厚生労働省は3日、公的年金に関する長期的な見通しを示す5年に1度の「財政検証結果」を公表した。
一定の経済成長が続けば将来の給付水準低下は現在の6%減にとどまり、成長率がほぼ横ばいなら2割近く下がる結果が出た。
いずれのケースも前回の2019年に比べて低下率が縮小する傾向がみられた。高齢者と女性の就労参加が進んだことや、株高による積立金の増加が寄与した。
今回の財政検証は人口推計や経済状況などの前提が異なる4つのケースについて、年金財政の健全性や給付水準がどう変化するかを試算した。
給付水準については会社員の夫と専業主婦の妻の世帯が受け取る「モデル年金」を中心に検証した。
年金制度は少子高齢化が加速しても長期的にわたって給付できるように、当面の支給額を抑える「マクロ経済スライド」という仕組みがある。
財政検証ではモデル年金が現役世代男性の平均手取り収入の何%にあたるかを示す「所得代替率」という指標で、将来の年金水準がどこまで下がるかを確認した。
実質経済成長率が1.1%の「成長型経済移行・継続ケース(成長ケース)」の場合、所得代替率は37年度に57.6%となり、2024年度の61.2%から6%低下した。
女性や高齢者などの労働参加が一段と進むという前提条件を置いた。
成長率が1.6%の「高成長実現ケース(高成長ケース)」の所得代替率は39年度に同7%減の56.9%となる。成長ケースの方が前提となる賃金上昇率を低く設定している分、「賃金を上回る実質的な運用利回り(スプレッド)」が大きくなり給付水準の下げ幅が小さい。
成長率をマイナス0.1%に設定した「過去30年投影ケース(横ばいケース)」は給付水準の低下が57年度まで続き、所得代替率は50.4%と2割近く下がる。