働く人が過去最大となった。総務省が31日公表した2024年の就業者数は6781万人と前年から34万人増え、比較可能な1953年以降で最も多い。
女性やシニア層の就労が広がり、正規雇用が増加した。余剰労働力は乏しい。
日本経済は生産性を高めながら、どう人手不足に対応するかという課題に直面する。
就業者とは15歳以上の人のうち、仕事を持って働いている人や一時的に休職している人を指す。
就業者数は景気回復などを反映し、2013年以降、女性やシニアを中心に増加してきたが、新型コロナウイルスの影響で20年、前年比で40万人減少した。
その後は緩やかに回復が続き、24年は過去最高だった19年の水準を上回った。
15歳以上の人口に占める就業者の割合を示す就業率も24年は61.7%と、前年から0.5ポイント拡大した。
女性の就業者数は前年比で31万人多い3082万人と最大だった。
就業率でみると男性は直近10年間で1.9ポイントの上昇にとどまったが、女性は6.6ポイント上昇した。
高齢者の就業率も上昇傾向にあり、65歳以上は前年比で0.5ポイント高い25.7%だった。
雇用形態別にみると就業者のうち正規雇用は39万人増と大きく増えたが、パートやアルバイト、契約社員などの非正規雇用は2万人増だった。
より良い雇用条件を示さなければ、人材が集められない状況が広がっている可能性がある。
リクルートの高田悠矢・特任研究員は「企業側の人材ニーズが高まるなか、これまではパートなどで働いていた女性が正社員となっている」と指摘する。
企業側の人手不足感は強い。
日銀がまとめた24年12月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、雇用が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」を引いた雇用人員判断指数(DI)は全規模・全産業でマイナス36、先行きはマイナス41だった。
厚生労働省によると介護や建設分野では有効求人倍率が4倍を超える職種もある一方、事務系は1倍を下回る。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの藤田隼平・副主任研究員は「求人と求職者のミスマッチが起きている。女性や高齢者は働く時間が短く、想定よりも労働力の確保につながっていないという側面もある」と語る。
人手不足を背景に働く人が増えている
働く人の増加は経済成長にプラスだ。企業の生産やサービスの供給が増える上、収入増が消費拡大につながり需要が伸びる。
社会保険への加入者が増えることで、年金や健康保険の財政的な安定性が高まる。
少子高齢化の進展で15歳以上人口は10年代に減少が始まった。女性や高齢者の拡大による就業者の増加には限界がある。
労働政策研究・研修機構の推計によると、40年時点の就業者数は最も低いシナリオで5768万人まで落ち込む。
石破茂政権は24年12月に示した地方創生に対する基本的な考え方で「人口規模が縮小しても経済成長し、社会を機能させる適応策を講じていく」と明記した。
余剰労働力がなくなる「ルイスの転換点」が目前に迫るなか、今のうちから人工知能(AI)などの技術を活用した生産性の向上などで働き手の減少に備える必要がある。
ひとこと解説
記事中で、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの藤田隼平・副主任研究員も指摘しているとおり、人口減のなかでも就業者は増えていますが、その中身はパートなど非正規比率が高まっており、就労者全体の総労働時間でみると減少傾向が進んでおり、手放しで喜べる状況ではありません。
労働供給制約社会に立ち向かうには、就業人口ではなく、就業時間の動向に視点を変えて対策を考えるべきでしょう。
「女性だから」「シニアだから」と本人の希望に反してパートなどの短時間勤務しか就けない求人がまだあります。
フルタイム勤務を強制するのも問題ですが、能力とやる気に応じて就労時間を自由に選べる環境が望まれます。
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日経記事2025.1.31より引用