2024年の個人投資家を語る上で欠かせないのが新NISA(少額投資非課税制度)だ。非課税枠が広がり制度が恒久化された。
日経ヴェリタスが調査会社マクロミルと共同で実施したアンケート調査や個人投資家の声をたどると、新NISA元年を賢く駆け抜けた姿が浮かび上がる。
「年初にオルカンを成長投資枠いっぱいに買い、つみたて投資枠でも買った」。
都内の50代男性は今年の非課税枠360万円ほぼ全てをオルカンこと「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」に投じた。
60代男性は「米S&P500種株価指数投資信託やインド株ETF(上場投資信託)、金ETFを買った」と話す。インドの長期的な成長力、各国の財政支出拡大による金価格上昇に可能性を感じたという。
アンケートでは新NISAでの投資先(複数回答)を米国株や世界株のインデックス投信と答えた比率が4割と最多だった。日本株インデックス投信の2倍にあたる。
国際分散投資を後押ししたのが米株高と円安だ。SMBCグローバル・インベストメント&コンサルティングの試算では、つみたて枠対象の代表的な投信に1月末に100万円投じた場合、11月末時点で世界株投信は20%、米国株投信は25%のプラス。
毎月末10万円を積立投資した場合もプラスになった。
運用状況について投資額より資産が増加したと答えた割合は7割強。減少したのは4%どまりでNISA以外も含めた全体の成果(減少は11%)より低い。
NISA口座数最多の楽天証券は「今年開設された課税口座と新NISA口座を比べると後者のパフォーマンスが良い傾向がある」と明かす。
8月に世界株安となった後、年後半には持ち直し、積立投資など一定期間保有する運用が成果を上げやすい相場環境だったことが一因だ。
個別株にも4割近くが投資した。ベテラン日本株投資家に聞くと、NISAと「割安株」「中長期」投資との親和性への指摘が目立つ。
投資経験が30年近い名古屋の長期投資家(なごちょう)さん(49)もその一人。「下値不安の限られそうな銘柄をNISAで買っている」。例えばあじかんはPBR(株価純資産倍率)0.5倍前後。割安感が強く深押しする可能性は低いとみる。
NISAの利点である売却益や配当への非課税は売却損を出せば生かせない。
「課税口座と違い他の銘柄と損益を通算し税額を抑えることができない。値動きが大きい銘柄は避けた方が無難」と投資初心者に助言する。
イタルさん(40)は「5年間は保有するつもりで高配当のバリュー株に投資している」という。今年は年初に成長枠を使い切った。
新規上場株(IPO)購入の際に枠が残っていなかったことから「25年は枠を最初に使い切らず、魅力的なIPOに備えて残しておく」とも語る。
NISA口座は9月末時点で2500万超。PayPay証券では昨年10月の申込受け付け開始から1年余りで37万を超えた。
100円から代表的な日本株を取引できる手軽さが、若い新たな投資家層を呼び込んだ。
NISAが手本にした英ISA(個人貯蓄口座)では開始当時の1999年ごろから投資を続ける世代を中心に「ISAミリオネア(百万長者)」も誕生した。新NISAからもいずれ長者が生まれるかもしれない。
(田村篤士)
[日経ヴェリタス2024年12月29日号巻頭特集より抜粋]
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