トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ 内部の矛盾を抱える
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活気に満ちたアバディーン
さて、グラバー家が新しく移り住んだブリッジ・オブ・ドンのあるアバディーンは、ハイランドの中では最も活気溢れる港町で、小さな造船所もいくつかあり、漁船。貨物船などを建造していた。
学校の旋盤技術で器用さを十分に発揮していたトーマス・グラバーは、造船建造の現場を見学するのが楽しくてたまらず、暇さへあれば頻繁に見に行った。この頃はようやく蒸気船(蒸気機関を用いた船)の建造が相次ぎ始めた。 しかし、従来の帆船と上記を用いた帆船併用も多く、グラバーが見学した多くは、この帆船併用であった。
ちなみに、一八五三年非七月(嘉永六年六月)米国ペリー提督の率いる東インド艦隊四隻は突如、浦賀沖に現れ、徳川幕府以下、江戸の町民たちを大騒動させた、と歴史書に記されている。
この時のペリー艦隊を日本人は「蒸気船」「黒船」と呼んでいるが、実は四隻とも帆走を併用した船であったことは意外と知られていない。 しかも四隻は全て現在のスクリュー(プロペラ)船ではなく、「外車推進」といい、船舷に大きな水車のようなものをくっつけて、それを回転させながら走行していたのだ。
それはと鉄製の船が色々な部品の組み合わせから出来上がり、完成すると数十人の人々を乗せ、白波を蹴立てて外海へと乗り出していく光景を見たトーマス・グラバーは「いつかは自分も大きな船に乗り、エリザベートと共に外国へ渡ってみたい」との夢を抱くようになっていた。
しかし、その一方 「いや、そうではなく、自分はエリザベートを忘れ去るために海外へ行くのだ」との思いが彼の心を支配し始めていた。
ブリッジ・オブ・ドンへ移住し、十四歳(一八五三年)を迎えたトーマスに、ショッキングな出来事が起きた。 それは彼の住む家から、さほど離れていないアバディーン湾内で、蒸気船のヂューク・オブ・サザーランド号が難破し、何人もの溺死者を出すという惨事が起きたのだ。
この時、グラバーもうわさを聞き、急いで現場に駆け付けた。船の海難事故の話は、これまで幾度も父から聞かされていたが、実際に現場を目の当たりにしたのはこの時が初めてである。
大自然の前には人も船もいかに弱い存在であるかをグラバーは思い知らされた。 しかし、十四歳の若さに満ち溢れるグラバーは恐怖よりも「スコットランド生まれの自分は、大自然の力にも打ち勝って、成功を勝ち取って見せる」と強い決意を顔面に張らせていた。
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02.明治維新の大功労者 トーマス・グラバー フリーメーソンつぃいての活躍
本の 表紙と帯
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09.トーマス・グラバー 第一章 トーマス十二歳、生まれ故郷を後へ 活気に満ちたアバディーンhttps://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/8ac7d795a06c8af4212c11a4a6cc8461
この本には、歴史的に貴重な写真、図、文献なども数多く掲載されている秀逸な作品ですが、それらをPDF化して皆さんに紹介することもできますが、著者と発行所の『長崎文献社』に敬意を払って、全てを紹介するのは、控えたいと考えております。
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