鴻海グループの訊芯科技によるCPOの技術展示
台湾の半導体業界で電気処理を光に置き換える「光電融合」技術の導入機運が高まっている。
人工知能(AI)向けデータセンターの消費電力の低減を狙う。半導体世界大手の台湾積体電路製造(TSMC)などが実用化に取り組む。
「量産まで1年から1年半かかるだろう。初期の成果は非常に良好で、顧客はとても満足している」。
TSMCの魏哲家・董事長兼最高経営責任者(CEO)は1月中旬に開いた2024年10〜12月期の決算説明会で、光電融合分野の新技術「コ・パッケージド・オプティクス(CPO)」の進捗を問う質問にこう答えた。
CPOは通常は半導体パッケージの外側に配置される光学部品を、半導体チップと同じ基板上に組み込んで同じパッケージに収める手法を指す。
両者を近くに配置してエネルギーのロスを減らし、処理能力のアップにつなげる。
応用先と期待されるのがAI向けのデータセンターだ。TSMCは24年春の技術発表会でCPOの開発方針を公表。
チップの発熱やコスト上の課題も指摘されるが、生成AI市場の急拡大を受けて早期導入に期待が高まっている。
AI半導体大手の米エヌビディアが有力顧客と見込まれる。同社のジェンスン・ファンCEOは1月中旬、訪問先の台北で記者団にTSMCとの同分野の協力を明かしたうえで、成果が出るまで数年かかるとの見通しを示した。
TSMCは回路微細化や先端パッケージングといった主要技術で他社に先行し、世界のAI半導体生産をほぼ総取りしてきた。光電融合は日米や中国勢も開発に力を入れており、競争力の維持に欠かせない技術領域となりそうだ。
CPO技術は米インテルや米IBMなどが先行するとされてきた。台湾調査会社トレンドフォースは「TSMCがエヌビディアと連携して追い上げている」と分析。現
時点で「市場に絶対的なリーダーはない」としたうえで、今後は関連する要素技術をいかに組み合わせるかが勝負の鍵を握るとみる。
台湾は半導体からサーバーまでAI関連の広範なサプライチェーン(供給網)を持つ。TSMCと歩調を合わせるように他の企業も関連分野に参入する。
台湾電機大手、鴻海(ホンハイ)精密工業はグループの訊芯科技控股がCPOのパッケージング技術を開発する。
同社は鴻海半導体部門の戦略トップを務め、過去にはTSMCや中国・中芯国際集成電路製造(SMIC)の幹部を歴任した蔣尚義氏が率いる。
台湾半導体設計・開発大手の奇景光電(ハイマックス・テクノロジーズ)はCPO向け光学レンズのサプライヤーとして注目される。24年9月には台湾企業が主導して半導体の国際業界団体SEMIの傘下に光電融合の団体も立ち上がった。
SEMIは光電融合の30年の市場規模を78億6000万ドル(約1兆2000億円)と予測する。AI半導体の次の商機をとらえるべく、一丸で開発に動く台湾勢のスピード感が光る。
(台北=龍元秀明)
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日経記事2025.2.4より引用