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為替介入観測、なお続く円安基調 日銀に利上げ圧力

2024-05-03 06:38:45 | 日本経済・金融・給料・年金制度


         鈴木財務相㊧と日銀の植田総裁

 

1日のニューヨーク外国為替市場で円相場が一時1ドル=153円台まで上昇し、市場で日本政府と日銀が再び円買い介入に踏み切ったとの見方が強まっている。

ただ、その後一時1ドル=156円台まで戻すなど、介入効果は限定的にとどまる。円安の主因である日米の金利差を解消するため、日銀に早期利上げを求める圧力が今後強まる見通しで、日銀は難しい立場に置かれている。

 

 

財務省幹部は2日、「相場の水準や変動についてはコメントしない」と語り、為替介入の有無について明言しなかった。

市場では4月29日に続き、米国時間の1日に政府・日銀が2度目の円買い介入に踏み切ったという見方が多い。

 

元財務官でみずほリサーチ&テクノロジーズ理事長の中尾武彦氏は「過度な円安が日本の所得・賃金や財・サービスを安くしてしまっている。

企業も安く買われてしまうし、国民生活にも負担だ」と指摘する。「介入を通じて行き過ぎた円安に対抗する必要があった」と政府・日銀の狙いを分析する。

 

JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフ為替ストラテジストは「財務省は為替介入しても国際的に黙認される『過度な変動』と認識したとみられる」と話す。

2日の介入観測に関しては「米連邦公開市場委員会(FOMC)にかけて新たな材料があったわけではない。4月29日からの一連の介入の一つだろう」と述べた。棚瀬氏は3月まで財務省で外貨準備の運用に関わる「資金管理専門官」を務めていた。

 

この1週間の円安加速の起点は、4月26日の日銀の金融政策決定会合後の植田和男総裁の発言だった。記者会見で円安について「今のところ基調的な物価上昇率への大きな影響はない」などと言及。

円安を理由にした追加的な利上げの時期は遠いとの見方が市場に広がり、日本が祝日の29日の外国為替市場で一時1ドル=160円台と約34年ぶりの円安・ドル高水準を付けた。

 

 

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財務省は最近の円安進行局面で、一貫して「しかるべく対応する」(神田真人財務官)との姿勢を示し、市場を強くけん制してきた。

実際に介入と見られる動きも既に2度顕在化している。2022年9〜10月には3度円買い介入を実施し、計9兆円超を投入したが、今回はそれ以上の規模となる可能性も浮上する。

 

ただ、円買い介入は時間稼ぎの側面も強い。

足元の円安の構造を解消するには日米の金利差が縮まる必要があるが、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が1日、インフレ抑制への自信を得るまで「まだ時間がかかりそうだ」と語ったことで、米国の利下げ開始時期は遠のいている。そのため、市場の関心は日銀の追加利上げの動向に向かっている。

 

 

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日銀は3月の金融政策決定会合で異次元緩和を解除した。

2日に公表した3月会合の議事要旨では、今後の経済情勢次第で「物価が上振れることもありうる」と複数の政策委員が発言したことが明らかになった。

 

ある委員はそうした状況に「柔軟に対応しやすくなる」として追加利上げを示唆しており、次回の6月13〜14日や、その次の7月30〜31日の決定会合での対応が焦点となる。

ただ、6月や7月の会合での追加利上げのハードルは低くない。まず春季労使交渉による賃上げの結果が毎月勤労統計などに反映されるのは夏以降となる可能性が高い。

 

そのため、日銀内では6〜7月時点では、利上げを判断するのに十分なデータがそろわないといった見方が上がっている。

日銀内では「日米金利差は経済の強さの違いを表したものであり、円安を止めるための利上げは筋違いだ」(関係者)との意見も根強い。

 

植田総裁が4月26日の会見で説明したように、日銀は円安が基調的な物価に影響を及ぼしているかという点を重視している。

短期的な為替相場の動きから距離を置き、通貨防衛を目的とした利上げ圧力をけん制する見方が支配的だ。

 

3月のマイナス金利政策解除の時よりも、次回の利上げは住宅ローン金利や中小企業向け貸出金利への影響も大きくなる見通しだ。

消費者や企業の実際の「痛み」が伴う分、政治や世論からの風圧も強まる可能性があり、決断は容易ではない。

 

歴史を遡れば通貨安に追い込まれ、中央銀行が利上げを迫られたケースは新興国だけでなく、先進国でもある。

英国では1976年、石油ショックに伴うスタグフレーションと財政赤字が続き、ポンドが75年3月から76年11月にかけて35%以上減価した。通貨防衛で外貨準備が枯渇し、英国政府は国際通貨基金(IMF)に緊急支援を要請した。

 

イングランド銀行(BOE)は76年3月には9%だった政策金利を、10月までに15%に引き上げた。

英国はIMFからの支援の代償として、IMFが求める抜本的な財政改革を受け入れた。通貨防衛の目的が強い利上げは、大きな副作用を伴うリスクがある。

 

BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は日銀の金融政策と為替の状況について「長期国債の大量購入を修正しなければ、短期金利をいくら引き上げても円安傾向が続く可能性がある」として、通貨防衛のための利上げを懐疑的にみる。

行き過ぎた円安に対抗する政府・日銀の手段は限られていたり、デメリットも伴うものであったりするため、政府・日銀にとって対応に難儀する局面が続くことになる。

 

 

 
 
 
 
日経記事2024.05.03より引用
 
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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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小野亮
みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査部 プリンシパル

別の視点

円安を含む生活費の負担は世帯平均で年間10万円前後の増加、というのが弊社エコノミストの分析。

分析時点からさらに円安が進行しており、家計にはさらに厳しい風が吹きそうです。

一方、最近のニュースですっかり忘れられがちなのが、今年の賃上げによる収入増。

こちらの試算はかつての同僚エコノミストによるものですが、“典型的”会社員の場合、可処分所得ベースで年間20万円強の増加です。

賃上げの果実が円安によって目減りすることは確実なのでしょうが、それでもなお果実の半分以上は残る。

そう思うと、少しは気持ちを楽にしてGWを楽しめるかもしれません。

 


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