海外の格付け会社は減税論が先行している現状を懸念する
日銀が24日に政策金利の引き上げを決め、長期金利は一段と上昇に向かう可能性がある。
野党などが減税を求めるなか、海外の大手格付け会社からは国の財政悪化や金利急騰のリスクを指摘する声が出始めた。日本国債の格付けは主要7カ国(G7)でイタリアに次いで低い。
すぐに格下げになる可能性は乏しいが、ひとたび現実になれば邦銀や日本企業の資金調達コストが増し、経済活動に影響が及ぶことになる。
「控除額を引き上げることで生じる税収減少は財政再建と債務負担の安定化という政府の目標達成を妨げる可能性が高い」。
米格付け大手ムーディーズ・レーティングスで日本国債を担当するクリスチャン・ド・グズマン氏は2024年10月の衆院選後の不安定な政治情勢に懸念を示す。
少子高齢化の加速や潜在成長率の低迷といった構造問題が深刻であるにもかかわらず、所得税の非課税枠の引き上げなど減税や歳出拡大の主張が勢いを増している。
こうした状況は「現状の日本政府の財政状況に対する我々の弱い評価がより裏付けられることになるだろう」と指摘する。
他の大手格付け会社の担当者も同様の見方を示す。S&Pグローバル・レーティングで日本国債の格付けを担当するレイン・イン氏は「(政治情勢の変化で)歳出拡大の要求が一段と高まり、財政再建が遅れる可能性がある」と話す。
フィッチ・レーティングスのクリスヤニス・クルスティン氏も「より顕著な財政緩和のリスクが高まっている」と警鐘を鳴らす。
日本国債の格付けはシングルAプラス(S&Pの長期発行体格付け)と、今もG7の中でイタリア(トリプルB)に次いで低い水準だ。
主因は主要国で最悪の財政状態で、国際通貨基金(IMF)によると、25年の国内総生産(GDP)に対する政府総債務の比率は249%に達する見通しだ。米国(124%)や英国(104%)、ドイツ(62%)などと比べて著しく高い。
25年度予算案で国債の返済や利払いにあてる国債費は28兆円超に達し、社会保障費(約38兆円)に次ぐ歳出項目となっている。
想定金利は2.0%と直近の新発10年物国債の利回り(1.2%程度)より高く設定しているが、あるメガバンクの幹部は「通常国会の予算案審議で財政悪化の方向性が明確になれば、国債の格下げにつながりかねない」と危機感を募らせる。
財務省が与党に示した試算によると、28年度に10年債の金利が2.5%に上がると想定すると、国債費は35.3兆円と25年度予算案から7.1兆円ほど膨らむ。
格下げによって金利の上昇スピードが想定より速まれば、国債費の増加のペースも速くなる。
英国では22年秋に当時のトラス政権が財源の裏付けがないまま大型減税を公表し、英国債が急落する「トラス・ショック」が発生した。
日本の財政状況は英国よりも厳しく、「日本版トラス・ショック」は絵空事ではない。
国の格付けの引き下げは、日本の銀行や企業の格下げにつながる。企業格付けにはその国の政府の格付けを上回ることができない「ソブリンシーリング(天井)」という考え方があるためだ。
格下げは資金調達コストの増加に直結するだけでなく、海外の銀行が米ドルなど外貨の提供を渋り、邦銀が市場で外貨を調達できなくなる事態を引き起こす恐れもある。
全国銀行協会の福留朗裕会長(三井住友銀行頭取)は24年12月の記者会見で「(確率が極めて低い)テールリスクではあるが、将来発生したら最も困ることの一つが国債の格下げだ」と率直に語った。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGのS&Pの長期発行体格付けはいずれもシングルAマイナスだ。格付けが1段階下がれば、トリプルBプラスとなる。シングルA格以上を投資対象とする欧米の機関投資家も多く、格下げが現実になれば投資家が離れていく可能性がある。
あおぞら銀行やSBI新生銀行は現在トリプルBで、2段階の格下げで投機的水準とされるダブルB格に落ちる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの廉了主席研究員によると、邦銀は24年6月末時点で外国銀行から2057億ドル(約32兆円)相当の外貨を調達している。調達する際の市場金利が1%上がるだけで、利払い費は3000億円程度増える計算だ。
ある大手行は実際に格下げに向けた動きが明確になった際には、長期固定金利の外貨調達の積み増しなどに素早く動くことを念頭に置いている。
邦銀はここ数年、海外事業を拡大しており、外貨の調達が難しくなった場合の事業への影響度合いは以前より増している。
影響は海外で事業展開する日本企業にも及ぶ。推計では、日本企業(銀行除く)は24年9月末時点で100兆円程度の外貨を調達している。
仮に調達金利が1%上がれば、調達コストは約1兆円増える。格付けが下がると資金調達が難しくなり、それがさらに格付けの悪化を招く悪循環に陥る場合もあり、影響が想定外に大きくなる恐れもある。
足元では国債の最大の保有者である日銀が保有国債の圧縮を始めている。
24年7月まで月間6兆円程度だった買い入れ額を26年1〜3月期には3兆円程度に減らす計画だ。これまで国債の半分程度を保有していた日銀が金利上昇を事実上、抑制する役割を果たしていたが、今後は日銀に代わる国債の買い手を確保していく必要がある。
それには財政の改善や国債の格付け維持が前提となる。
24日の日銀の利上げは「新規に発行する国債の利払い費や政府の資金調達コストを増やす」(S&P)ことにつながる。
日銀がさらなる利上げを視野に入れていることを踏まえれば、財政再建の取り組みに躊躇(ちゅうちょ)している余裕はない。
日経記事2025.1.26より引用
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