トランプ米政権の関税政策を受け、日本企業も対応に追われている。
発動が1カ月延期となったメキシコには自動車などの生産拠点がある。発動した中国からも電気機器などが米国に輸出されており、生産拠点の見直しなどの検討を始めた。
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三菱電機は空調製品の一部をメキシコで組み立てて、米国に輸出している。増田邦昭最高財務責任者(CFO)は4日、「米国内で生産された他社製品に需要が移る可能性があり、影響額は小さくない」と話した。
課税対象国から米国に製品や部品、消費財を輸出する日本企業にとって、関税は追加コストとなる。
みずほ証券の試算では中国からの輸入品に追加で10%、メキシコとカナダからは25%の関税がかかった場合、日本企業の海外現地法人などに中国で486億円、中南米で7995億円、カナダで6822億円の関税が増える。
輸送機械や木材・紙パルプ、金属製品、電気機械などで影響を受ける。
大和総研の岸川和馬エコノミストは「関税を回避しなければ、設備投資額を超える負担が毎年新たに発生することになる」と指摘する。対応策となるのが、米国内への生産移管や一時的な増産だ。
メキシコや米国に工場を持つニデックの岸田光哉社長は「顧客に求められれば、工場の設備をメキシコから米国内に移すことなども柔軟に検討していく」と話す。
三井物産の重田哲也CFOは「(メキシコとカナダへの関税で)決定と取り消しを繰り返すのは第1次政権でも繰り返されたが、今回のスピードには驚いている」と警戒する。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは「先行きの不確実性が多いなか、思い切った経営判断は難しい」との見方を示す。
任天堂は主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」について、中国で生産した製品の一部を米国に輸出している。
古川俊太郎社長は4日、「追加関税による一定の影響は出るだろう。今後について注視し適切な対応を検討していく」と話した。
ただ対中追加関税については、「日本企業にとって打撃は小さい」(みずほ証券の小林俊介チーフエコノミスト)との見方もある。
中国の人件費上昇や第1次政権時の米中対立を受けて、すでにベトナムやタイなどへの生産移管が進んでいるためだ。