頼性を完全に失うことになる」と早期の改革を求めた。
パレスチナ自治区ガザやウクライナでの停戦に向け安保理が決定打を示せないでいることを念頭に、協定には「緊急の(安保理)改革が必要」と明記した。
常任理事国が持つ拒否権についても、その範囲や使用を制限する議論の必要性を訴えた。
一方、気候変動対策や核軍縮などでは加盟国の利害が真っ向から対立した。シンクタンク国際危機グループのリチャード・ガウエン氏は「多くが既存の議論を蒸し返しただけの内容だ。
気候変動に関する文言は産油国の働きかけで想定より弱められている」と指摘する。
「悲観的なことは言いたくないが、残念の一言だ。多くのことをやればやろうとするほど、なにも実現できなくなる」(欧州の外交官)との声も上がる。
協定を評価する向きもある。「進歩は常に段階的なものであり、一歩でも前進する方が、何もしないよりはましだ」とカーネギー国際平和基金のスチュワート・パトリック氏は話す。
協定がまとまるかは直前まで不透明で、採択が延期されるとの見方もあった。協定がまとまり、多国間システムの改善に向け一定の道筋を示した格好だが、多国間で利害調整を図ることの難しさも浮き彫りにした。
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未来サミットで「未来のための協定」が採択されたが、少なくとも安保理改革については基本的な主張の繰り返しで、政府間交渉に任された形になっている。
2005年のワールドサミットに至る過程では、当時のアナン事務総長が「In Larger Freedom」報告書で安保理改革のための二つの案を提示したが、各国の思惑でいずれも支持されなかった。
政府間交渉が始まってから既に15年経つが、改革の目処は立っていない。
米国はアフリカに二つの議席を付与することを含め常任理事国を増やす案を出しているが、拒否権なしである。
拒否権のあり方には新たな思考が必要でまだ時間がかかる。当面非常任理事国の改革から始めてはどうか。