(左から)オムディア南川氏、モルガン・スタンレーMUFG和田木氏、UBS安井氏、みずほ山田氏、SMBC日興・宮本氏(12日、東京都江東区)
2025年の半導体装置市場で不透明感が高まっている。都内で開催中の半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」に登壇した証券アナリスト4人が全員、中国向け需要の動向が最大のリスクになるとの見方を示した。
生成AI(人工知能)半導体の製造装置が成長をけん引するが、中国向けの需要が下振れすれば日本メーカーも影響を受ける。
「(中国の半導体受託生産最大手)中芯国際集成電路製造(SMIC)の技術は米インテルを超えた。この反省からトランプ次期米政権では対中規制がさらに強まる」
モルガン・スタンレーMUFG証券の和田木哲哉マネージングディレクターはこう語り、25年の成長予測を24年比6%減と予測した。
同社の予測では、中国以外の市場成長率を強気の25%増と仮定しても、中国が3割減れば市場全体はマイナス成長となる。「中国市場は5割減もありえる」という。
半導体メーカーのトレンドとして「(回路を描く)リソグラフィーのコストが上がりすぎて、開発の主流が(チップを組み立てる)後工程に移っている」と語った。
UBS証券は25年の成長率を7%増とみる。AIデータセンター向けの需要が成長をけん引する。
9言語の同時翻訳やAIによる旅行予約支援など、生成AIを活用したサービスが本格化すれば半導体需要も上向く。
一方で、リスクも懸念する。同社の安井健二・共同調査部長は「台湾有事のリスクを前提に、企業は余剰の生産能力を持たざるを得ない」と在庫リスクを指摘した。
みずほ証券の山田幹也シニアアナリストも「中国のシェアが高い一部の元素が禁輸の対象になれば、モーターなどの製造に影響する」と語った。
日本は半導体素材で6割程度のシェアをもつ。山田氏は「対中規制の強化を見越し、中国から米国を含め他の顧客にスコープを柔軟に広げることが重要だ」と語った。
SMBC日興証券は先端半導体向け装置がけん引し、7%増を見込む。宮本剛シニアアナリストは「(AI半導体の製造を独占する)台湾積体電路製造(TSMC)の1強体制となり、サプライヤーの価格交渉力が弱まっている」と述べた。
座談会では米インテルの業績不振にも話題が及んだ。
アナリストらが半導体の先行きを悲観視するなか、司会を務めた英調査会社オムディアの南川明シニアコンサルティングディレクターは「EUV(極端紫外線)露光装置の導入で遅れたが、最近は面積当たりの不良品率が低下し装置を使いこなせるようになってきている可能性がある」と期待した。
(向野崚、郭秀嘉)
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日経記事2024.12.12より引用