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激動の2025年、投資戦略はどうすべきか。各分野の専門家や金融関係者への取材から探る特集。今回は個人投資家に人気の投資信託について、投信の専門家の意見を元に検証する。
投資信託として圧倒的な人気を誇るのが、全世界株式指数「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(通称オルカン)」と米S&P500種株価指数に連動する商品だ
三菱UFJアセットマネジメント「eMAXIS Slim」シリーズで2指数に連動する2本の投信は、毎月の資金流入額や残高で不動のトップ2だ。
プロも高く評価する。「世界全体の株式に低コストで分散投資できるオルカンは、長期投資の王道として有力だ」(QUICK資産運用研究所の石井輝尚さん)
S&P500は米国株だけだが、主要銘柄はグローバル企業ばかりで、実質的に世界経済全体に投資できる。「オルカンとS&P500の値動きは極めて近く、どちらを持ってもほぼ同じ。逆に言えば、両方を持っても資産分散としてはほぼ意味がない」(石井さん)
偏りを是正する組み合わせ
とはいえ、オルカンとS&P500に「全く欠点がない」わけでもない。懸念点の一つは、組み入れ銘柄の偏りだ。
オルカンは全世界に分散と言いつつ、約65%が米国株。S&P500も一部銘柄の比率が高く、「M7」と呼ばれる主要なテック株7社で31%を超える。
偏りの理由は、2指数が時価総額に応じて比率を決めることだ。値上がりして比率の高まった銘柄も、比率の調整はせずに保有し続ける。
過去10年以上、米国株優位の時代が続き、中でも大型テック株の値上がりが突出していたことが現在の比率につながった。
「今後も米国株優位が続くと考えるならオルカンやS&P500で問題ない。長く運用する中で、新興国株や日本株が優位な場面も来ると想定するなら、自分でその比率を調整するのも手だ」(松井証券のファンドアナリスト、海老澤界さん)
例えば日本を除く先進国株の指数『MSCIコクサイ』連動型投信と、日本株や新興国株の投信を別に持てば、米国への偏りを是正できる。
「新興国も中国まで全てではなく、インドなど有望な国に絞る手もある。日本や新興国は、インデックス型より成績のいいアクティブ型投信も多い」(同氏)
オルカンやS&P500をベースとしつつ、値動きが異なる投信も併せて持つことで、資産全体のリスクを下げることもできる。
例えば高配当株や連続増配株に絞った投信だ。長期間、連続増配中の銘柄は長期リターンが高い傾向があり、しかもテック株とは値動きが異なる。
「テック株中心のS&P500などと組み合わせれば分散効果が高い。『Tracers S&P500配当貴族インデックス(米国株式)』は中でも信託報酬が低い」(石井さん)
資産に金が含まれる投信も選択肢だ。例えば米国株と金に半々で分散しつつ、先物でレバレッジをかけるのが「Tracers S&P500ゴールドプラス」。
「金は先物のため、為替と無関係なドル建て金価格に連動する。株式とは明確に値動きが異なり、米国株と金の組み合わせは分散効果が高い」(海老澤さん)
(臼田正彦)
[日経マネー2025年2月号の記事を再構成]
資産形成に役立つ情報を届ける月刊誌『日経マネー』との連動企画。株式投資をはじめとした資産運用、マネープランの立て方、新しい金融サービスやお得情報まで、今すぐ役立つ旬のマネー情報を掲載します。
日経記事2025.1.5より引用